37話『神噛み殺し①』【滝夜SIDE】
「滝夜姫――君の能力で、僕に勝てる確率は0・01%。大人しく降伏をすることを推奨。そうすれば、命までは取らない」
姫がこのいかにも噛ませ犬のようなことを言っている人と2分ぐらい戦ってわかったことは少しだけ。
3mの巨大な鶏卵に、一つの目玉と小さな腕、無数の兵器を接着して青いペンキを適当に塗りたくったような見た目の謎の浮遊物体の正体は少なくとも生物ではないなんて、見ればわかるようなことだけだった。
「僕は英雄省歴代最年少の『十三星座』。魚座の海原藍斗。僕の能力『青魚機構(オーシャンプログラム)』を組み込んで作られた搭乗型殲滅兵器『ZINBEI』は、最強の矛と盾を同時に装備。あらゆる爆発を弾く装甲、あらゆる壁を破壊するレーザー。君が手に持つ銃とは、雲泥の差」
(最強の矛と盾って、ぶつければ宇宙が爆発するのかな・・・・・・? )
そんなわけない。多分この場合は装甲が優先されるはず。もしなにか事故が起きて自分のレーザーが自分に当たったら悲惨だから。
でもどっちみち関係ない。私の能力はワイシャツ一つ、紙一つで無効化できる。装甲の強度など、一切合切関係ない。
「なんで姫が・・・・・・こんな目に・・・・・・」
姫の能力が・・・・・・『魔法変身』が危険だからとでもいうのだろうか。だから人の少ない地区に送られたのだろうか。
姫はいつもそうだ。
島では宗家に生まれたから。
ここでは能力が戦闘向きだから。
いつもいつもいらない才能に振り回されている。
なんで私がこんな目に――。
「これ以上待つことは不可能 。後十秒以内。それ以内にその銃を消さなければ、君は死ぬ」
「なんで・・・・・・なんでこんな可哀想な、苦しんでいる、か弱い姫をにこんなひどいことするのぉ・・・・・・!?」
怖い。死にたくない。姫はただ――静かに生きていたいだけなのに。
「愚かで、醜い。――今日だけで、君が殺したとみられる人間は二百人超。恩赦をかけられていることがどれだけ寛大か、無理解?」
「理不尽だよぉ・・・そんな姫の知らない人のことを言われても・・・・・・!」
「だから・・・・・・いえ。言っても無駄。この会話中に五秒の時間が経つ。4」
もう、切り札を切るしかない。すなわち魔法変身を。
そうして私に理不尽を強いるこの人を殺さなければ。
「3」
姫の魔法変身は、発動中の意識の喪失。使用後に起きる体力の極端な消耗。この二つのリスクを飲み込むことで使用できる。
「2」
連打は出来ない。一発限りの大技だ。
「い・・・・・・なんですかそれは」
驚くのも無理はない。私は『そしてだれもいなくなった』で生み出した銃の銃口を、口に入れているのだから。
スタンダードな自殺の仕方だ。
「魔法変身」
「?! それが、可能!?」
海原はマシンを後方に動かす。
変身中の相手への攻撃は、魔王の一族には不可能だ。
科学的にはまだまだ未解ではあるが、何か魂のようなものに訴えてくるらしい。とにかく、変身中には姫が襲われることはない。
それにしても、ああ――。
「『
生きずに死なないって、なんて素晴らしい――
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