第43話新たな魂塊

 ミティスが会計を済ませてレストランを出た後アクフは勿体ないなと思いつつしっかりとミティス分の料理を食べて宿に戻った。


 翌日。


 いつものように素振りをしていたアクフのもとに申し訳無さそうにしているヨヨリが来ていた。


「ごめん。ミティスちゃんのことで忘れてたけど、アクフには面倒見るって言ってたのを忘れていたよ。」


「別にいいよ。」


「正直なところアクフの『銃音風駕つつねふうが』の火力が想定外に高くてそれだけクソ野郎銃万象を倒せると思うけど、いざってときの為にいい感じの魂塊の作り方を教えるよ!」 


 そう言ってヨヨリはアクフを地上に連れて行った。


――

 

 ガンストンの北側にある高頻度で竜巻などが巻き起こる竹戸から来るのであればだれもが通過しているエリアにアクフとヨヨリが来ていた。

 

「ここにはとっても強い魂の欠片がいっぱいあるんだよね。まぁ見てみてよ。」

  

 ヨヨリの言葉を聞いたアクフは早速目に生力を集中させて確認する。


 そこにはガンストン特有の体が大きい爪が刀のように凶悪で体が甲羅並の硬度をもち、レイピアの刀身のような体毛に覆われ地中では高速で移動し相手を鋭い爪で獲物を狩り地上では高速で回転してぶつかることによって獲物をズタズタにする竜巻が吹き荒れる過酷な環境に適応した土竜もぐら、バディクルスオオモモウル。


 地中深くに適応し生息することによって天敵を減らし、非常に細い体を自在に伸ばして注射器のように獲物に毒を注入して狩る蚯蚓みみず、ストームオリゴキータ等々厳しい環境ゆえ群雄割拠な状態になっており強力な生物の魂の欠片が大量あった。

  

「おおー。本当にいい感じの魂の欠片が沢山だな。」


「取り敢えずその中から好きな魂の欠片を集めて。」


「分かった。」


 数分後、アクフの目の前には大量のバディクルスオオモウル魂の欠片とその他様々な魂の欠片があった。


「よっし、それじゃ魂塊作りを始めていこうか。まずは前座から、アクフは魂塊とはモチーフとなる生物の能力が個別能力になったりするって聞いたことはあるかな?」


「それらしいことは聞いたことがある気がするな。」


「実はアレって半分本当で半分嘘なんだよね。」


「どういう事だ?」    

    

「魂塊の個別能力ってものは完全にモチーフまたは模したものの能力になるわけじゃなくて、魂塊を作る側の技量と生力次第で好きな能力に出来るんだよ。だから技量が低い人が作ると関連性の強い能力がランダムに出るってわけ。」

 

「ということは俺以上の技能と生力があったら蟻の魂塊の個別能力で風を出したりすることもできるのか?」


「大分モチーフかけ離れてるから難しくなるとは思うけど、出来るよ。」 


「つまり?」


「そのモチーフや模したりするものの特性だけにとらわれないようにしようってことだね。だから、制作が困難になるだけで作った後には特に支障はないから好きに作ってね。でも、、個別能力は生力をつき込んだ分だけ強い能力になるからアクフの生力総量だと能力を指定するよりランダムにして生力を注ぎ込んだほうが良いかも。

 よし!アクフは魂塊を一つだけしか持ってないぽいし作り方は分からないと思うから取り敢えず作り方を教えるよ。」


「分かった。」


「まず、魂の欠片って生物が死んで魂が抜け出して転生する時に欠けてその場に残っている部分だから、全身分ではないんだよ。だから全身がモチーフとなる魂の欠片を全身分を集めて。」


 アクフはそこそこ考えてバディクルスオオモウルの全身の魂の欠片を集めた。

  

「よし、それじゃモチーフの魂の欠片を固めて一つの魂にして。」    

 バディクルスオオモウルの魂の欠片達を魂にする。


「そして、その後に残りの魂の欠片を纏わせるように固めて固定してからどんな能力するか決めて念じてね。」


「よっし、やるぞ。」

 

 アクフは即座に周りの魂の欠片をバディクルスオオモウルの魂に纏わせて固定する。


 (個別能力は攻撃に関係ある事だけ絞って生力を浮かせて残りを構成につぎ込むか。)

 

 そして、アクフが死ぬか死なないギリギリのラインを狙って生力をつぎ込み終わると、


『ディル!ディル!』


 と新しい魂が産声を上げた。


「よし、出来た。これからよしく!」


 アクフが喜びの感情を感じさせる表情をした後にバファイが具現化した。


『キュュュ!』


『ディル!』


 二体は挨拶を交わした。


「うん!無事新しい魂塊を作れたね。名前はどうする?」  

 

「名前はバディクルスオオモウルの魂塊だから、ディウルにしよう。」

 

「それじゃ試しに纏ってみて模擬戦で能力を確認しよっか。」


「分かった。そういえば魂塊にかなり詳しいみたいだが、ミロショウサ以外に魂塊を持っていたりするのか?」


「神を模した魂塊は私の技能じゃ操れないからそんな大したのものじゃないけど、けどいるよ。他の魂塊。」 

 

「それじゃ、その魂塊でよろしく頼む。」 


「別にいいけど、ミティスちゃんとかには言わないでね?本当に大した魂塊じゃないから戦力に数えられなくて言わなかったから……フラレス行くよ。」


 そう言ってヨヨリは〘桜花咲おうかざき〙に花の魂塊フラレスを纏わせる。


「分かった。ディウル!初陣だ、お前の力を見せてくれ!」 

 

 アクフもディウルを〘赫斯御魂かくしのみたま〙に纏わせる。


「『開花』。」


 その言葉が言い放たれた次の瞬間、ヨヨリはアクフの方向に突進するように普段とは二味程度は違う動きの速さで、〘桜花咲おうかざき〙を振りかざす。


 (本人は大した能力じゃないって言ってるけど、そんなのが嘘に思えてくるほど、速い!取り敢えず『暴剣』を使いながらバディウルの個別能力を発動しよう。)


 アクフは剣を構えてディウルの個別能力を発動させる。


 すると地面がえぐれて土が宙に浮き、凝固。


 忽ち2つの刀の形になってアクフの腕の周りに纏わった。

 

 (これが、ディウルの能力……!今だした能力だけでもかなりの可能性を感じるけど、まだまだ力が残っている気がする!でも、今はこの刀で頑張ってみよう。) 

 

 アクフは即興で三刀流の『暴剣』をして向かってくるヨヨリを迎え撃つ。


 お互いの位置がある程度まで近づくと即座にヨヨリが〘桜花咲おうかざき〙を腹に向かってぶつけようとするが、土の刀で防がれてしまった。


 そして、〘桜花咲おうかざき〙を振りかざす為に不用意にアクフへと近づき過ぎた事により、

 

 アクフによるカウンターを受ける。

 

「『暴け――――」


 しかし、元々魂塊制作で生力を消費していた上にそこまで勢力消費は激しくないとは言え魂塊の個別能力を使用した為に倒れてしまった。 


 そして、アクフはその日中は目覚める事なかった。   


 次の日。


 アクフはヨヨリによって宿屋に運ばれたため、ベッドの上で目を覚ました。


 目の前にはヨヨリがいてアク申し訳がなさそうな顔で一言だけ呟いた。

 

「…………ごめん。

 

――


 ヨヨリの謝罪からアクフはディウルの個別能力の検証をした後に日課の一つである銃発掘に出ていた。


 迸る熱気、下手を打ってしまえば崩壊してしまうような道でもアクフは一切気にせず掘り進む。

 

 アクフは先日の銃万象ガンバンゼンとの邂逅によって持っている武器の殆どを破壊されてしまった為、銃で代わりとなるようなもの発掘のついでに探していたが、なかなか見つからずにいた。 


 それから幾度、ピッケルが振り下ろされただろうか。


 アクフ自身にもそんなことなど分からなくなるくらいの回数下ろし続けた。

 

 そして、遂に当たりを引き当てた。

  

「カッコいい!」


 エジプトやスパルタには絶対に無いような文明度がかけ離れすぎている威力が高い武器、レールガンが出土したのだ。


 (なんだか凄そうな銃を発掘出来た!これなら、壊されてしまった武器達の代わりになるかもしれない!)

 

 アクフは既にノルマ分の銃を発掘できていたので、レールガン以外を納品して帰った。


――


 宿屋に帰ったアクフはガンストン北部にレールガンの試し打ちに来ていた。 


「取り敢えず、どうやって撃とうかな。」


 アクフの目の前にはレールガンと銃弾の形状をしている充電池のようなものが置いていた。

 

 (なんか妙に虫ぽい気がするんだよなー、同じ銃でも〘濡烏イデュース〙よりもなんだか複雑そうな形というか、適当に扱ったら壊れそうというか。)


 考えに考えた末にアクフは覚悟を決めて銃弾を装填して撃つことにした。


 (そういえば、銃弾にディウルを纏わせるのはやってなかったよな。いやいや、ここは安牌を取って何も纏わせずに撃つのが最適…………だけど、気になる。)


 アクフの理性は己から発せられる好奇心と欲望に負け、ディウルを纏わせてしまった。


 結果、特に何も異常は起こらなかった。


 アクフはこの結果に少し安心すると、集中モードに入り引き金に指をかける。


 (目標はどうしようかな?こんなに格好良くて凄そうな武器だから出来れば硬いものとかを的にしたいけど、近くにそれに相当する場所は……まぁ、そこら辺のサボテンとかでいいか。)


 妥協した的にレールガンを向けて引き金にかけていた指を曲げる。


 瞬間、アクフに今まで受けたことのないほどの反動を感じる。


 レールガンは少々のタイムラグを経て放たれた。


 放たれし閃光は魂塊の基本能力の一つである五感強化がおわれている状態でも気を抜けば一切目にすることのできないような速度で飛んでいく。


 それだけで『銃音風駕つつねふうが』に迫る圧倒的な火力でサボテンを完全に破壊した。


 (凄い……ただただ凄い。それに…………格好いい!!!)


 剣やそこら辺の銃ではありえないような閃光はしっかりアクフの目にその威を焼きつけた。

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