第48話武器集め

 銃万象ガンバンゼンとの戦いで受けた傷と底をつきかけていた生力が回復した頃。


 (そう言えば、銃万象ガンバンゼンから敵を取る為だけに『銃音風駕つつねふうが』を磨いていたからあの滅茶苦茶硬い箱を実験代替わりに開けるのを忘れてたな。)


 ということでアクフは掘り出した硬い箱を持ち出し、地上に出ていた。


 (前は全然開かなかったが、銃万象ガンバンゼンを貫くことができた『銃音風駕つつねふうが』なら開けれる!)


 10メートルほど離れた所に箱を置き。


 〘赫斯御魂かくしのみたま〙と〘濡烏イデュース〙を構えて深呼吸。


 準備が完了すると具錬式魂塊術の『PJS-DU2メッフロ・アサリー』を作り構え、スコープを覗く。

 

 一切動かない物体に対してスコープを使うのは他でもない。急所を狙って確実に外側の箱を破壊するためである。


 周りの環境は乾燥しており、そこまでの風はなく、砂埃も発生していないため絶好の射撃日和。


 (箱は開けるためにどうしても隙間が必要となる。そして、隙間はどうしたって脆くなるものだから、隙間に入れる!) 


 引き金に指を添える。


 銃弾に早い『廻音剣』を大量に纏わせる。


 もう一度、的の確認をして。


 放つ。


 放たれた『銃音風駕つつねふうが』は銃万象ガンバンゼンとの戦いの時に放ったものより、速かった。

  

 その為、一瞬にして箱に着弾した。


 結果……固く閉じられたオーバースペックな箱は煙を上げならから開く。


 アクフは開いたのを確認してから箱に近づいて中身を見た。


 中身は――――なんらかの金属の塊であった。


 アクフは慎重に金属の塊を取り出して空に掲げまじまじと見てみた。


 (なんだこれ?多分、これは武器じゃないよな。でも、ただのゴミな気もしない。よく見てみたら細かく何か法則性を持っている模様ぽいものが刻まれているし。それにあそこの周りには銃が埋まっている場所だからな。恐らく、隕鉄みたいに武器を作るのに適している鉱石か何かか?)


 と思考していると、急に金属の塊が動き出し、手から脱走した。


『再起動中……………………起動完了。』


 言語は英語でもなくアクフにも馴染みが全く持ってないものだった。


 (この声、〘濡烏イデュース〙の時に聞いた謎の言葉とも違う。どういうこと?でも、なんだかものすごく格好いい気がする!)

 

『辺地域の検索………………水の惑星No.154アース? …………異常発生。現在の位置は旧バージョンの宇宙マップに存在しない惑星です。アップデートの為、音波調査を開始します。』


 次の瞬間、衝撃波とも言える程の音波が世界中にばら撒かれる。


『調査結果…………現在地は以前の宇宙マップにあるどの惑星とも合致いたしません。しかし、水の惑星No.154アースとの類似点が随所に見受けられるため、仮名称として水の惑星No.155リアースとします。生体認証…………近くにホモ・サピエンスと酷似している生命体を確認。コンタクトを取ります。言語翻訳機能作動。』


 金属が光りだす。


 アクフはその光景に対して五感で何か危険を感じてバックジャンプで遠くまで離れる。


「こんにちは、私の名前はエネアーゼです。よろしくお願いします。」


 エネアーゼは光を収めてふよふよと軽やかに浮遊しながらアクフに足して話しかける。

 

「喋った!!!」 

 

「そう驚かないでください。私は基本害を与えるような存在じゃありませんし、貴方は生力を持っているはずですから私のような存在は身近だと思います。」


「生力を持っている俺には身近な存在?魂塊みたいなものなのか?」


「魂塊…………?それはどのような存在なんですか?」


「ちょっと待ってろ。俺の経験上こういう事は見せたほうが早いからな。」


 そう言いながらアクフは『PJS-DU2メッフロ・アサリー』を分解してバファイを取り出し、ディウルも具現化させて見せた。

 

「こいつは、俺の魂塊のバファイとディウルだ。分かったか?」


「分かりました。魂塊というものは大概私に近いものですね。」


「そう言えばだが、エネアーゼはなんで喋られるんだ?」   


「貴方の魂塊も喋らせようと思えば喋れると思いますよ。」  


「え?そうなのか?」


「今は発声器官が無いだけでつければ私のように喋れると思います。」


「そうなのか。エネアーゼは色々知っているんだな。」


「まぁ、はい。元々私は魂塊の根本とも呼べる存在ですから。」

  

「そう言えば、俺が見つけた時、エネアーゼは銃とかが見つかる土の中にお前をしまっていた箱あったがなんでなんだ?」


「恐らく貴方位の文明度ではまだ言っても理解しかねると思いますので、答えいたしかねます。」 

 

「そうなのか。じゃ、そこまで気にならないしいいか。それにしても、エネアーゼは金属の塊みたいな見た目をしているが、魂塊みたいなものなんだろう?何ができるんだ?」


「スキャン&計測中…………恐らく今の私の生力総量では、個別能力というものはありませんが、私に生力を流して自由に姿を変えて運用する貴方で言うところの具錬式魂塊術のようなものは使えます。」


「早速やってみて良いか?」


「やるのであれば、契約をしてください。」


「契約……?」


「私は特殊な器官を使い生力を内包して元の生力の総量に準じて増加させ、動力として様々な能力を行使できます。が、今の状態ではそこにいるバファイと比べて出来ることが少なすぎるので一日一回程度規定量の生力を私に注ぎ込んでください。」  

 

「そのくらいなら全然許容範囲内だ。」


「では、契約成立ですね。取り敢えず貴方から私に生力を供給する媒体としてこの指輪を渡しておきます。」


 エネアーゼが光りだして、自身の身体のほんの一部を使用した指輪をアクフの中指に嵌める。


「これでその指輪に生力を注ぎ込めば、自動的に私に生力が注ぎ込まれるようになりました。では、私を持っていろいろ試してください。」   


 その言葉を聞いたアクフはワクワクしながら指示通りにエネアーゼを握る。


 (よし!せっかく喋るレアな武器を手に入れたんだし、どんな武器にしようかな?具錬式魂塊術みたいなことが出来るってことは、やっぱり元の大きさより大きい武器を作れるってことだよな?そうなったら今後いろんな場面で使えそうなやつにしよう。)


「よし、やるぞ!」


 アクフは深呼吸をし、エネアーゼに生力を注ぎ、その時に感じた何かの殻を破らないように膨張させていく。  


 膨張しきった後に細く長くし、先端をとんでもないくらいに尖らせた。

 

「出来た!」  

 

「これは、随分原始的な形ですね。今からマンモスか何かを狩りに行くんですか?」 

   

「マンモスってなんだ?」


「失礼いたしました。貴方にとって無益な情報です。忘れてください。」 


「まあ良いか。よし!早速そこら辺サボテンで試してみるか。」


 アクフは四方を見渡し、適当なサボテンを見つけて大槍の先端を風を纏わせすような速さで振り落とした。


 が、アクフの想像や期待を裏切り大槍の先端は鋭さを纏わず、ただ物体が持った重さでサボテンを潰すことしか叶わなかった。


 (あれっ?何か間違ったかな?)


 大槍とかしたエネアーゼはアクフの疑問を検知したのかどうかは分からないが話し始める。


「すみません。貴方の実力不足ではありません。私自身がそこまで他者を害することに適した存在ではないのでこのような事態になっています。」


「そうなのか?」


「はい、ただ現時点でそうなだけで生力を注ぎ込めば、また違う結果になると思います。」  


「分かった。」


 (そうかーそれなら、しばらくの間エネアーゼを実践に使うことは出来ないのか。そっかぁー。)

 

「そんな落胆して役立たずを見るような目はやめてください。私は本来であればどんな国家でも喉から全身が飛び出すほど欲しくなるような凄い存在なんですよ。」


 と、エネアーゼは言い訳をなかなか必死に言った。


「じゃ、なんで俺みたいな大国のファラオでも王様でもないただの一般市民に毛が生えた程度の俺と契約したんだよ。」


「貴方が一般市民に毛の生えた程度?自分を卑下するのはやめたほうがいいですよ。貴方みたいなのがうようよいるような所なんて世紀末に他なりませんから。私が貴方と契約した理由は貴方から物凄い何かが見えたからですかね。」

 

「そうなのか?俺に物凄い何か……?あまり覚えがないな。」


「例えば貴方が連れているバファイという魂塊あれは、ある種の私と同等の力を持っていますし、貴方が持っている〘赫斯御魂かくしのみたま〙という武器にはとんでもない秘められたものを感じますし、あなたが持っている〘濡烏イデュース〙は隕鉄で出来ているとても貴重なものです。そんな凄そうなものたちを持っているあなたが何者でもないわけないじゃないですか。」


「え!〘赫斯御魂かくしのみたま〙にそんな物があったのか!?詳しく教えてくれ!」


「面倒くさいので却下します。私は貴方から生力を注ぎ込んでもらう代わりに私を軍事使用及び戦闘に協力するという契約しか結んでいません。」 

   

「かなり気になるんだが、仕方ないか。取り敢えず今日の分の生力を注ぎ込むか。」


 アクフは淡々と生力の大半をエネアーゼに注ぎ込んだ。


 注ぎ終わるとエネアーゼが発光し、何やら動い後に『エネルギー生成上限上昇200%』と鳴って光を収めた。


「恐らくこれで少々生力による形状変化するときの形が容易に変えられるようになったと思います。」  


「そうかぁ…………それならしばらく使えなさそうにないな。」 


「貴方は私をどんな化け物だと思っているんですか?私みたいな高度な存在でも想定されていない用途、つまり専門外はこんなものですよ?気を落とさないでください。私の計算では今みたいに生力を注げば一週間後には具錬式魂塊術のように自由に姿、材質をいじれるようになりますから。」 


「仕方ない。今は待つしかないか。それじゃ、これから日課の銃発掘にでも行くか。あっ、エネアーゼは宿屋に戻って俺の鞄に入っておいてくれ。」


「分かりました。」


 と言いながらエネアーゼは浮遊し始め、宿屋の方に飛んでいった。


「さて、俺も行くか。」


 アクフは地面を踏みしめて地下に戻っていった。


――


 エネアーゼがアクフをスキャンして得た情報を元に30分程で宿屋に戻っていた。


 そして、アクフの武器の残骸が眠っている鞄の中でスリープモードに移行しようとしているとバファイが、近づいているのを検知したので直ちに鞄から出てバファイと対面した。


「ついに来ましたね。生物個別呼称アクフの秘密その1が。」


『俺の存在に感づいていたのか。』 

 

「はい、あなたの存在は生物個別呼称アクフから見せてもらったときから感づいていましたよ。で、質問なんですが、生物個別呼称アクフ…………もう長いからアクフと訳しますか。改めてアクフは何者なんですか?」  


『ただの護りたいものを護る強さを求めているだけの男だよ。』  


「おかしいですね。高度な存在である私でも認識できないほどのとんでもないものを感じたのですが、それについて心当たりはありますか?」


『お前の勘違いかなんかだろ。それで、お前に会いに来た用件を話していいか?』 


「ええ。」


『まず、お前はアクフと生力を注ぎ込んでもらう代わりにアクフの武器になる契約を結んだだろ。』   

 

「まぁ、はい。」


『訳あって2年前頃からアクフの生力の殆どを俺が取っているんだが、2年分とは言えないが相当の量をお前に注ぎ込む。』


「ほう……あれで全部ではなかったんですね。」   


『で、条件としてはアクフを守ってもらうこと、アクフから生力を取っているのを秘密にしてもらうこと、機能が拡張され過ぎて怪しまれたらアクフが注ぎ込んだ生力の結果と言っておいてくれ。』


「問題ありません。分かりました。」


 バファイはエネアーゼに自身にため込んでいた生力を注ぎ込んだ。


『それじゃ、頼んだぞ。』


 バファイは去っていった。

 

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王暴の魂塊譚 大正 水鷹 @66rliyourliya969

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