第47話ナルの旅竹戸編
時は遡りアクフ達が
「ここは……どこ?」
ナルは人生で一度もみたことがない植物、竹が生い茂る場所で呟いた。
「……これは、話には聞いたことはあるが竹っていうやつか?。」
と言いつつ、スドは竹の耐久性を確認する。
「スドさんはここがどこだか分かるの?」
「……聞いただけだから詳しいことは言えないが。取り敢えずここにいても埒が明かないだろう、ここにもアクフのらしい足跡があったし人のいる場所に向かおう。」
「分かりました。」
数十分後。
ナルとスドは竹戸のアクフがいた城下町に来ていた。
竹戸は鬼人農民の乱で壊れてしまったものを直し元の様子に戻っている。
規則正しく並んでいる店とその奥にある平屋。それらが眩しい太陽に立てられて光っていた。
そんな風景の中にスドは気になるものが目についた。
「……ナルフリック、少々気になるものを見つけてしまった。ちょっと行ってくる。」
とびつくようにそれの元へと向かった。
(あっ、行っちゃった。アクフの知り合いだけあって武器が好きな人だな〜。さて、私はアクフのことを聞き込みしよう。)
ナルはナルで自ら行動する。
スドの向かった先は刀屋だった。
「……これが、竹戸の刀。」
スドはじろじろと刀を観察する。
すると、店の奥から店主が顔を出した。
「おっ、こんな昼下がりにお客とは珍しいな兄ちゃん…………その格好もしかしてエジプトの人間か?」
「ああ、そうだが。」
「そして、その肉の付き方雰囲気からも分かる、兄ちゃんエジプトの鍛冶師だろ。…………俺の邪推かも知んねぇが、もしかしたらあの魂塊使いの黒髪兄ちゃんと関係あったりするのか?」
(……ここは竹戸だ。エジプトみたいにそう多くは魂塊使いもいないはずだ。これは手がかりを早速掴めたか?いや、ここは落ち着いて聞こう。)
「……その魂塊使いの黒髪兄ちゃんの名前を知っていたりするか?」
「あー、俺がやらかした時に王様が名前を言ってた気がするが…………確か、あ……アク…………フだったかな。」
(アクフ!やはり、ここに来ていたのか!)
「……そのアクフが今どこにいるのか分かるのか!?」
「兄ちゃん、鬼気迫り過ぎだぞ。一旦落ち着けよ。そんなんじゃことを仕損じちまうぜ?」
「………………すまない。それで今どこにいるんだ?」
「それは分かんねぇ、すまねぇな。少し前くらいだったかなにここを離れて別のところに行っちまったみたいだな。」
「……そうか……、それにしても、ここの刀は良いな全部高水準でよく切れそうだ。」
「おっ?分かってくれるか?竹戸の刀は俺の知っている世界の中じゃ一だからな。」
「……エジプトには様々な国のものが輸入されてきていたがそれでもここまでの見事な刀は見たことないな。俺も作れる武器のレパートリーを増やそうと試作で作ってみたんだが、なかなかうまくいかなくてな。これなんだが。」
スドはそう言いつつ荷物の中から〘
「おお、誰に教えられたわけでもないのにこの出来か、さては兄ちゃん相当のやり手だな?」
「……そんなことはない、俺の武器の製作技術はまだまだ成長途中だ。こんなものでは全然駄目だ。出来るのであれば少々教わりたいくらいだ。」
「そうか、それなら少し俺の刀作りを見てくか?」
「……いいのか?」
「ああ、いいぜ。今日会ったのも何かの縁だからな。」
こうして二人は作業場に向かっていった。
所変わってナルはと言えば、手当たり次第聞き込みをしていた。
「最近アクフっていう黒髪の魂塊使いを見ていませんか?」
「見てないわね。」
「そうですか、ありがとうございます。」
これで何度目になっただろうか。
アクフの手がかりを求め何度何度も根性強く聞き込みを続けはするが、運の良かったスドとは違って全然と言っていいほど見つかっていなかった。
これはアクフが竹戸に際に自分の鍛錬もあるし、義刀への教えるのに奮闘していた為、そこまで出かけていなかったことと出かけていた範囲が狭かったことに起因する。
しかし、ナルはボードゲームが強い子なのだ。
運が悪いわけではない。
訪れる、機運。
「あの……魂塊使いの黒髪でアクフって言う――――」
ナルの声は大きな声によって遮られた。
正体は、『
今日はたまたま義刀が休養をとって出かけており、近くまで来たのである。
「アクフ殿を知っているのか!?」
義刀の声は確かにナルに届く。
「アクフを知っているの!?」
ナルが起こしたリアクションは義刀とそう変わらないものであった。
「私は行方不明になったアクフを探しているんですけど、お話聞かせてもらえませんか?」
「はい、良いですよ。某もまだ時間がありますし、少しそこの団子屋でお茶でもしながら話しましょう。」
「ありがとうございます!」
二人は団子屋に移動した。
団子屋に来て、椅子に座った2人は各々に団子を注文したすぐ後、ナルは口を開いた。
「で、早速になりますけどアクフのことについて聞いてもいいですか?」
「いいですよ。でも、その前につかぬことを聞きますがお名前はなんと?」
「ナルフリック・ペトフールって言います。」
(やっぱり、この人がアクフ殿言っていた初めての友達ナルか……。某でも分かるこの気配、相当な手練れ。流石、強いアクフ殿の友達と言ったところですね。隙という一点だけ見れば、多少鍛錬している某でも一切見つけられない。それしても、この気配、暗殺者にも似ているが……もしや? アクフ殿を狙っているものではないだろうな?それとなく聞いておくか。)
「そうですか、某の名は義刀です。ナルフリック……失礼かもしれませんが呼びにくいのでナル殿と呼ばせてもらいます。それで、アクフ殿のどういったことが知りたいのですか?」
「まぁ、可能な限り聞きたい所ではあるんですが、残念ながら今はそんな時間はあまりありませんので、今、アクフがどこにいるか教えてください。」
「某は正確なことは言えないのですが、恐らく……今なら隣国のガンストンに到着していて、予想ではありますが新たな武器を探していると思います。」
「本当ですか!?」
(やっと、アクフへの手がかりを見つけた!!!…………いや、はしゃぎ過ぎちゃ駄目だ。これが本当の情報かどうかわからない。それに義刀のあの目、結構な修羅場を乗り越えてる普通の目じゃない。何か仕込まれていても全然不思議じゃない。慎重に判断しないと。)
(アクフ殿の話した時の、暗殺者には似つかわしく、ただのいたいげな少女に似ている喜びよう…………これは、本当にアクフ殿の友達か?いや、まだ足らぬな。)
「それにしても、何故アクフ殿をそこまでに求めているのですか?」
「…………それは、簡単に言えば恩返しをするためですかね。あんまり人前では言えることではないんですけど、アクフに駄目な所から救ってもらったんです。」
と、語るナルの目には光が灯されていた。
(この目、間違ではあらぬ。ナル殿は間違いなくアクフ殿を思って行動している。本当の友達であると信じざるおえない。)
「そうなんですか、分かりましたでは某も微力ながら手伝いをいたすことにしましょう。」
(あの目、私を信用してくれようとしている目だ。信用を騙っている時の独特の違和感もないし、演技じゃない。支援もしてくれるみたいだし、あまりこっちを騙そうって言う気は感じないし一旦は義刀を信用しよう。)
「ありがとうございます!」
「それにしても、団子が来るまではまだまだありますから何か聞きたいことでもあれば、暇つぶしとして答えられる範囲でお答えしますよ。」
「そうですね……それじゃ、なんで義刀はアクフの居場所とかをそんなに知っているんですか?」
「それは、某がどうしてもの理由があり、頼み込んでアクフ殿に刀の……あっ、恐らくそっちで言うところの剣の鍛錬を見てもらっていたからですからね。」
(へー、アクフに剣の鍛錬をみてもらっていたんだ。いいなぁ。)
「アクフとの鍛錬でどんな成果が得られたんですか?」
「某は魂塊使いなんですが、兜太郎という名前の魂塊の個別能力を使った『
「虫にちなんだ名前が多いんですね。アクフが教える……、羨ましいですね。」
「アクフ殿との日々は楽しくもあり、実りの多いものでしたからね。ナル殿も今度アクフとあった時に頼んでみればどうでしょう?アクフ殿は断らないと思いますよ。」
「…………そうですね。今度あったら頼んでみようと思います。後、アクフって毎日欠かさず素振りとかしていると思うんですけど、今どれくらい強くなっているか分かりますか?」
「多分、あの強いアクフ殿ですからガンストンで何かしらを手に入れて更に強くなっていると思いますが、
「それでも構いません。私はアクフに助けてもらいましただからその恩を返す側です、それに個人的な感情としてもアクフと並ぶくらいに強くなって隣に立ち戦いたいと思っています。その為にはアクフがどれくらい強いか知る必要があるんです。」
「ほう、アクフ殿と同等になるということですか、とても立派ですね。そんなこと某の様な凡才では考えられないです。羨ましいですね。アクフ殿は『廻音剣』、『
「そうなんだね。バファイを強化?そんな魂塊を強化する物があるの?よかったら教えてください。」
「ありますね。すみませんがそれは様々な問題からそうやすやすとは言えないものなので秘密ということで。」
「仕方ないですよね。エジプトでもそんなもの聞いたこともないので、分かりました。」
そうナルが言うと店員が二本の団子を持ってきた。
左が義刀のもので筍を混ぜ込んだ竹戸ではガジュアルな団子。
右がナルのもので中にあんこが入っているのは勿論、おはぎのように外側にもガッチリコーティングされており、更に山のようにあんこがかけられていた。
「ナル殿は随分な甘いもの好きなんですね。ここの中でも圧倒的な甘さを誇るあんこづくし団子を頼むなんて。」
「甘いものを食べているとなんか幸せな気分になってちょっと落ち着くのから好きですかね。」
「そうなんですか。」
数分後。
2人は団子を食べ終え会計に進んだ。
「お勘定は25文になります。」
ナルはその言葉を聞いて財布を取り出して中身を見て焦りの感情を覚える。
(あっ、両替するの忘れてたどうしよう……。)
とナルが財布を開いてまずそうな顔をしたのでそれを察した義刀が払いその場は収まった。
団子屋から出ると丁度、アクフの情報を報告する為に一旦刀屋から出てナル探していたスドと出会った。
「あっ!スドさん。」
「……!ナルフリック探したぞ、やはりアクフはここにいた。」
「あのー、すごく言いにくいんですけど、その辺の情報は大体横にいる義刀に教えてもらったからここではもう探す必要ないですよ。」
「………………………………………………そうか。それでアクフはどこにいるんだ?」
「それは分かんないんですけど、隣国のガンストンって言う所にいる可能性が高いらしいです。」
「……そうか、なら今すぐにガンストンに行くぞ。」
(この様子。危ういな、恐らくこの男もアクフ殿の知り合いであろうし、大事になってはいかんし一旦ここは引き止めいたそう。)
「まあまあ、そんなに焦らないで下さい。急いては事を仕損じるという言葉が竹戸にはありまして、せっかく竹戸に来たんですから1日くらい冷静になるために泊まっていって下さい。泊まるところは某の所で用意するので。」
「……ありがたい。確かに急いでばかりではいけないな。お世話になることにしよう。ナルフリックも異存はないな?」
「うん。異存はないです。」
「それでは某の城に行きましょう。」
3人は城に向かった。
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