第5話武器と決意

 アクフはソルバとの模擬試合の三ヶ月後、無事に修行を終えて、少し時間が出来た、休日のこと。

 

「やっぱり隕鉄の剣っていうのはなんか寂しいな、名前をつけるか。」


 そう言い、アクフは愛剣である隕鉄の剣を整備していた。


『キュュュ!』

 

 アクフは武器好きだった。


 本来なら隕鉄の剣よりも違う武器が良かったと思っているが、あいにく、アクフの武器達は降ってきた隕石に家ごと破壊されて、もうこの世にはない。


「そうだな〜、名前は〘エスレペラント〙とか良いんじゃないかなあ、まあ、でも、この名前が本当にいいのかわからないし、いろんな人に聞いて見るかな。」    


 様々な人に名前の是非を聞くために、昼時の食堂に行って聞いてみた。


 ソルバからは、「いいんじゃ、ない?」というどちらとも取れない言葉を貰い。

 

 デオルからは、「武器の名前なんてどうでもいいじゃないですか、そんな事、決めるのでしたら、訓練します?」と言う、言葉をもらい、アクフはデオルの提案を断った。  

 

 アクフが最近見なかった、サビテニからは、「やっぱり、価値が高い物だからな、名前をつけたくなるのもわかるぞ!〘エスレペラント〙か、少し長いし、省略して〘エスレント〙とかにしたら、いいんじゃないか?」と言う、アクフの意見に賛同する言葉を貰い。


 他の人より後に聞いた、イザからは、「私はいい名前だと思うけど、どうするもアクフ次第だよ!自分が一番いいと思う名前をつけなよ。」と言う言葉を貰った。

 

 (うーん、どうしようか、サビテニ団長の案の一旦、〘エスレペラント〙から離れて他の名前を考える、かなぁ、それじゃあ〘隕天王剣いんてんおうけん〙とか?王ってつけるのはやっぱり良くないかな?そうなると、〘天駆石剣カノンスド〙とかかか?〘天翔石剣カノンスド〙!いいじゃないか、決めた、今日から隕石の剣、改めて、〘天翔石剣カノンスド〙に決定だ!そうと決まれば、飾り付けをしに給料を持ってカイロに行こう!)

 

――


「まず最初はどの鍛冶屋がいいか、だな。」


 アクフは歩きながら考える。


 (俺は〘天翔石剣カノンスド〙の基本的な整備をしているが、専門的なことはしていないから、一応、見てもらおう、さて、一応どこを飾り付けをするか見返しておこう、まず、握りグリップガードを合わせたヒルトはもちろんのこと、鞘、剣穂などなどだな。)


 アクフはまず、飾り付けより前に鍛冶屋に行った。


「これは、いい剣だな、とても綺麗で、まるで芸術品のような美しさがある。」


 〘天翔石剣カノンスド〙を持った鍛冶師が言う。

 

「ありがとうございます、それでなにか問題はありますか?」


「基本的に、刃こぼれもしていないし、かけた箇所もない、他に異常なところもないな、至って正常だよ。」


 そう言い、鍛冶師は〘天翔石剣カノンスド〙をアクフに返した。


 ちなみに、アクフは武器を制作する者に敬意を持ち、敬語で話すように心がけている。

    

「それでは、この〘天翔石剣カノンスド〙に見合ういい鍔を作ってくれませんか?」


「ああいいぜ、ただ、代金をタダにするかわりに、この剣を作った鍛冶師を今度紹介してくれ。」


「わかりました、それくらいならお安い御用です!そういえば、この〘天翔石剣カノンスド〙を作った鍛冶師の知り合いはここカイロにいるんですよ。」


「そうか!まあ、カイロはでかい都市だからな、あったことのない鍛冶師もいるだろうな、それじゃ、2日後に来てくれ、その時には完成させておく。」

  

「わかりました!それではまた2日後に。」


 アクフはそう言い、鍛冶師の店から出ていった。   

  

 (次は、剣穂だな。)


 そう思いながら、アクフは様々な雑貨店で丁度いい剣穂用の探した。


――

 

 (どんなやつがいいか、流石に重いのは剣の重心がずれるから、候補から外すにしても、色々な形があるからな、丸 四角 三角 星等、やっぱり隕鉄がもとだから、星型というのは、少し安直かな?)


 アクフが街なかの露天を見てみると、目ぼしいものがあった。

 

 それの見た目は✡形でとてもいい青色でキラキラしていたものがさくらんぼのようについた。


 (おっ、これがいいかな。)


「おっちゃん!このアクセサリーいいな、売ってくれ!」   

 

「一万ファラルになるが、いいか?」


 因みに、100ファラルあればパンが一つ買えるくらいの価値がある。

 

「ああ。」 


 そう言い、アクフは懐から1万ファラルの硬貨を出した。


 その硬貨を受け取った、雑貨店の店主はアクセサリーを差し出し、それをアクフが受け取った。


「そういえばだがな、最近ここら辺で、妙な噂があるんだが。」


「どんな話なんだ?」


 そうアクフが尋ねると、店主はまるで怪談話をする口調で話しだした。

 

「それがよ、ここいらに住んでいる全員が夜に、浮いている火の玉を見たらしいんだが、実は俺も見たんだがよ、その火の玉が不思議で見ていたら、突然その火の玉が大きくなりだしたんだ、俺は、怖くて目を背けて逃げてきたんんだ。」

   

「奇妙なこともあるもんだな。」

 

「それじゃ、また来てくれよな!」


 アクフはその店主の声を聞き、店を去った。


 (これで、剣穂が揃ったし次は握りだな、やっぱり握りは長時間使っていても疲れないやつが欲しいよな。) 

 

――

 

 そう思いながら、アクフは様々な鍛冶屋を巡り、納得の行く技師を見つけた。


 それはカイロの良い立地にある、有名鍛冶屋、ネイトウエポンの店主の弟子、サトロストだった。

 

「こんな剣は中々見られるものじゃないね、この隕鉄の剣は。」


「〘天翔石剣カノンスド〙です。」


「そっ、そうかい。それじゃ、一応聞いておくけど 、正直言って、僕みたいなやつに握りを任せていいのか?」

 

「はい!表に飾ってあった、貴方の作った剣の握りを拝見させていただきましたが、とても良いものだったので、ぜひ!」


「それなら、任されるよ、けど、僕は修行中の身で、完成度の保証はできないから、値引きしといておくね、完成は一週間後くらいだから取りに来て。」

 

「ありがとうございます!」


 そう言い、アクフは店を去った。


――

 

 そして、最後に向かうのは〘天翔石剣カノンスド〙を作り、他にも隕石によって破壊された数々武器を作った鍛治士のもとだ。 


「スドさん!前に作ってくれた〘天翔石剣カノンスド〙の鞘を作ってくれませんか。」


「………〘天翔石剣カノンスド〙?」


「あっ!〘天翔石剣カノンスド〙っていうのは前に隕石で作ってもらった武器です。」


「………思い出した、それじゃ、完成は一週間後で十万ファラルになる。」


「今回もいいもの期待しています!」 

   

「………期待しておいてくれ。」 


「それでは、一週間後に取りに行きます!」


「………ちょっと待て。」


「なんですか?」


「………もしかして、盾もなしに傭兵やってるんじゃないだろうな?」


「そうですが?」


 そう、アクフが返すとスドがものすごい剣幕で睨んできた。


「………1つ盾を買っていけ。」 


「いや、もうそんなに金が…。」


「………なら、俺が格安で作る。」


「悪いですし、いいですよ。」


「………アクフは唯一俺の作った武器をわかってくれる奴だから、そうやすやす死なせたくない。」


「そんなことは無いですよ、スドさんの作る武器は素晴らしいんですから、それに俺は大丈夫ですよ。」


「………それと似たようなことを言って死んでいったやつの逸話がどれだけあるか知っているか?」         


「一万以上ありますね。」


「………邪魔にならない刃がついた盾を作る、最悪、剣が使えなくなった時の剣の代わりとして使え。」


「そこまで言うなら、仕方がありませんね。あまり、スドさんには無理をして欲しくは無いんですが。」


「………俺のことは一旦、気にするな、今は傭兵なんて危ない仕事しているんだから、自分の事を考えろ。」


「ありがとうございます。」


「………それじゃ、俺は鞘と盾作りに取り掛かる、盾の方も一週間で完成する、取りに来てくれ。」   


――


 アクフは握り、鍔、鞘、盾をすべての店に取りに行き、〘天翔石剣カノンスド〙につけて、ソルバ、デオル、サビテニ、イザを集めてお披露目会をした。

 

「凄いな、この鞘、機能性は勿論、まるで彫刻品のような美しさを感じさせる。」


「そうでしょう?スドさんの作る武器は本当に凄いんですよ!」 


「そうですね、普段武器には拘らない、私でも良いものだとわかります、何故こんなに良い物を作る鍛冶師が有名にならないんですか?」


そう、デオルが〘天翔石剣カノンスド〙を持ちながらアクフに言った。

 

「それがですね、前に聞いたことがあるんですが、その時には、昔一時期、他の街でかなり有名になって、それが原因で貴族が来て、無理やりな注文をしてきたんですよ、そして、その注文を受けなかったら、貴族が手配したのか、周りの人等から徹底的に潰されて、それから、目立つのがトラウマになったって言っていました。」 


「そうなんですね。」


「そう言えばだが、その盾?剣?みたいなのはなんだ?」


「これもスドさんが作った武器で、盾なのに刃がついているんです、ちなみに名前は、スドさん命名で〘ソールド〙です。」


「それって扱いにくくないか?」


「大丈夫です!そこまで重くはないので。」


「一回持ってみてもいいか?」  


「いいですよ!」


 そう言い、アクフはテーブルに置いてある、〘ソールド〙をソルバに手渡した。 

  

「軽くなっているとは言え、結構な重量があるな、本当に剣を持ちながら使うことは出来るのか?」


「大丈夫です、なにせ、私が鍛えた弟子ですから。」


「そうです、大丈夫です!」


「そ、そうなのか……。」 


「そう言えば、前に新しい剣術を作ったって言ってたけど、どんなの?」


「『暴剣』の派生の剣術なんだけど、『こく』っていう、威力は下がってしまうけど、今の所、百発百中で当たっている剣術なんだ。」


「ふーん、そうなんだね。」


 その後、アクフ達は武器とスドについて話し合った後、各自解散となった。


 アクフは寝室で考え事をしていた。

 

 (それにしても、最近の生活は充実しているな、こんな思いは、ナルがいてくれた時以来だ、ナル…、奴隷商に捕まったけど、今頃、どうしているだろう…、今の俺にはナルの居場所は分からないし、今度出会えたときは必ず、守ってみせる。)  

  

 そうアクフは決意を固めて、眠りに落ちる。

 

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