第26話地下底に眠る化け物
引き継ぎ儀式の山の奥深くには、何か吸い込まれるような感覚に陥りさせて人を誘き出し食らう化け物がいる。生きたければ、そこに近づくな。
という言葉が言い伝えではある。
それを知っていたにも関わらず、義刀はまんまと何か吸い込まれるような感覚に陥り、奥深くに降りてしまった。
そこにいたのは、体長3メートルは超える全体的にはモグラのモグラの見た目をしており、所々、特に歯などは鮫のようで尻尾に大きなミミズのようなものがついている化け物であった。
化け物を見て、アクフは即座に義刀に指示を飛ばす。
「義刀、モグラもどきの気は俺が引く!義刀は攻撃に回ってくれ!」
「御意!」
「バファイ、行くぞ!」
バファイを纏わせたアクフは『打音放』をぶつけて化け物の気を引く。
その隙に義刀は化け物の足にあたる部分に『
だがしかし、その程度の攻撃では化け物には微々たるものな為、あまり効かない。
あまり効かないことを察した義刀は速さ重視の『
とてもスタイリッシュな一撃を化け物に与えることに成功し、かなりの傷を負わせた。が、当たりどころが良くなかったのか、化け物はピンピンしていた。
(某の『
一方アクフは〘
そんなアクフに、化け物がサメの牙を飛ばし、その影響で〘
アクフは〘
そこで僅かな隙が生まれてしまい、化け物の攻撃を受けて、壁に叩きつけられてしまった。
(うっ、何なんだこの化け物、俺の僅かな隙も逃さずに攻撃してくるなんて、強すぎるだろ。って、今はこんな事を考えている場合じゃない、あの化け物を倒すためにはどうすれば良いのかを考える時だ。倒す方法……単純に四肢を切断して無防備にしてから総攻撃が最適解か?その為には何よりも〘
今度のアクフは隙を作らない程素早く〘
放たれた『廻音剣』はとんでもない速さで回転し、化け物の足に直撃した。
その結果は、化け物の足に浅い切り傷をつけることしか叶わない。
(予想通り滅茶苦茶硬い。これは俺が四肢を切断するのはまず無理であろう。)
「義刀!すまないが、作戦変更だ!俺が隙きをつくるから、あの化け物足の関節を狙って四肢全部を切断してくれ!」
「御意!」
アクフは化け物の顔面に『打音放』数発当てて、ストレスを与える。
その結果、化け物が隙きの大きい突進という行動を選択してきた。
突進はアクフに軽く避けられ、さらに義刀に生力を大量に使い前足両方を『兜回し』で真っ二つされた。
前足両方を切断された痛みに怯みつつ、化け物はうめき声を上げる。
「――――――」
情はないと言わんばかりに、義刀が怯んでいる化け物に再び『兜回し』で後ろ足両方を切り落とした。
すべての足を切り落とされた化け物は、とんでもない音量で叫ぶ。
「――――バシャァ!!!――――バシャァ!!!!!!!」
そのあまりの声量にアクフと義刀は手で耳を塞いでしまう。
痛みを和らげる為ゴロゴロと転がり始めた化け物とぶつかった。
その影響で二人共勢いよく壁にめり込み、受け身が取れなかった為、アクフの意識が飛んだ。
それとは対象的に、兜太郎の能力のお陰で義刀はピンピンしていた。
(うん?アクフ殿が全く動いていない……!早く助けに行かなくては。)
義刀はすぐさま埋まった壁から出て、アクフの元に向かう。
途中化け物に吹っ飛ばされそうなりながらも、義刀はアクフの元に到着し、すぐさま意識と脈を確認した。
(良かった。アクフ殿は意識は有らぬが、まだ生きている。そうなのであれば……。)
義刀は転がりのたうちまわる化け物を真っ直ぐ見つめる。
(アクフを看護する為にあの化け物を屠らねば。)
四肢を失い本体が隙まみれになっている化け物に『
結果はガキンッ、という化け物の体の頑丈さで勢いよく弾いた音が鳴るだけで一切傷を負わせることは出来なかった。
しかも、それだけではなく、化け物の尻尾にいるミミズのようなものを目覚めさせてしまった。
ミミズのようなものは化け物と分離して、目覚めてそうそうに義刀に攻撃した。
攻撃は当たり義刀は血反吐を吐く。
義刀は兜太郎のお陰で耐久力などは通常の魂塊使いより格段に上がっている。そんな体をミミズのようなものは打撲を与えて、血反吐を吐かせ肋骨を一本折った。
この攻撃力は神を模した魂塊使いであるローガと同等である。
(くっ、この痛み。あの
義刀は肋骨が折れた痛みに耐えながら、ミミズのようなものを睨み考える。
(もし、あの蚯蚓もどきが化け物と同等、それ以上の硬度を持ってたら、某とアクフ殿は食らわれる他無いが、それを図る為に試しに攻撃してみるか。)
ミミズのようなものに近づき『
(これなら……、滅せる!)
有効打を与えられことにより、テンションは最高潮に達する。
そのまま、ミミズのようなものを刻んだ。刻んだ後に再生したが、構わず刻む。
化け物に攻撃が通らない腹癒せに刻んで刻んで刻みまくる。
それをミミズようなものは許容しなかった。ミミズのようなものは義刀の肩に噛み付く。肩にミミズのようなもの牙が刺さって血が出ているが、義刀は構わず刻む。
偶に襲ってくる化け物を避けながら、刻む。
(こいつ、直ぐに回復して戻るぞ!)
ミミズのようなものは自身の能力である圧倒的な回復能力で再生していく。
最初は慣れない感覚で刀が遅くなっていたが、今はいつも通りに戻っている。
しかも調子がとても良く、どんどんミミズのようなもの斬る速度が上がる。
数時間後には、少しばかり構想していた連続技『
『
(これで敵ははあの化け物だけだ。)
隙を
先ずは『兜回し』を使い斬ろうとする。が、失敗した。
次に『
『
次々とこれらを使って斬ろうとしたが、そのすべてが失敗した。
義刀はバックジャンプで距離をとって考える。
(某の全ての剣技を試したが、無駄だったか。これはもう諦めて化け物養分になるしか……。)
義刀は最後の望みを探して辺りを少々見渡す。そこアクフを見て、義刀は正気を取りも出した
(何を考えているのだ。某は。このまま養分では、あの世に行ったときにアクフ殿と顔向けできぬでは無いか。)
義刀は刀を構えた。
(……せめて顔向けくらいは出来るように、全身全霊を尽くさねば。全く完成していないが、『
構え、決められた所作をとる。そして、隙をうかがって言葉と共に振り下ろす。
「…………『
その技の完成度は60%程しか無い。だから義刀が使える生力を限界まで使う。
振り下ろした刀は風を切り、化け物の体に命中する。
威力の程はやはり、完成されたものよりは弱い。しかし化け物を斬るには十分。
「――――バシャァ!!!――――バシャァ!!!!!!!――――バシャァ!!!――――バシャァ!!!!!!!」
化け物は喚きながら義刀に斬られた。
「ふぅ、一応なんとかなった。アクフ殿を助けなくては。」
義刀は気絶しているアクフに近づき介抱した。
――
それから数時間後。
滴が
「うっ……あの化け物はどうなった?」
「某の稚拙な『
そう義刀が言い終えた後土下座しだした。
「あの化け物の存在を知っていたのにも関わらず、まんまんと化け物の罠に引っかかってしまい大変申し訳ありません!」
「まあ失敗は誰だってあるし、今は無事だから別に気にする必要ない無いぞ。それじゃ、さっさとここから抜け出して刀を探さないとな。」
「御意!」
アクフと義刀は下ってきた階段を登り元いた穴に戻り、義刀の力を活用して横から出る用の穴を掘った。
そこから外に出たアクフと義刀は刀を見つけるべく虱潰しで探した。
数時間後。
山の殆どを捜索したアクフと義刀は、探してない最後の場所に向かっていた。
最後の場所に刀があるのか、他の所にもあった罠の数が異様に多い。
「義刀!この感じもうすぐだぞ、頑張ろう。」
「はい!」
そう言いながら二人は飛んでくる様々な物を避けていた。例を少しばかり上げるとすれば、
アクフは四方八方から無造作とも思える量をなげられては、(そろそろ避けるのは無理になるな。)と思い。投げられている方向に『打音放』を放ち対処した。
(おや?アクフ殿の『打音放』で
義刀は隠し玉がないか辺りを注意深く見る。
(こんな事思ったらアクフ殿に大変無礼だが、警備部隊弐は『打音放』で簡単に黙る部隊ではない。警備部隊弐は特殊な訓練を受けて気配を完全に殺し、素早く動ける部隊だ。今もアクフ殿と某の隙を伺っているだろう。)
(義刀が辺りを注意深く見ている……まだ敵がいるのか!よし、ここくらいの範囲だったら行けるだろ。久しぶりに『
アクフは強化し20メートルになった『
結果としては数人くらいの集団、警備部隊弐を感知した。
(化け物の戦いでは情けなく気を失ったからな、償いとして俺一人で対処する。)
義刀に、「少し別行動する義刀はこのまま走ってくれ。」とひと声かけてから感知した構成員の集団に向かう。到着した所で柄部分で構成員の一人を思いっきり殴る。その結果、構成員の一人は気絶せれたが、他の構成員に気づかれてしまった。
他の構成員は気づかれたことに少々驚きながら逃げる。
アクフは容赦なく『打音放』を残りの構成員に浴びせた。いくら早く動けようと、魂塊持ちではない人間が音速以上出すことはほぼ不可能だ。
全員気絶したことを確認したアクフは義刀の元に急いだ。
数分後。急いだことによりそこまで時間がかからずに合流できたアクフは義刀に話しかける。
「義刀、刀は見つかったか?」
「いや、までの通りまだ刀は発見しておりません。」
「うん?あの影は……?」
アクフが見つめた先には刀掛けに飾られている目的の刀〘
「はい?某には全く持って何も見えませぬが……。」
アクフの武器を見る時の視力は途轍もなく上がっており、普通に魂塊を使った程度では並び立つのは困難だ。なので義刀には見えるはずもない。
「義刀、刀に向って走るぞ。」
「御意!」
走ったことにより刀掛けにはあまり時間はかからずに着く。
「ついに来たな。」
「はい。普通は3日位かかるらしいので1日で成し遂げたのは早い方です。ですが、いろんなことがあった為、ここまでの道は長かったようで短いものだった気がします。」
「でも、あの刀がが偽物の可能性もあるから一旦調べてみたほうが良いんじゃないか?」
「御意。」
義刀は恐る恐る刀を触って本物かどうか確かめるために抜刀をする。
刀身は普通の刀ではありえない緑色をしている。その緑色は黄色と混ざりながら実に鮮やかに太陽の光を反射して力強く輝いていた。
その緑色を見た時義刀はこれは偽物ではないと確信し、アクフに一応の確認をとる。
「アクフ殿。アクフ殿から見てこの刀はどう思いますか?」
爽やかかつほんの少し暖かい風が吹く中、〘
因みに王以外には知られていない判別方法があるのだが、それの存在自体は王族は皆知っている。当然義刀も知っているが、それが分からない為に、アクフに意見を求める目的でアクフに見せているのだ。
〘
「そんなに綺麗な刀が偽物のはずがない。本物だ。」
義刀は圧倒的な達成感を感じ、満面の笑みを浮かべながらアクフに向って口を開く。
「それでは帰りましょうか。」
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