第35話銃弾チャンクと無剣の有剣
弾丸チャンクへ立ち入る許可をもらったアクフは、試験官のとの新銃試験を終えてから向かった。
向かった先の弾丸チャンクは圧倒的に人がいなく、その代わりというわけかよくわからない銃が転がっている。
「よし!ここさえ掘り終わったら銃を使えるぞ!」
アクフはそう決心して死ぬ危険性がありありな地雷原に飛び込んだ。
見た目は他のチャンクとは殆ど変わらない普通の採石場的な雰囲気ではあるが所々銃弾が地面から飛び出していたりして踏んだら爆発する状態になっている。
そんな場所で求められるスタイルは「出来るだけ銃弾に触れないように慎重にする。」というものだ。
(やっぱり入るのに試験が必要だから、かなり危険だ。けど、俺の場合は『
これまで日の目を浴びることが少なかったる『
因み銃弾チャンクで1番手に入りやすい銃弾の種類はロケットランチャーのもので、2番目がサブマシンガンなどの銃弾となる。
(ふー、そういえばあの試験官さんが言っていたけど、ここの下にはなにかあるだよな…………。)
だが、試験官がいった情報はそれだけではなく。弾丸チャンクの下は人が行けるような所ではないと言っていたのだ。
そのことによりアクフの中には二つの感情が渦巻く。
一つは試験官が忠告したことを破る罪悪感、二つはそんなところにはどんな武器が埋まっているんだろうという抗いきれない強い好奇心。
初めのうちはそんなことをしても無駄かもしれないし、試験官が忠告したことを破ることにもなる。
だがしかし、やはりアクフは自分の心を支える柱の一つである武器への好奇心は捨てられなかった。
なのでアクフが出した結論は、
(少しだけ……少しだけなら試してみてもいいかな?)
と、理性が負けて欲望に素直に従うものだった。
欲望に素直に従い深く掘るために『
しばらく掘っていると銃弾チャンクを越えたのか銃弾が一切なくなったのが追い風となりアクフはとんでもない速さで真下に掘っていった。
(よし、銃弾チャンクを抜けてからは結構な速度で掘れてる!今の所は『
変化があることを祈りつつアクフはひたすらに掘る。
だがしかし、それは他の発掘者見れば信じられないことだった。何故なら……。
「うん?良く分らないが急に熱くなってきたぞ。」
弾丸チャンクの下は信じられないくらいの高温で60度もあり、少し作業を間違えたら岩が崩れ岩風呂状態にもなってしまいとても危険だ。危険為、発掘者は絶対にこの地層には来ない。
アクフはデオル式鍛錬改により暑さや寒さにはかなりの耐性があるが、それでもどんどん上がる周辺の温度に耐えかねていた。
しかし、その時。
(うん!?『
暑さも途方の彼方に吹っ飛んでしまう程の発見をしたアクフはペースを上げて『
今のアクフには『
そして、掘り進め遂に『
ガッギィィィン!!!と、ぶつかったことにより鋭い金属音が地下に響く。
(よし!ちゃんと『
響いた音を聞いたアクフは急いで『
が、箱はとんでもなく頑丈に作られており、作られた当時と変わらないくらいの強度を誇っていた。
(この箱、目茶苦茶硬いぞ。この感じじゃ『超音剣』を使ってもこじ開けられるか怪しいな。)
いろんな手を試して結論を出したアクフは全然開かない箱に対して眉をひそめながら考える。
(でもなー、かと言って『
その後、アクフは『打音放』を使って元の道に戻って、ノルマ分の銃弾を納品してから宿屋に戻った。
――
アクフがとんでもなく硬く大きい箱を掘り出していた時ヤクバラはギャングの仕事の一環である後始末をしていた。
地下に広がるウェスタン街のアクフも泊まっている宿にヤクバラと始末対象がいる。
「おうおう、お前かウチの構成員を理不尽に殺したっていうあんちゃんは……。」
「ああ、そうだよ。だが、訂正してもらいたい箇所がある。」
「なんだ?」
「俺は理不尽に殺していない。アレはあいつが俺に侮蔑的で喧嘩を売っている様な視線をよこしたから殺したまでよ!」
「あん?あん?あいつはそんな目線を客に向けるやつじゃねぇし、仮にそうだったとしても、理不尽だろ!?」
キレたヤクバラは手に持っている2丁の改造ミニガンを殺人鬼に向けてぶっ放す。
賞金首は狼モチーフの魂塊をナイフに纏わせて、銃弾を躱す。
「まあ、お前が俺を殺そうたってんなら俺もお前を殺すだけだ!」
(ちっ、ちっ、そいう雰囲気はあったが魂塊使いか。この街の犯罪者は魂塊使いが多すぎるから困る。)
地下の街ウォンタエントスタックの犯罪者の魂塊使い率は50%にもなる、この数字は魂塊大国エジプトよりも高い。
賞金首はヤクバラの弾幕を避けつつ、魂塊の能力『強力食い付き』を使い壁にナイフを突き刺し縦横無尽に駆け回る。
(ちっ、これだから魂塊使いと戦うのはめんどくせぇ、少し鍛えた奴なら普通に銃弾を避けやがる。だが、奴らは身体能力が上がるだけで体の硬さが変わるわけじゃねぇ。当たりゃ殆一撃だが。まぁまぁこれは俺の耳を使った方が良い。)
そう考えつつ弾丸を展開したことによって生まれた余裕を使って耳を澄ます。
耳を澄ますごとにどんどん賞金首のリズムを理解していく。
数秒後には賞金首の先の行動を読めるようになる。
(まぁまぁ、こういう典型的な魂塊にだけ頼っているだけの
ヤクバラはミニガンの持ち手についているスイッチを親指で押す。
スイッチを押したことにって大振りのブレードがミニガンに被さるように展開される。
そのまま2つの大きな大剣となったミニガンを振り回す。
これによりそう簡単には賞金首が近寄れないと思ったヤクバラだったが――
ブレードを展開したミニガンがそう簡単にはもとに戻らないと踏んだ賞金首はヤクバラに向かって飛び出す。
「へぇ、大層なしょうもなさな銃持ってんだな!俺が奪って売ってやるよ!『食付き裂傷』!」
賞金首は天井に刺してしていたナイフを抜いて、ヤクバラに突き刺そうとする。
(反応速度が間に合わなくて避けれないな。ちっ、仕方ないミニガン一丁無駄にする!)
とんでもないと速さで向かってくるナイフはヤクバラの体ギリギリのところでミニガンに当たりミニガンの奥深くまで突き刺さる。
それにより、ヤクバラのミニガンは修理しないと使えない状態なってしまった。
ミニガンがもう使えないことを気配で理解したヤクバラはもう一つのミニガンに両手を添えて、『世理』を使う。
『世理』による斬撃は邪魔されることなく賞金首のナイフを吹き飛ばした。
(ちっ、ナイフが飛びやがった。あいつがねぇと
賞金首はブチハイエナの魂塊を靴に纏わせる。
そのまま止めに入ったヤクバラの妨害を無視しナイフを回収されてしまった。
ナイフを取ると同時にナイフに狼の魂塊を纏わせる。
因みに鍛錬を積んでいない普通の魂塊使いなら2つ以上同時に纏わせたりすることは出来ない。
「これでお前は終わりだ!『裂傷飛来』!」
ナイフを構え、とんでもない速さで迫ってくる賞金首。
対して、ヤクバラはもう一つのミニガンを投擲する。
投擲したミニガンはナイフに当たり無惨に砕け散った。
ヤクバラはミニガンを使い、稼いだ時間で逃げようとするが、意味は無い。
(くく、俺の人生も終わりか。結局、アイツの仇を取ることは出来無かった。結局俺は魂塊が使えないから駄目だった。こんなんじゃあの世でアイツに顔向けできねぇな。)
後悔がヤクバラの脳内に駆け巡った時、部屋に煙のような胞子が充満する。
侵入者はダウナーな声で賞金首に話しかける。
「……やっと見つけた。高額賞金首、傷つけのギョール。」
対して賞金首はヤクバラに向かって放っていた『裂傷飛来』を中断して胞子の方に集中する。
「お前は誰だ!」
侵入者は一応名乗っておいた方が良いと思い、胞子の中から姿を表し口を開く。
「……賞金稼ぎのミティス、あなたをとっ捕まえに来たわ。」
「【無剣の有剣】かぁ!オマエとは戦ってみたかったんだよな!」
「手短に終わらせてもらう。」
「ああ、お前が死んで終わりだ!」
傷つけのギョールはミティスに向かって『裂傷飛来』を放つ。
ミティスに向かって高速で飛んでくる技を、ミティスは影に潜ることで回避した。
そして、潜った影の上に漆黒の剣が現れ、傷つけのギョールに。
振り下ろされた。
「は?」
振り下ろされた剣は傷つけのギョールには傷を与えずすり抜けたが、傷つ馬鹿みたいな声を発した次の瞬間には傷つけのギョールは意識が飛んで地面に転がっていた。
(あれが【無剣の有剣】のミティスか。確かに【無剣の有剣】だった。さっきの現象、俺が聞いたことがない気配がした。多分だが魂塊ではない。あいつからは俺への敵意はないが、強烈な何かに対しての殺意を感じる。)
影から出てきたミティスはヤクバラの方を見て少々申し訳無さそうに話しかける。
「あっ、あなたが先に戦っていたのに、悪かったです。ごめんなさい。それはそれとして組合には突き出しますけど。」
「俺は油断して死にかけてたし今回は良い。落とし前は組合に突き出してからでもつけれるからな。」
「もしかして、ギャングの人ですか?」
「まぁ、そうだな。」
「それはまずいですね、取り敢えずこの宿でなにか奢りましょうか?」
「ああ、ああ、有り難く奢られるよ。」
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