第34話銃弾試験

 ヤクバラが話した内容はこうだ。


 まず、前提として銃弾というのは銃を銃たらしめるのに最も必要な部分である事。


 その為、ギャングはそう簡単に銃弾を流出させないように試練を作っている。


 なので、アクフにはその試練をクリアしなくてはならないが、第一関門は既に突破しているという事。


「……と、こんなもんだな。他に聞きたいことはないか?」


「それじゃ、後はどんな試練があるんだ?」


「試験と面接だ。」


「その試験と面接はどんなことをするんだ?」


「ああ、試験は銃弾チャンクに行っても大丈夫な実力か判断する為にウチのギャングの奴と戦ってもらう。面接は銃弾を銃を持っている他人への無闇は譲渡、売買をしないような奴か見定めるものだな。まぁまぁ、俺が口添えしといてやるからほぼ余裕だろうな。」 

 

「解った。それはいつにあるんだ?」 


「3日後だ。」


「了解。3日後までには新技を仕上げていないとな。」


「おうおう、頑張れよ。」

 

「じゃあ、鍛錬があるからこの透明な銃を持っていく。」


「分った。」


 そう言いMNSを持ったアクフは自らの宿に戻って行った。


――


『探音剣』を仕上げる為にアクフは鍛錬をしながら考える。


 (この2日『探音剣』だけを修行してみて分った。今の『探音剣』じゃなんだか足らない。このままじゃナルの足元にも及ばない技にしかならない、でもなんだかただ単に努力しても駄目な気がする。もうちょっと捻りというか閃きが……。)


 明日に試験を控えているアクフは少々の焦りも覚えつつ、必死に捻り出す。


 (ここは別の技を混ぜてみるのはどうだ?)


 ということでアクフは『廻音剣』を〘天翔石剣カノンスド〙に纏わせて『探音剣』の効果範囲内にある的を斬る。


 (うーん、一応普通に斬るよりは強いんだけど、なんだか焼け石に水というか『超音剣』の方が良いな。だったら、バファイの技じゃなくて俺の技を試してみるか。)


 そこら辺の石を空中に投げたアクフは『刻』の構えをとりながら『探音剣』を使用する。


 目を閉じて領域から伝わってくる情報だけに集中する。 

 

 そして、落ちてきた石を〘天翔石剣カノンスド〙両断した。

  

 (あー、うん。『刻』使う意味全く無い。よし、次は『覚悟の剣リゾルート』だ!)


  いつもは斬れない銃が入っていた箱を投げて『覚悟の剣リゾルート』で両断する。


 (これはこれでいいんだけど、これだけだとやっぱり必殺技として心もとないから、なにか足したいよな。今の『探音剣』に足りないものは…………相手が来るまで待つわけだから、後ろの方の奇襲にも対抗する手かな。)


 アクフは後方の奇襲に対抗する手を真剣に考える。


 だが、アクフの技に後方をカバーする技など――――


 (あっ!『轟放奏剣ごうはそうけん』!でも、ただ攻撃するだけなら『探音剣』を使う意味がない……ここは考え方を変えて攻撃じゃなくて邪魔をすることで後ろの方の奇襲に対抗しよう!それなら『轟放奏剣ごうはそうけん』の『鎮音放』バージョンにして構えている間に『探音剣』と同じくらいの範囲に展開すれば…………!)


 早速アクフは石を真上に高く上げ、『探音剣』と『轟放奏剣ごうはそうけん』『鎮音放』バージョンしてから、〘天翔石剣カノンスド〙を構える。 


 真上に投げられた石は領域内に入ると落下速度がとても遅くなり、簡単に両断できた。 

  

 (やった!これで完成だ!……そういえば前に化け物と戦った時に即席で二刀流で再現してみたけど、一刀流の時よりもやりやすかったな。よし、二刀流にしてこの技の名前は『静虚双劇せいきょそうげき』だ!) 


 強力な技を会得したアクフは更に技を獲得する為剣を振る。


 翌日。


 物事とはそんなに上手くいかないもので結局、アクフは『静虚双劇せいきょそうげき』以外の技を習得できなかったが、試験の行われる場所に向かった。


 試験の行われる場所は地下街の人目のつかないところにある店の下だった。

 

「さて、あんちゃん今回する試験がなんの為にするか分ってるよな?」


「銃弾チャンクで銃弾をいっぱい掘る為です!」


「いやまぁ、そういうことを聞きたかった訳では無いんだけども、いいか。こいつには関係なさそうだし……それじゃ、一応手加減してるから今から俺の色々な銃の攻撃を全部防げ、下手しない限りはしないからそしたら実技は合格だ。」


「はい!行くぞ、バファイ!」


 威勢の良いアクフの返事が響き渡った次の瞬間に試験官はロケットランチャーを構えてぶっ放した。  

 

 それに間に合うようにアクフはバファイを〘天翔石剣カノンスド〙を纏わせ『静虚双劇せいきょそうげき』の構えに入る。


 対して空間を割くように発射されたロケット弾はアクフに向かって直進してくる。


 ロケット弾がアクフの領域に入った瞬間、反射でロケット弾を真っ二つに断ち斬った。そして断ち切られた残骸はアクフから離れた場所で爆破する。


 (ふーん、最初は剣を構えて何してるんだこいつ?と思ったが、斬り伏せるとはな。ヤクバラが強いやつというのも納得の強さだ、もしかして、こいつ相手なら新しい銃の実験できるか?)

 

 そう思いながらも試験官はロケット弾をプロのような早さで装填してアクフの方にぶっ放す。

   

 (速さ的には普通の魂塊使いの剣のほうが断然早いけど、爆発の威力はかなりのものだから扱いに気をつけないと一発で終わりになりかけるな。) 


 そう思いながらも反射で飛んできたロケット弾を斬りまくって即座に後にふっとばす。


 ロケット弾を切り捨てる事数十分。試験官が持っているロケット弾の弾数がなくなって来たので、アサルトライフルに持ち替えてアクフに銃弾を飛ばした。

  

 (次の銃だ!しかも新しいやつ!)


 アクフは見たこと無い銃を見てワクワクしながらも〘天翔石剣カノンスド〙と〘赫斯御魂かくしのみたま〙をしっかり握る。 


 かなりの速度で飛んできている弾もアクフの領域に入った途端、反射で斬られる。


 (うーん、やっぱり『静虚双劇せいきょそうげき』は相手の攻撃を受けることには無類の強さを誇るんだけど、やっぱり反射でしてるから考える事を行動に移すことができないんだよな。)


 このように『静虚双劇せいきょそうげき』で銃弾を切り捨てている今のアクフにはとんでもないくらい考える暇がある。


 それを察知したのか試験官はミニガンをアクフに向けて地面に置き、銃弾の弾幕を浴びせる。


 だが、その弾幕もアクフの『静虚双劇せいきょそうげき』によって弾かれる。


 (もうこれはやっていいよな?こんな強いやつならアレを使っても無事だよな?)


 そう思った試験官はこれまで試そうとして試せなかったとんでもない代物を出す。


 試験官の持つとんでもない代物とはかなりの高威力を持ち人に当てればそのあまりの威力により即死する爆弾を放つランチャーだ。 


 『静虚双劇せいきょそうげき』は反応速度こそ力量で負けている相手にもカウンター勝負で速さで勝てるくらいの速さを持っているが、性質上威力は普通に魂塊を纏わせて攻撃するのと同程度しか持ち合わせない。


 詰まるところランチャーの一撃を反射で斬り落とそうとすると爆発に巻き込まれることになり、かなりまずい事となる。


 そのことに今まで培っていきた経験から勘づいたアクフは打開策を模索する。 

  

 (あの銃の弾を食らったら目茶苦茶ヤバそうだ。アレをどうにかする方法……試験の合否に響きそうだけどこの命はまだ使い切れていないから、避ける!)


 短い間に見つけた答えを実行する為、『打音放』で空を飛ぶ。


 そのお陰で弾を避けることは出来たが。


 唐突に現れた侵入者からの一撃を貰ってしまった。


「やっと見つけたぜお前らギャングの武器保管庫よぉ。これで俺ももっと人を殺せるわけだなぁ!」


 侵入者とはこの街で指名手配されていた男だった。 

 

 因みにだが、普通魂塊使いの本気の攻撃と銃弾の威力は同等くらいである。


 (ッ!!!)

 

「アクフ!試験は中止だ!ここは俺がなんとかする!」


「いや、あいつのあの言葉、何もしていない人を巻き込んだって構わないって態度でした。俺はああいう奴が許せません。俺にやらせてください。」   


 アクフは顳顬しょうじゅの血管を浮かべ、笑っている指名手配に刃を上にしてバファイを纏わせた〘赫斯御魂かくしのみたま〙を構え叫ぶ。


「そこのお前!俺と戦え!」


「おっ、お前が俺のターゲットになるのか?いいぜ受けて立つ。」


 指名手配犯は銃のコレクションの中からスナイパーライフルを取り出す。


 刹那、スコープを覗かず放たれた弾は一寸違わずアクフの目に直進する。が、アクフの一撃により弾かれた。

   

 すかさず指名手配犯はハンドガンで乱射しながら近づく。


 (試験官が放った弾はかなり規則的だったけど、これは素だときついな。『静虚双劇せいきょそうげき』を使おう。) 


 アクフは『静虚双劇せいきょそうげき』の構えを取ろうする。


 が、速度が遅かった為指名手配犯に腹を足蹴りを受けて出来なかった。 


 (くっ、あまり距離を取っていない中での『静虚双劇せいきょそうげき』は逆に相手に攻撃のスキを与えるようなものか……今度は別の手でいかないと。)


 強く踏み込んだアクフは加速する為、『打音放』を使いながら指名手配犯に突っ込む。


 指名手配犯はなすすべなくアクフの一撃を食らう。


 重い一撃を貰った為指名手配犯は壁まで吹っ飛んで強くぶつかる。


 緩急を入れず、『打音放』を指名手配犯に3発叩き込む。


 トドメと言わんばかりに刃の方を持ってバファイを纏わせた〘俎板切まないたきり〙を投げつける。


 流石にこれだけの攻撃を命中させた為、指名手配犯はぐったりした。


「ふー、終わりました。取り敢えず兵士にでも突き出しておきますか。」 


「その必要はないぞ、アクフ。ここは賞金稼ぎの施設の近くだから俺が突き出しておく。……それと、意外と強いんだな。お前、流石あのヤクバラが認めた男だな。相手を倒すことに躊躇ちゅうちょがない。よし、合格だ。お前は弾丸チャンクに行っても問題なさそうだ。あと銃弾チャンクの下には掘っていくなよ?前の報告で弾丸チャンクの下には何かあると分かったが、とても人が行けるようなとこじゃないからな。」 


「ありがとうございます!」


 その言葉を言った後、アクフは思いついたことを心のうちに留めて置くことが出来ず少々申し訳無さそうな表情で申し出る。


「もし、良ければいいのですが、さっき見たいなすごい銃の試し撃ちに突き合わせてくだい。」


 試験官が使ったランチャーは感で本来の試験では使わないものと踏んだアクフの申し出であった。 


「ああ、喜んで。」


 こうしてアクフのトレニングメニューに銃弾訓練が追加された。

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