第29話魂塊強化の術
アクフがナル用の着物を買って義刀と共に城に帰った後日、鍛錬の後にバファイを強化するための生力注ぎができなくなったので義刀に言うことにした。
「おめでとうございます!そこまで行ったなら、次は特定の場所でしか行えない儀式が必要なので今度やりましょう。」
ということで後日。
アクフと義刀は城の地下にある部屋に来ていた。
部屋は全体的に居心地が悪い程ジメジメしており、壁には山と
「義刀、もしかしてここは生力の貯めれる量を増やす場所か?」
「はい、その用途でも使われていますね。ですが、だいたいの場合は今から行う儀式為に使われていますよ。」
そう言いつつ、具現化してあるバファイの周りに赤、紫、青、黄、緑等の色がついている金品類を置いていく。
しばらく経って置き終わると義刀はなにかブツブツと唱えだした。
唱えている内容の言語は世界の言語である共通語ではなく、アクフには理解できないものであった。
アクフは理解できない詠唱を聞くのに飽き、さっき見えた奇妙な壁を再び見てみると、そこには山と大量の鬼と鬼人の絵に変わっていた。
壁を見て(絶対さっきとは違うよな?)と思いつつ、もう一度見てみると壁は元の山と大量の魑魅魍魎に戻っていた。
不思議な体験をアクフがしているうちに理解できない詠唱が終終わる。バファイの体が急に光出して次に瞬きをした時には収った。アクフはなにか変化がないかとバファイの周りを見てみると儀式で使用されて金品類が無くなっていた。
「……終わりました。一回バファイを纏わせてみてください。違いが分かると思います。」
「分かった。」
アクフは持っていた〘
纏わせた瞬間今までよりも強い力が体を駆け巡っていることに気づく。
「おお、今までより強い力を感じる……!」
「効果は全魂塊に備わっている肉体強化の能力を強化し、又個々の能力を微々たるものですが強化されるので多分成功しているでしょう。……これでもっと強くなれましたね!アクフ殿!」
「ありがとうな、義刀。」
「礼なんて言われる筋合いはありません!アクフ殿にはお世話になっているのでこれくらいはします。」
「義刀がそう言うなら、聞きたいことあるんだが聞いてもいいか?」
「なんですか?」
「竹戸って鬼とか鬼人と関係あるのか?」
「…………そんなことより帰りましょうか!速く帰って強くなったアクフ殿と手合わせさせて下さい!」
もしかしたら義刀の地雷を踏んでしまったのかもしれないと思ったアクフはその後何も追求せずに、その日は無事に城に帰った。
数日後。
アクフは義刀との鍛錬を終えて少し休憩していた。
(うーん、今やってるのは『
名付けを一旦保留にしたアクフは暇つぶしがてら城下町に出て散歩することにした。
しばらく歩いてアクフは街に誰一人もいないことに気付く。
(うん?いつもなら結構な人がいるはずなんだけど……火事でもあったのか?)
そう思ったアクフは空を見上げて目を凝らしたが、煙は上がっていなかった。
(だったらなんでこんなにも人がいないんだ?)
疑問の答えを探ろうとアクフは更に探してみたが、誰も見つからず手がかり的なものは見つからなかった。
「うーん、本当に何があったんだ?」
疑問を呟いて歩いているアクフの後ろから人が歩いてきた。その人はアクフを見るなり声をかける。
「ん?その顔は兄上に稽古をつけている異国から来たアクフではないか。」
アクフが振り向くと、そこには義刀と似た顔立ちをしているが身長がかなり高い人、義刀の弟である刀家が立っていた。
「あの、街の人がほとんどいないんですけど、なにか知っていたりしますかね?」
「それは街全体が虫興祭に赴いているからだ。というか今日が竹戸1の行事である虫興祭であることを兄上から聞かされないのか?」
「いや、覚えが……。」
その瞬間アクフの脳内に2日前に義刀が放った「そう言えば、近々祭りごとがあるので良かったら参加してください。」という言葉が駆け巡る。
「ああ……そう言えばちらっとそんな事言っていた気もしますね。」
「アクフも一緒にゆくか?」
「せっかくなのでご一緒させていただきます。」
――
アクフ達は虫興祭の開催地についた。
提灯などで飾り付けされていて浮世離れした美しさを持っている広場でアクフが一番先に見たものは巨大な
因みに刀家は義刀を見て(普段とは別腹の努力だ……
刀家とは虫興祭に関する色々なことを教えてもらって別れたアクフは祭りに参加するために虫を取ることにした。
(うーん、中々見つからない。でもこの森に生息すると言われるヘラクレスオオカブトを手に入れた者には名刀〘
自分の収集欲を満たす為にアクフは森の奥に入っていく。
しかし、探せど探せど見つからない。
当然である。土地柄として様々な虫が生息している竹戸だが、この森には元々ヘラクレスが好む環境ではなく。一応ヘラクレスオオカブトはいないこともないが見つかりにくい場所にしか生息していない。
そして、アクフは昆虫採取というものを生まれてから一度もしたことがないのだ。
これらから推察できる結果は……大苦戦。
「ほっっっんとうに、見つからない……。これは『
『キュュュ!』
掛け声の後バファイを懐に忍ばせておいた〘
その効果により辺りにいる虫の情報が大量に頭に入ってくるが、それらの中にヘラクレスオオカブトはいない。
取り敢えず、総当たりをしようとしたアクフは足に力を込め森の中を駆け出した。
駆ける。駆ける。駆ける。
だがしかし、どんなに走り回ってもヘラクレスオオカブトの情報は入ってこない。
一時間程森を駆けてなんの成果も得られなかったアクフは少し〘
(さて、本気を出して『
アクフは深く考え虫取りに関する記憶を探る。
そして、考えに考えて出た答えは――――
(うん、探しても全然思い出せない。もう自分で考えるしか……!)
アクフは武器馬鹿である。ので武器関係のこととなると頭がいつもの速度で回らなくなるのだ。
そして、ヘラクレスオオカブトを早く見つけないと、と焦ったアクフは思考能力が低下していた為にまともな作戦を考えられず四苦八苦する事となる。
その一例を上げると、そこら辺の気に足蹴りを加えた後大声で「ヘラクレスオオカブトー!」と叫ぶ。という奇行をした。
だが四苦八苦したすえに下手鉄砲数撃ちゃ当たるの精神で正解に近い答えにたどり着く。
その作戦とはそこら辺に生えている木の実と樹液をぐちゃぐちゃにかき混ぜたものを袋に入れて木の枝に吊るして待つというもの。
(さて……これで何回目かは忘れたけど上手く行ってくれ。)
今の時間帯は深夜。虫が樹液を求め活発に動く時間帯である。
その為に木の実と樹液をぐちゃぐちゃにかき混ぜたものの周りには大量の虫がかかっていた。そして、かかった虫の中にはヘラクレスオオカブトもいた。
(やった!これで〘
そう思い、深く考えずにヘラクレスオオカブトの方に一直線で飛び出す。
その飛び出しに気づいたヘラクレスオオカブトはアクフの前から逃げる。
(くっ、やっぱり武器のことになると夢中になりすぎる癖は直した方が良いな。じゃないと今回みたいなことになる。)
今回の反省をしながらアクフは森の奥に行くヘラクレスオオカブトを追う。
蜘蛛の巣などがアクフに絡まるがそれを一切気にせずヘラクレスオオカブトに向かって突き進んでいく。
ヘラクレスオオカブトはまるで人間のような意志があるように森の奥にいってある木のもとに止まった。
その木には大量のヘラクレスオオカブトがいて、縄張り争いをしていた。
「おお……!これを取れば晴れて〘
アクフはヘラクレスオオカブトを素手で捕まえてホクホクの顔で元の場所に戻ろうとした。が、なにかゴツゴツしたものを踏んだような気がしたのだが気にせず戻る。
その後無事に〘
夜遅くまでヘラクレスオオカブトの為に頑張って時間を使ってしまっていたで少々明るくなっていた。
〘
――
アクフが眠りについてから三時間後。
元気に鳴く鳥達とは対象的に静まり返っている街の中、白湯当が鬼人になった仲間たちを引き連れてアクフ達がいる城の眼の前に立っていた。
「総員!ここまでついてきてくれて非常に有り難く思う!力!人質!すべて揃った今今が我らの悲願叶うとき!このまま城の中に入り占拠するぞ!」
その勇ましい声につられ男達も「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」と勇ましい声を上げる。
今、静まり返っている竹戸に騒がしさが襲来する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます