第24話過去に出会ったあの子との誓い
義刀は小さな頃から自由がなかった。
何故ならずっと城の中で勉強ばかりをさせられていたからである。
起きて朝食を食べて昼食の時になるまで勉強、昼食を食べて夕食の時になるまで勉強、夕食を食べて寝るまで勉強。
そんな日々を繰り返していた。
毎日勉強漬けでも別に辛くはない。ただ遊び盛りの時期に先生と家族以外の人間に合った事が無かった為に、城の外の世界に憧れを抱くようになった。
ある日の早朝。義刀はゴソゴソという何かを漁る音で目覚めた。
目覚めて音を発している犯人は誰だと、幼少期特有の好奇心に突き動かされて音の出ている場所に向かうと、義刀と同じくらいの少女が盗みをはたらいている。
義刀はその少女に怯えることなく「そんなことしていたら、父上の家来に捕まって殺されちゃうよ。今からでも遅くないから、逃げたほうがいいよ。」と心配そうに話しかけたが、少女から返ってきたのは。
「逃げない、お金になるもの見つけてもって帰る。捕まっても、私はどうせ生きているだけ、無駄だからいい。」
という少し余裕の無さを感じさせる声だった。
その声に義刀は少女の貧しい生活を察して、なんとかしてあげようと自分の部屋にある宝石を持って渡す。
「お礼なら、毎日この時間に遊びに来てくれるだけでいいよ。」
と言い、渡した。
それを見て、心底驚いた顔をした少女は目の端に涙をためながら、その宝石を受け取る。
「ありがとう。」
声はガビガビで泣くのをこらえているようだった。
「私の名前は椿、これから毎日遊びに来るね。」
それから、義刀は少女と早朝の少ない時間で誰にもバレないように遊んだ。
これはとある日の曇の日の話。義刀は何故城にまで来て盗みをはたらこうとしていたのか聞いてみた。
「そう言えば、なんでわざわざ某の家に盗みをはたらこうとしていたんだ?」
「それは、その時お金が無くて、明日食べるものもなかったから、あんまり考える頭がなかったから、なりふり構わずお金がありそうな場所に盗みをはたらくしかない。って思って1番お金がありそうなここにした。」
「そうか、何故そんなに貧乏だったんだ?」
「元々私の家は農業をやっていて、暮らしていたんだけど……。この前来た台風で作物が全部だめになって家を売って食べていたけど、盗みをはたらこうとした前の日、ついにお金が全部なくなっちゃって……。」
途中で椿がその時の記憶を思い出したのか、顔が歪んで涙を流す。
「分かった。もう言わなくて良いよ。椿。椿はもう十分につらい思いをした。これからは某が少なからず支援して毎日食べるものくらいは用意できるようにする。」
「いいの?」
「良い。某はこう見えても王位継承権?っていうのがあるから困っている国民を助けるのは責務だからな!」
「きっと義刀は、民に寄り添って幸せにしてあげられる王になれるよ。」
「某は元々民を幸せにする王を目指しているので、そう言ってくれるのはありがたい。」
「それじゃ、約束してくれる?私のような子がもう生まれないような国を作るって。」
「ああ、勿論約束する。」
「それじゃあ、そんな王になるためにたくさん頑張らないといけないね。」
「それでも、某は絶対に々民を幸せにする王になって見せる。」
義刀がそう笑顔で伝えた時、曇っていた空は雲が過ぎ去り、義刀と椿を日光で照らした。
こんな感じで義刀は早朝は椿と様々な事をして遊ぶことにより、充実した生活を送り、数カ月後。
義刀はその日も椿と遊ぶ為、早朝に起きようと布団から出ると何やら少女の「きゃゃゃゃゃゃゃゃ!」という叫び声が聞こえてきた。
これには義刀もただごとではないことを察知し、その声の元へ向かう。
(この時間帯に少女の声、もしかして椿の物かも知れない!急いで向かわねば。)
声の発生源に近づくとともに叫び声の音量がどんどん大きくなるが、ある所で叫び声は途端になくなった。
この事により、義刀の頭の中に最悪の結果が浮かぶ。
椿が城を警備している人に捕まって、殺されたのではないかという思いにより、義刀の足は普段では考えられないほど早くなった。
勢いを削がないようにしながらひたすらに、走る。
そして、音の発生源に到着するが、そこは義刀にとっての地獄の光景であった。
地獄の光景とはなにかと言えば、警備の刀によって斬首刑にされて血まみれになっていた椿の姿の事である。
「こんな物を見せてしまいすいませぬ義刀様。この事は忘れて早く便所に行き寝てください。」
義刀は悲しさのあまり、その場にをついて土下座のように膝から崩れ落ちた。
(なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ、なぜ!!!)
「もしかしてこの不心得者は義刀様にとって、大事なお方だったのでしょうか?……それなのであれば拙者は不心得者として腹を切ります!!!」
「よ、良いのだ。……お主は城の警備としての役目を果たしただけ………ウェ!!。」
あまりのショックに膝から崩れ落ちている状態で吐いてしまった。
廊下にゲロの匂いが漂う。
「義刀様!義刀様!大丈夫ですか!?」
義刀は椿が城の警備の者に殺されたという現実の前で無理やり冷静になろうとしたり、自分が気をつけるように言っておけば良かったと自責の念にかられ、意識を狩られた。
「警備部隊弐ーー!義刀様の体調がよろしくないどころか意識が無いです!!!」
警備の人は太鼓よりも大きな声を張り上げる。
それに反応をして、反乱軍の黒子のような格好をした男とは別の黒子の衣装を着ているの者達が則座に現れた。
警備部隊弐の黒子達は義刀を隅々まで調べて健康状態を確認した。
「義刀様の生存確認。何らかの病ではない事確認。外傷は無い事確認。意識を失った原因は精神的な理由であると推測!直ちに寝かせて経過を確認せねば!」
一人の警備部隊弐の黒子がそう指示を出すと、他の警備部隊弐の黒子が口を揃えて返事をする。
「義刀様搬送、了解!」
こうして、義刀は気絶した状態で警備部隊弐の黒子達に布団に戻され、椿の死体は義刀の大切な人かもしれない、ということで保管された。
次の日、義刀は長い悪夢を見た。
その内容は、椿が殺される所をスローでひたすらに眺め続けるというものだった。
義刀の見た夢は
そして、その状態から強制的に義刀は叩き起こされるように飛び起きた。
「うわぁぁぁぁあああぁぁぁああぁあぁぁぁぁああ!」
「義刀様ご乱心、ご乱心!」
義刀の寝床の側で目覚めを待っていた警備部隊弐の黒子が他の警備部隊弐の黒子に報告した。
「壱、義刀様の容態は異常?」
警備部隊弐の黒子が義刀の目覚めた時に声を張り上げた黒子にコードネームで容態を問た。
「否、精神異常が発生。体調異常無し、医者に見せに行く必要は全くもってない。このまま見守りが安定。」
「了解。」
そうやって警備部隊弐の黒子達が義刀の為にわちゃわちゃしている時に義刀本人は椿を助けられ無かった事を悔いていた。
(糞、くそ!なぜ椿に屋敷の補強のために臨時休業して大量に休みから返ってきた警備部隊が厳重に見張っていることを伝えてなかったんだ!某が駄目だったせいで椿が一人の国民が死んでしまった!椿が良い王になれると言っていたがこんな某が竹戸の王になったら竹戸が崩壊してしまう。……もう素直に某の様な生きている価値が微塵もない屑は切腹しよう。)
義刀が思い詰めて警備部隊弐の黒子に向かって口を開く。
「警備部隊弐、今の某に生きている価値はない。直ちに切腹の準備をしろ――――。」
その瞬間、警備部隊弐の黒子が義刀の頬を赤くならない程度に打った。
「何を言っておられる!義刀様は次の代の竹戸の王なんですよ!?そんなお方が死んでどうするですか!?刀次様が死んだ後の国民はどうなるんですか!?れに刀次様や小野得様だって悲しみます!どうか冷静になってください!」
この時点では幼くして『
だが、黒子はその事実を知っていて義刀の代わりはいるが、義刀に生きて欲しいと心から願っているため言わない。
「そ、そ、そうだな。某が死んだら誰が竹戸を治めるのだ。」
義刀は自分に絡まりついて身動きを阻害してくる感情をコントロールし始める。
「次に国を治めるのは想護家の長男である某しかいない。」
椿を死なせたことにより絡まりつく懺悔の感情。
そういったものが源泉のように湧き出してくる。
(もう椿はこの世にいない。だから謝罪のしても椿には届かない、だから、某は生前に放った言葉を実行して、椿のような子供を減らし、最後にはいなくなるようにする。)
そして、椿が放った、
「それじゃ、約束してくれる?私のような子がもう生まれないような国を作るって。」
という言葉に椿の本当の願いが込められていると信じて。
義刀は寝床から出る。
「それに某にはやらなければならぬことがある。こんな事で寝込んでいて駄目だ。今すぐ勉学の準備をせよ。」
「はい!」
その時から、義刀の悲しみの涙で溢れていた目に、絶対に曲がらないであろう意志の強さが宿った。
義刀の目に絶対に曲がらないであろう意志の強さが宿った後。義刀は宣言通りに勉学に明け暮れて過ごした。
全ては椿のような子供も生まない為に。
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