第10話最期
「えーと、ここをこうやって、こうして、あーして、出来た。」
ソルバは完成した陣の上に金を乗せる。
「そして、いっぱい外にあった魂の欠片を集める。基盤となる魂の欠片又は魂そのものを用意。」
ソルバはどの魂の欠片にしようか迷った、が、ワヒドが服を引っ張り、己に気を向けた。
「ワヒド、お前を基盤にするのか?でもお前は……。」
『ワフルッ!』
「ワヒド……、いつの間に……。まぁ、今はいい、分かった。基礎にする。」
最後に生力を体から出して手につけ、ワヒドと魂の欠片を固めた。
そして、模したい神を唱える。
たが、ソルバは生まれてこのかた神を知らなかった。故に戸惑う。
(どうする?俺は神の名前なんて知らない、だが、ワヒドを死なせないために、魂塊作りは失敗出来ない。)
ソルバはもう二度と振り返ることはないだろうと思っていた記憶を隅々まで思いだす。
そして、仲良くしていた奴隷から聞いた話に出てきた神を思いだした。
「冥界の神アヌビス、アヌビス、アヌビス、アヌビス、アヌビス、アヌビス、アヌビス、アヌビス、アヌビス、アヌビス、アヌビス、アヌビス、アヌビス。」
唱え続けること、一時間。
「完成した……!」
『ワフルッ!』
目の前には豪華な金を使った衣装を着たワヒドがいる。
「魂塊になったから、改めてよろしくな。ワヒド。」
『ワフルッ!』
ソルバによろしくと鳴くとワヒドは早速、ソルバの目の前に手紙を置く。
「これを俺に読めって言うのか?」
ワヒドはソルバの問に首を縦に振った。
「そうか。なら、読むぞ。」
ソルバは少し古い手紙の封を開けて、差出人の所に目を通す。
そうすると、ソルバは差出人が自らの父であることに驚いたが、本文に目を通す。
まずは、ソルバ。すまん。
この手紙を見ているということは、俺は死んでいるだろう。
俺の仕えている貴族様が罠にハマって、国家反逆罪の冤罪をきせられ没落して家族と俺達家族共々死刑になった。
だが、ソルバ。お前には生きてほしい。
父親として、生きてほしいんだ。私の身勝手ですまないが、お前を助けるために他国の知り合いに頼んで子供の間は奴隷で、奴隷として稼いだ金で養成所に入って騎士団に入団してくれ。
大王国エジプトを大王国たらしめた技能、魂塊を使えるソルバには多くの罪のない人々を守る為にもだ。
その才能を開花させるために、我が家自慢の伝書犬を送っておく。
その犬にこの手紙、『魂塊製作教本』と金を預けてあるからそれで神を模した魂塊を作ってくれ。
お前にはすまないことをしたと思っている。
なにせ、成人するまでは10年もある歳で奴隷だ。
これから死にゆく父さんには分からないが、その苦しみと悲しみは想像を絶するものだろう。
人間不信になっているんじゃないか、塞ぎ込んでいないだろうか。
むしろ、奴隷になって苦しまないうちに……。
すまない、ソルバには、もっといろんな世界を見せてやりたかったし、美味いものも食べさせてやりたかったが、今の私では叶わない。
少々、長くなってしまったが、最後にもう手紙を書けない母さんの分も合わせてくれ。すまなかった。
その手紙を読み終わった時、手紙にしょぱい雫が落ちた。
とめどなく、ソルバの目からしょぱい雫は手紙に落ちていく。
自分自身に愛情はないと思っていた親からの手紙は、確かな、愛情があったからだ。
しばらく、しょぱい雫を落として、ソルバの気分は晴れ。
今まで無くしていた、"生きようとする意志"を見つけたのだ。
「ワヒド、今からここを出るぞ、協力してくれるよな?」
『ワフルッ!』
ソルバは、そこら辺にあった、木の棒にワヒドを纏わせて。奴隷の証である首輪を破壊、その次に鉄格子を壊し、主の城から脱出して、外に出た。
外にでて、ソルバは自分の足が、とても速くなっているということに気づいたが、戦時でいくら忙しいとはいえ、奴隷を逃したら持ち主の名が傷がつくことを回避するため追手が来ることを分かっていた。
(これは、もう少し速度を上げた方がいいか。)
ソルバはそう思いいたり、足を前よりも早く動かし、加速する。
風をふっ飛ばすほどのスピードに到達し、もう進路方向を変えられない程となった。
そのままのスピードでソルバは戦場に突撃する。
「なにぃ!魂塊使いだと!?だが、相手は年端もいかないガキだ!すぐに取り囲んで殺せ!」
ソルバはここで死を悟った。
何故ならいくら魂塊があるとはいえ、子供が20人の兵士に陣形を組まれて四方八方から襲いかかってくるのだ。
いくら、そこら辺の民間人でも魂塊使いではない兵士一人を余裕で倒せると言っても、流石に数の暴力が加われば話は別だ。
だが、ソルバは生きる意志を持っているので、最後の最後まで、抵抗することに決めた。
「うおおおおおお!」
自らを鼓舞するために雄叫びを上げて、前の兵士に突進する。
その突進で兵士は吹き飛んだが、他の兵士に囲まれており、どうすることもできなくなった瞬間。
「『
ソルバの目の前に、閃光が走った。
一瞬何が起こったのか分からなかったが、その閃光が、ものすごい速度で振られた剣が光を反射したものだと気づいた。
兵士の首は、根野菜を切るように。
いい音を立てて、両断される。
「ばっ、ばっ!化け物!魂塊使いでは。」
そう敵将は言う途中で、無慈悲に放った『駄津撃剣』により、兵士と同じ様に両断された。
「へっ?」
その光景にソルバは一瞬固まってしまったが、それを放った者が自分と同じくらいの年であることを理解したのは、閃光を放った者が去った後の事だった。
(取り敢えず、ここから一刻でも早く抜け出さないと!)
そう思いいたり、他の敵将に鉢合わせないために、戦場から出するため急いだ。
それから、1年たった頃、ソルバは魂塊使いがゴロゴロいる国エジプトのとある街についた。
「お前……、他国の奴か?」
新米兵士はソルバを睨みながら、白と黒がメッシュとして混じった灰色の髪色を見て言う。
「ああ、そうだ。」
「言葉は通じるようだな。」
「奴隷をしていたからな、教育された。」
「そうか、それより……、お前はこんな何も無いところに何をしに来た。」
「生きる為に逃げてきたって言ったら信じるか?」
その言葉を聞いた新米兵士はワヒドを見て、「ほう。」と言って少し考えた。
「お前、うちの騎士団に入らないか?食堂もあって寮もあるから住む場所にも困らないぞ。」
「いいのか?その誘いはありがたいが、俺は見ず知らずの外国人だぞ、入っていいのか?」
「自覚はあったんだな、大丈夫だ。お前みたいなこと言う奴は裏切らないからな。」
「そう言えば、お前の名前を聞いていいか?」
「俺の名前はトルバルだ、これからお前の先輩だから覚えといてくれ。」
「ああ。」
その後、ソルバはその団長から入団試験を受けて、もし仮に裏切った場合、トルバルが責任を取ることで入団を許可された。
それから、2年の月日が経つ。
その頃には、ソルバは立派な騎士になり、トルバルと親しい仲にもなっていた。
だが、しかし、戦争が起こった。
エジプトから流れた魂塊使いが多数いる隣国が攻めてきたのだ。
ソルバは勿論、騎士だったので、戦争に参加することとなる。
辺り返り血を浴びた兵士と、血の池、そして、最後には死体。
そこには、途中で通り過ぎた戦争には無かったリアリティがあり、そのショックはアクフと同等のものだった。
だが、進まなければならない。生きる為にも。国の人を一人でも多く守る為にも。
ソルバは型や技は無く。只、神を模した魂塊のパワーで殴っているだけだった。
それ故に生まれる隙、ソルバは自体はそれをどうにかしようと愚直に努力はしているが、あまりに愚直過ぎて、成果は上がらない。
だが、ソルバは一人では無かった。
トルバルと一緒に戦っているからだ。
トルバルが
「ソルバ!」
「ああ!」
ソルバはその誘導された敵兵の首を曲剣で叩き切る。
この様にコンビネーションで敵兵を倒していきながら進軍していく。
そうしているうちに、敵将のいる場所に辿り着いた。
敵将にも、コンビネーションを仕掛けて、倒そうとするが、敵将の魂塊のモデルは
直に、纏わせていた武器を器用に使って、穴を掘り、地面の中に移動してしまった。
(どうする?敵将は土の中にいることは分かっているが、土の中でどこにいるのかは分からない。どうすれば……)
ソルバはトルバルの近くの土が盛り上がっていることに気づいた。
「トルバル!避けろ!」
そう、声で伝えたときにはもう、遅かった。
トルバルの首は敵将が攻撃したことにより、切断されており。その目は、ソルバの方に向いている。
ソルバはここで、死を悟った。
だが、ソルバは運が良かった。何故なら味方の魂塊使いが、複数この場に到着していたからだ。
その後、ソルバは魂塊使いの兵と協力してその場を乗りきり、ソルバは大した傷は無かったが、トルバルを失ったことにより、心に穴が空いた。
終戦後、寮でトルバルが話していた、ことを思い出していた。
ソルバは奴隷だった頃、奴隷仲間がやっていた弔いの方法を試していた。
ワヒドを十字架にして、トルバルの墓の前で唱える。
「汝を労り、汝を癒やし、汝の血を再生せん。」
そう唱えると、ワヒドの能力が発動し、ソルバの体が癒えていった。
その様子を他に墓参りしていた人々が見てワヒドの他の能力が判明した。
これにより、ソルバはサビテニ率いる騎士団の団長補佐として、配属されることとなった。
――
「……と、こんな感じだな。」
「ソルバ団長補佐は大変な思いをしてきたんですね。」
「ああ。でも、アクフも辛い経験をしてきたんだろ?」
「まぁ、ですが。不幸自慢大会なんて開いている場合じゃないですよ。」
「不幸自慢大会か……、確かにその様な催しをしている場合じゃないな。」
「ソルバ団長補佐は団長補佐という立場があって大変だと思いますし、騎士が死んでしまったのは、とても悲しいことです。ですが、あまり自分の責任だと抱え込まなくても良いんじゃ無いですか?」
「そうだな。ありがとう、アクフと話したおかげで、心が楽になった。これからは背負わせれるんじゃなくて、背負っていくことにする。」
「それは良かったです。それでは俺は、ナカヤの最期に立ち会ってきます。」
「ああ、行って来い。俺は今度こそやることがあるからな。」
アクフはナカヤの所に行き、ソルバはやることを為すため、ファラオから送られてきた騎士団長のもとに向かった。
「――――どうして!」
アクフが向かうと、ナカヤは寝床に寝かせており、デオルは驚きの声を上げており、モーシャは拳を握りしめ震えていた。
アクフはどういう状況かだいたい把握したが、確認のためにデオルど言う事か聞いてみる。
「ナカヤが、半日で死ぬと言っているんですよ。」
「そうですか。」
「その反応……、貴方は知っていましたね?」
「ええ、先程ソルバ団長補佐に聞きました。」
「そうですか、ソルバ団長補佐はなにか言っていましたか?」
「取り敢えず、極力運動させないようにと。」
「分かりました。」
「アクフ先輩、出会ってそこまで経っていませんが、来てくれてありがとうございます。」
「先輩だからな。」
この後、アクフ達は死ぬまでにたくさん話した。
そして、その時が訪れる。
ナカヤが、話しているときに切り込む。
「そろそろ、お別れですね。」
その言葉にモーシャが反応する。
「まだ、生きれないのか?」
「はい、残念ながら。」
「そう……なのか。」
少しの静寂の後、ナカヤは静かに目を閉じた。
「アクフ先輩、少し、この部屋から出てもらえませんか?」
アクフは静かに部屋から出た。
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