第31話天下絶断斬り
『
だが、しゃんがんで避けられ、逆に刀で全体を切りつけられた。
(やはり、強い。技術ではアクフ殿の方が洗練されているが、それでも圧倒的な暴力でねじ伏せられる。であれば……ここは某も出し惜しみ無く本気を。)
相手の白湯当は魂塊×鬼人、つまり基礎スペック等が半端なのものではなくなっている。
だがしかし、戦闘においては義刀の方が経験豊富なため、刀家は白湯当を任せた。
それを義刀は分かっており、責任感で己を更に鼓舞する。
義刀がわざとらしい隙を晒すとそれを全く疑わず白湯当は突っ込んできた。
当然の如く義刀の『兜虫回し』の餌食となる。
『兜虫回し』の後、白湯当が反撃しようと鬼人に支配されている脳を限界まで使い地面を蹴て砂埃を起こすことを思いつき実行する。
辺りに大量の砂埃が舞う。
いくら砂埃で逃げようともそう遠くまでは逃げていない。と考えた義刀は『
次々に放たれていく重い一撃を受けながら反撃の機会を探る。
(次々と撃たれる斬撃、しかし、おかしい。撃てば撃つ程技が失われていっている。もしや……鬼人に気が侵食されているのか?そうなのであれば助けねばならぬ!たしか『鬼人覚醒法』には鬼人の侵食は意識を失っていれば止まると書いていた。ならば、少々申し訳ないが畳み掛ける!)
義刀は『鬼人覚醒法』の内容を思い出しながら『
が、白湯当は鬼人に侵食されている真っ最中な為に動かない。
その隙を狙い『
攻撃しているというの鬼人の侵食に抗っているのか反撃はしてこなかった。
侵食は進む。
次は『
侵食は更に進む。
これで最後だと構え、生力を〘
その攻撃は確かに白湯当の意識を無くすには十分なものだったが、その時。
白湯当の体から忌々しいオーラが溢れ出す。生えていた一本角は三本になって、牙が鋭くなり、体が三メートルにも及ぶ大きさとなった。
そして、目に光が無くなり瞳孔が破裂しそうなほど開いている。
(くっ、間に合わなかった……!もうこうなれば戻す方法は一つしかあらぬ……。しかも、その方法は鬼の角を根本から一斉に断ち切ること。あれ程の巨大を相手にするのは初めてだが、やるしかあるまい。)
そう考えていると、乗っ取られた白湯当が義刀に拳を振り上げる。
対して義刀は『天下絶断斬り』を放ちたいと思っているが、眼の前にいるのはかつての四肢欠損させた化け物ではない五体満足の鬼人だ。ので、『
腕が振り下ろされると共に義刀は乗っ取られた白湯当に向かって『
結果は〘
(これだけの生力消費量では乗っ取られたやつには傷一つつかぬか……。ならば、更に生力消費量を上げ短期決戦にいたす!)
そう考えて飛び上がろうとした義刀に乗っ取られた白湯当の高速鉄槌が下されようとしていたが、これを好機にと鬼人の腕に乗り。
『
義刀はすぐに振り落とされ、落ちる瞬間何も出来なくさせられた義刀に鉄槌を叩きつけられる。
いくら兜太郎の『剛力頑丈』で硬くなっているとはいえ、乗っ取られた白湯当の一撃は重かった。
「ブッボア!」と声を漏らしながら、義刀は『
(見てみる限り隙はあらぬ。だが、何者でも隙が生まれる時がある。それを見定める!)
乗っ取られた白湯当は、持っていた
それは義刀の着物へ付着し、布の部分を侵食していく。
(これはまた珍妙な魂塊の能力だ。気をつけなければ。)
服を侵食する鱗粉が付着しても義刀は少し注意をやっただけで、直ぐに乗っ取られた白湯当の下半身に『
挫こうとされた乗っ取られた白湯当は口から怪しげな煙を出しつつ、地団駄を踏んでクレーターを量産する。
その次に刀をまるで短剣のように扱い、義刀に斬り込んでいく。
クレーターを量産されたことにより足場が悪くなって義刀は上手く踏み込めない。
そんな義刀を見てトドメを刺そうと侵食する鱗粉を刀に付着させ、振り下ろす。
避けようと義刀は回避しようとするが、もう遅いことを悟った。
刀家は宗次を追っていたため白湯当が鬼人に意識を乗っ取られているとは知らない。なので来るわけがないと思った義刀は刀を構えた。
(死ぬわけには行かないが……もうこれは駄目か。せめて、悪足掻きを。)
『
結果は――――――――加勢しにきたアクフの『鎮音放』によって乗っ取られた白湯当の刀が止められ、『
「義刀!大丈夫か!?」
そう言いつつ、アクフは義刀の下に行き『探音剣』の構えを取る。
「アクフ殿、申し訳ありません。すみませんが囮役をしてください!」
「了解!」
その声に反応したのか乗っ取られた白湯当が荒々しい獣のような雄叫びを上げる。それと同時に〘
『探音剣』の構えから、『廻音剣』を放ち乗っ取られた白湯当の意識を義刀からそらす。
乗っ取られた白湯当が侵食していく鱗粉がついた刀がアクフに向けられる。
それに対してアクフは飛び上がって『
『
まるで目茶苦茶な子どもの喧嘩のような攻撃を仕掛けてくるが、アクフは神経をすり減らしながらも避けていく。
(魂塊の能力とあのよくわからないの技能はそこまで厄介ではないけど、物凄い力が強い。多分俺程度が当たったら一発で死んでしまうくらいには有りそうだ。ここは下手に色んな技で畳み掛けるよりも……!)
少し体制を変えたアクフは『探音剣』の構えを取る。
構えて静止したアクフを見て行けると思ったのか、乗っ取られた白湯当は大振りで刀を振るう。
振るわれた刀は素早いアクフの刀でいなされ、止められる。
しかもその止め方は止める瞬間だけ生力を大量に使用して身体能力強化の力を上げ真っ向から立ち向かい大きく弾き、仰け反らせるものだった。
(アクフ殿が囮をして注意を引き付けている今が好機!『
アクフに囮を担ってもらい義刀が少々不安を持ちながら〘
(某は未熟、あれだけ覚悟をしたのにも関わらず死に目になると弱気になるような言語道断な未熟者。今でさえ少々、失敗した時の事を考えている。だからこそ験担ぎと、己の弱さを滅する為先祖様の言葉を使わせてもらいます……!)
まるで水中のような静けさの中に義刀の言葉が響く。
「失敗は恐れるべきだが、回避せよ。人間なら失敗すると言うならば……人間を超えてしまえ。」
この言葉によって義刀の不安な心を滅せた。
その後10分にも及ぶ長い長い溜めの後、溜めた力を開放すると同時に言い放つ。
「『
その瞬間、〘
義刀の体内からも大量の生力が溢れ出して〘
放つ。
最早凄いとかしか形容できない程のエネルギーが〘
その『
完璧な『
全ての角を折る。
次の瞬間、乗っ取られた白湯当の体がどんどん小さくなっていきもとの大きさに戻り鬼人化も解除された。
その後、宗次を対処した刀家が駆けつけて、アクフ、義刀、刀家の3人で対処した。結果、事態は一気に収束に向かっていき、遂には白湯当たちによる騒がしさが収まった。
――
後日、鬼人農民の乱を起こした民の処分を決める会が開かれた。
結果、義刀の頑張りによって鬼人農民の乱を起こした民の3年の土木作業強制従事。巨大台風の復興資金をちょろまかした宰相は無期懲役となった。
「義刀様、王の首を狙った俺達を3年の土木作業強制従事だけで済ましていいのか?」
連れて行かれる前に少々困惑気味の顔で白湯当は義刀に問いた。
「お主等の犯行は通常であれば赦されぬことではあるが、その目から情状酌量のが多大にあると感じここまでの調査をして刑を軽くした。」
すこし遠い目になり続ける。
「……かの大台風には因縁があるのでな。事情は調べてある、当時の被害者には今後最大限の支援と開国を約束しよう。」
「何故俺達をそこまでしてくれるんだ?」
「お主等は根っからの悪党ではない。そうであれば皆、この竹戸の民。民の為なにかをするのが王族、ひいては王の努め。」
「そいつは有難いな。」
「それはそれとしてお主達が壊したものを直すに3年間励んでもらうぞ〜?」
「ああ、精一杯頑張らせてもらうよ。それでは。」
そう言って満足気な顔をした白湯当は衛兵に連れて行かれた。
それから更に時は経ち、義刀が王を継ぐ時。
豪華な食事、竹をモチーフにしたり直接使っている豪華な装飾、等々が揃っている会場に畏まった服を着た義刀と次刀が現れる。
二人が会場にある台に登って挨拶を始めた。
「此度は竹戸にとって大切な日だ。民の皆が来てくれたことを喜ばしく思う。それでは継承の儀を執り行う!」
継承の儀はかなりシンプルな儀で継承させる王がそのものが竹戸を治めるに値するか見定めた後に王の証である竹モチーフの小太刀を受け取るだけのものである。
「義刀、儂は最近までお主が『
「……っ!謹んで頂戴いたします。」
義刀は次刀から小太刀〘国統べ〙を受け取る。
「これより、国王は儂ではなく義刀である!皆ついて行ってくれ!」
その宣言により義刀は晴れて竹戸の王と成った。
数時間後、儀が終わって始まった宴を酒を極力飲まない方針で無事に乗り切ったアクフはその翌日に竹戸から出ていこうとしていた。
清々しい素晴らしい太陽が義刀とアクフを包む、そんな場面で色々な物を貰ったアクフは去り際に義刀に話しかける。
「義刀は今でこそ『
『キュュュ!』
「いえ、そんな事はありません。アクフ殿のご指摘等が素晴らしく以前よりも格段に努力の効率が良くなっただけです。」
「まぁそれにしても、だ。」
その言葉を聞いた義刀は達成感となんとも言い難い程の感情を抱えて、
「有り難う御座いました。」
と答えた。
「それじゃ俺は新しい武器を集めるために竹戸出ようと思うが、義刀は近場でいい武器を売っているところを知っているか?」
「刀以外でしたらここから真っ直ぐの荒野の中にあるガンストンという街にどうやら珍しげな飛び道具があると小耳に挟んだことがあります。といっても噂なのでその武器が強い弱いも分からないどころかあるかも判りませんが。」
「ありがとう義刀、もう体が新しい武器を求めてのムズムズが止まらないから早速向かわせてもらうよ。」
そう言ってアクフはバファイを纏わせ足早に竹戸を去ろうもするアクフの背に、
「さようなら!また逢う日まで!」
と感謝の念が大量に詰まった声が響いた。
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