師範編

第21話異郷の地と意思を貫き通す者

 スドから点検の結果特に何も問題ないと言われ〘天翔石剣カノンスド〙を返されたアクフは再建設中の自分の家を見に行く為に草原を歩いている。


(それにしても、楽しみだな。再建設だけどもしかしたら隕石を納めた事もあるし、武器もたくさん置けるように少し広く作ってくれたら嬉しいな。……そう考えたら新しい武器も欲しいな、でもその為には結構な金もいるしなぁ。やっぱりなにか俺にあった職について稼がないとな。)


 考えながら歩いた瞬間、地面が抜けて。


 落下し始めた。


 (まずい。ここから落ちたら間違いなく死ぬ!急いで『鎮音放』を使わないと。)


 アクフは出来る限り速くバファイを〘天翔石剣カノンスド〙に纏わせて、ギリギリ地面のところで『鎮音放』を放つことができた為かすり傷なく落下できた。 


 (ふう、なんとか助かった。というか、随分深いとこまで落ちてしまった気がするけど、大丈夫か?)


 アクフはどれくらい落ちたのか確認するために落ちてきた場所を見て、確認しようとしたが、不思議なことに落ちてきた場所は何故か塞がっており、天井になっていたのだった。

  

「なんでこんな短期間で塞がっているんだ?」

 

 その後、アクフはかつて落ちてきた場所だった場所に行き、天井は壊せないという事確認してから、探索することにした。


 (それにしても、時々壁に書いてある……多分象形文字の一種だと思うが、残念な事に俺には全く持って読めない。)


 アクフは代わり映えしない象形文字が書かれている道を永遠とも思える程歩いていく。


 だが時たま、人の体に不自然にもはやぶさの頭がついていてその上に太陽の飾りのようなものがある神、太陽神ラーが書かれた壁画がちらちら見受けられる。


 そして、数時間歩いていると急に目の前の道に光がさして、うまく聞いとれない音が聞こえると、アクフの眼の前が真っ暗になり、気がついたら見知らぬ場所に立っていた。 


「ここは……。」


 広がるのは空気が格別においしく、エジプトでは絶対にないであろうと思わせる説得力がある程の涼やかな風に吹かれて、ゆらゆら揺れている竹林の景色であった。


「空気はすごくおいしいけど、本当に何処だ?取り敢えず、人を探してここは何処か聞いてみるか。」 


 アクフは辺りを警戒しながら、竹林を進んでいく。


 しばらく歩いていると、剣と剣がぶつかり合う音がして、何事かと思い近づいてみると、黒髪、黒目ではかまを豪華にしたようなものを着た身長150cm前後の男性が全身黒装束の黒子のような格好をした男性が刀と小太刀を交わしている。     


 豪華な袴のようなもの着た男性はモデル兜虫かぶとむしの能力『剛力頑丈ごうりきがんじょう』により物凄いパワーで横に切る技『兜回し』を連発していたが、その技は黒子のような格好をした男性には空振って当たらず、周りの竹を真っ二つにするだけだ。


 それに対して黒子のような格好をした男性は豪華な袴のようなもの着た男性の多くある隙につけ入って、少なからず切り傷を与えた。

 

 本来であればここまでのパワーの差があれば、黒子のような格好をした男性に勝ち目などはない。のだがおかしなことに、苦戦している。

  

 (ただ事じゃなさそうだけど、多分全身真っ黒の人より見慣れない服を着たほうがピンチっぽいな。)


 アクフは〘天翔石剣カノンスド〙を構えて、黒子のような格好をした男性に『打音放』を放った。 


 それが黒子のような格好をした男性にクリーンヒットして遠くに飛んでいく。 


 黒子のような格好をした男性は訓練されているのか、アクフの『打音放』で吹き飛んだにも関わらず、すぐに戻ってきた。     


 (これは、面倒くさいな。さっさと『暴剣』で近づいて、持ち手で殴って気絶させてくるか。)


 アクフはそう決めて、黒子のような格好をした男性に『暴剣』を使って、相手の連続攻撃はスルリと躱し〘天翔石剣カノンスド〙の持ち手で強く殴った。


 そうすると、相手は魂塊使いでは無い為、すぐに気絶する。


 アクフがもう意識がない黒子のような格好をした男性を見て、豪華な袴のようなもの着た男性の方を見た。

 

「助太刀感謝いたします。それがし想護 義刀そうご ぎとうです。貴方あなた様の名前を聞いてもよろしいですか?」


「俺の名前はアクフだ。ところでここが何処か知っているか?」 


「アクフ殿ここは竹戸です、そんなことよりも!某を助太刀してもらった時の動きを見て決めました。先の言動から察するに迷い人の身ではあると思いますが、某をアクフ殿の弟子にしていただけないでしょうか!」


 突然におこなわれたとても綺麗な土下座での申し出にアクフの頭は少し混乱する。


 (俺が、師匠?今の俺には教えられることなんて……、いや。義刀が滅茶苦茶誠意を見せてくれているのに断るのはなー。よし、やってやるか!)


 アクフは頼まれるとあまり断われない性格だった。


「いいぞ。」


 義刀はアクフの肯定ととれる声を聞いて、勢いよく顔を上げる。

 

「真か!ですが、これは駄目元の頼みです。本当によろしいんですか?」


「ああ、そこまで頼まれて断る方が俺にとっては難しいからな。」


「そうと決まれば、早速某の城に向かいましょう。」 

 

 アクフは義に連れられて、竹林の奥に進んでいき目的地につくと、そこは国があり、さらに国全体が竹林に囲まれていてた。


「アクフ殿には珍しゅう景色でございましたかな?ここら辺は台風がよく来ますのでその対策に先祖代々から伝わる方法を実行した結果、こうなりました。」


「そうなのか。ここまで綺麗に植えられていると、圧倒されるな。」 


「先ずは城に戻り、飯にいたしましょうか。」 


 歩いていても景色はそこまで変わらず規則的に置かれた平家、店が見えるだけであった。


 こういう景色にアクフは慣れているが、チラチラ店を見ていると、とても気になるものが目に入る。


 それは東の方からエジプトに作り方が伝来してきた武器。


 刀であった。


 (もしかして、ここはかなり東の方なのか?)


 しかし、アクフが気になったのは刀による現在地の特定が出来ることだけではなかった。


 置いている刀の造形はあまりにも、美し過ぎる。


 〘天翔石剣カノンスド〙と比較してしまえば一歩劣ってしまうが、それでもそんな代物が置いてるのだ。しかも、それが雑多に並べられている。アクフはここはとんでもない場所ではないかと思った。


 そして、武器屋の事で頭がいっぱいになっていたアクフは次に気がついたら、義の城についていた。


 その城は全体的に竹をふんだんに使っており、竹の緑色が美しく輝いていた。

 

「もしかして、義刀って王族だったりします?」


「何故に敬語を使いなさいますか、命の恩人であるアクフ殿に某を敬う心など不要。どうぞ、自由にお話しください。」


 この時、アクフは義刀の目を見た。そうしたら一度決めたことはどんな些細ささいなことであろうが絶対に曲げないであろう意志の強さが垣間見かいまみえた。

 

「それじゃ、お言葉に甘えて好きなように喋らせてもらうよ。」


「それで良いのです。ささ、飯はとうに出来ておりますが、某の傷を対処してから食べる為、一緒に食べる為に少し待ってください。」


 義刀は体のいたるとこにある切り傷を治す為に医者のいる場所にいき、残されたアクフは城の使用人に案内されて城の中に入り、料理が置いてある大広間につく。


 しばらくして、義刀がへやに入って席に座り、二人は料理を食べ始める。


 30分後。食べ終えたアクフは義刀に気になったことを質問することにした。 

 

「そう言えば、義刀が強くなりたい理由はなんなんだ?」 

  

「理由は……、某がここ竹戸ちくどの次の代の王となり、民を守り笑顔にできるようになるためです。」


 義刀は勇ましい顔つきに変えて話を続ける。


「ところでですが、民の義務はなんでしょう?それは我々王族に税を払う事です。ならば我々王族、とりわけ王の義務は何でしょうか?国民の為に尽くすことです。戦争が起き、民が危険にさらされればどうするか。当然、王がその圧倒的力を使い国民を守ります。そして、その為には何者にも屈しない力が必要なのです、某は魂塊の力で腕力などはありますが、面目ないことにアクフ殿のような臨機応変に使わけれるは技術は持ち合わせていません。だから、アクフ殿に頼みたいのです。」


「強くなりたい理由は痛いほどわかったが、なんでそんな雄弁風に言ったんだ?」


「えっ?これは某に技術を教えるための試練かと思ったのですが……、違いましたか?」


「そういう意図は一切なくて普通に気になっただけだったんだけど。」


「そうだったんですね。いやー、本当に面目ない勘違いをしてしまいましたね。」 


「大丈夫だと思うぞ、人生、生きていれば間違いだってする。俺だって毒がある魚を釣って後で川に返そうと思ったら、普通の魚と間違えて食べて地獄をみたことがあるからな。」

   

「いや、大変失敬なことかと思いますが、アクフ殿の失敗と王である者の失敗は地獄をみる人数が桁違いなのです。先祖代々から続くいくつかある言葉の中ににこんなも  

のがあります、『失敗は恐れるべきだが、回避せよ。人間なら失敗すると言うならば……人間を超えてしまえ。』その為に某はこれまでの人生を修行と勉学に尽くしてきました。だから人間を超える為に必要なアクフ殿の技術を学びたいのです。」


「そうか、なら今すぐにでも修行の準備をするか。」

 

 アクフと義刀は修行の準備をした後、城の中庭にある訓練場で義がどのくらいの技術を持っているのかを確認するために手合わせをしようとしていた。


「義刀、今回は単純な技量を見たいから、魂塊は無しでいこうと思う。」

   

「分かりました。やるからには勝ってみせます!」 

  

 お互いが木刀を構えて、見つめ合う。


 先に仕掛けたのは義刀の方だった。


 大きく振り上げた木刀はかなりの勢いを持ってアクフに接近する。

 

 アクフは『刻』の構えをとって接近してくる義を待つ。


 ある程度の位置につくと、義刀が木刀をかなりの勢いで振り下ろすが、かなりの勢いがあったとしてもそれには技術がない。


 今まで一切戦ったことのない一般人の素振りと同等レベルである程にだ。


 そんな、一般人の素振りと同等レベルの剣をアクフは『刻』でいなして、軽く義刀の体に木刀で触れた。


「参りました。」

 

 (これは、かなり大変な願いを引き受けてしまったかもしれない。)


 取り敢えず、アクフは相手の先の動きを感じ取る鍛錬を始めることにした。

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