第17話確実で重要な大きい一歩
ナルはこのエジプトに帰る旅で自分をなんとかしないといけないと考えていた。
奴隷生活の仲良くしていた仲間が次々と死んでいくといういたいけな少女には劣悪すぎる環境の影響により、アクフ等の一部の人間以外は恐怖心が支配して喋れない状況になってしまっているのだ。
その恐怖心が強くなった訳では無いが、ナルの心は恐怖心に掌握されやすくなっていた。
理由はアクフに助けられて心に余裕ができたからだ。普通の人間であるなら他国の奴隷になっている状況下のうえ、人殺しを強要され、仲間は次々に死んでいき次は自分かな、などと思って死にたくないと懇願した時もあった。
そして、そんな状況下で精神を保つために、人殺しをした時に決めた覚悟が変化し、黒いものが出来きた。
だが、アクフに助けられて余裕が出てきた為、黒いものは消えてしまった。
ナルをいつも暗雲に閉じ込めていたのは黒いもののせいだが、最低限の視界を確保してそれ以外は見えなくし、それより先に進ませなかったのも黒いもののお陰である。
だから、コトナラとペルサがアクフを襲った時、口では「絶対、生きて帰ってきてね。」と言ったが、アクフが戻ってくるまでの隠れている時は自分の安全しか考えれなかった。
当のナル本人はこれを自分の弱さだと断定して克服したいと思っている。
だがしかし、克服するためには恐怖を黒いものを生み出して嫌なことから目を逸らす為の覚悟ではなく、正しい目を逸らさない覚悟で光が見えている森の奥から出ないといけない。
アクフが寄り添って一緒に頑張った事により、光の方へと一歩ずつ進んでいっている。
そして、今。ナルは大きな難所を乗り越えようとしていた。
ナルは目の前に居るアクフに向かって正しい覚悟をして、口を開く。
「アクフ、私もアクフを守りたいから戦う。」
このエジプトに帰る旅でアクフとナルは友達から親友に関係は発展し、なので、ナルは人生で初めて出来た親友を守るために命をかける。
そのことを表情から読み取ったアクフは「自分の命を最優先してくれ。」と言いつつもナルを下ろし、共にペルサと戦っているワイバーンのもとに向かった。
「まさか……僕が幻想生物再現術で作った魂塊、略して幻獣魂塊が敵側になるとはね。だが、制作者は僕だ。」
コトナラはペルサに搭載してあった大きいクロスボウをワイバーンに向かって射出した。
射出した二本の矢は片方だけワイバーンに当たった。
そして、ペルサにアクフとナルが乗る。
「コトナラさん、加勢します!」
「おっ、アクフ少年とナルフリック少女が戻ってきたね。丁度いいとろこにきた、取り敢えず、僕はあのワイバーンの弱点を知っているから言うよ。ワイバーンは通常は飛ぶのが困難な魂塊を創意工夫をして作ったもの、だが、通常は飛ぶのが困難な為、空を飛んでいる時は生力の消費が激しい。 」
「分かりました、攻撃をしつつ、ワイバーンを消耗させたらいいんですね。」
「ああ、そうだ。出来るだけワイバーンに火の玉を使わせて生力を減らしてくれ。」
「ナル、俺は『打音放』を使って火の玉を出させる為にワイバーンのもとに向う。火の玉等の攻撃をしてきたときに援護してくれないか?」
「分かった!」
アクフは『打音放』を地面に向かって放ち、ワイバーンに近づく。
近づくと、ワイバーンは火の玉を吐かずに足の爪で攻撃してきたが、ナルの毒があるブルーベリーを発射する技『
ワイバーンに当たった『
アクフは試しに『超音剣』をワイバーンの翼に向かって放ち、翼に損傷を与える。
その次の瞬間、ワイバーンの翼は内包する生力を消費することにより、損傷の跡を直した。
「この神に仇なす反逆者が調子に乗るな!だが、そこに居てはこのワイバーンの範囲内だ、火の玉を吐き早々にあの世に送ってくれる!」
そして、ワイバーンの操縦者もこれ以上アクフのペースになることを恐れて、火の玉を吐く。
アクフは一旦下った方がいいと思い、火の玉を『打音放』で避けて、『鎮音放』をクッションにして落下する。
その間に、ペルサに乗っているコトナラが様々な物を発射していた。
(最初は俺の攻撃なんて無力だと思っていたけど、この感じだったら、ワイバーンに火の玉を吐かせるより『
アクフは自分が考えた作戦をコトナラに伝える為に、ペルサに向かって走った。
「何をしているんだね、アクフ少年。まさかワイバーンの操縦者を倒したのかい?」
「いえ、俺が試しにワイバーンを攻撃してみたんですが、その時は結構ダメージを与えることが出来たので、火の玉を吐かせるのに動くよりも総攻撃を仕掛けて短期で片付けた方が早いと思いますが、どう思います?」
「うん?君はワイバーンを体を傷つけたのかい?」
「はい、正確に言うと翼の部分を傷つけました。」
「そうか、そうだったら本来翼の防御にまわしていた生力を燃料として使っているのか……?アクフ少年。いい情報をありがとう、そうなるとアクフ少年が言う短期決戦の方が効果的だね。分かった、ワイバーンを総攻撃をする方針でいこう。」
(と言ってみたが、僕の設計したワイバーンはアクフ少年の青いオレンジのように未熟な『超音剣』では傷をつけるのは困難なはずなんだがね。ワイバーンに乗っているのは僕の恩人の宗教の関係者だと思うけど、確定した情報じゃないし、アクフ少年達に言うのは置いておくとして、仮に宗教の関係者だったら、あの当たって砕けろ精神旺盛な教徒達の事だ、素直に追加の燃料として利用するとは考えにくい。後、改造しているのか、僕が作ったワイバーンより所作が所々不自然な所があるね。これはあのワイバーン、なにか隠し玉を用意しているかもね。)
コトナラはそう考えてなにかあった時の為にペルサに積んでいる装備をいつでも使えるようにした。
「ナル!これから俺はワイバーンを直接攻撃する!ナルは引き続き俺の援護を頼む!」
アクフはナルの了承の声を片耳で聞きはさみながら、再びワイバーンに攻撃を仕掛けようと、『打音放』で向かう。
ワイバーンと同じ高度に到着した時、ワイバーンが攻撃を仕掛けてきたが、あまりに大振りな攻撃だった為『
そして、『超音剣』を纏わせて、斬撃を与える。
だが、負った傷はあと一撃でもアクフからの攻撃を受けてしまえば墜落してしまう為アクフは攻撃はしてこないとふんで最も威力のある『
(くっ、結構な威力だな。)
アクフは地面に落下するまでに着地点に『鎮音放』を放ち、隙が出来ているであろうワイバーンに『超音剣』を撃つ。
しっかりワイバーンは『超音剣』を足にもらい、足が切れた。
それにより、操縦が足があった頃よりも格段に難しくなり、ワイバーンは体制を崩し始める。
そして、ナルがこの時を待っていたと言わんばかりに特大の『
ワイバーンに『
墜落したワイバーンはかなりの量の生力を溜め始めた。
「もしかしてだが、僕がロマンだけで作ったあの技を実行する気なのか?そんな訳……、いや、あの技は消費する生力と威力が釣り合っていないからお蔵入りさせたが、それでも威力と範囲はある……ならば使う可能性は十分あるね。アクフ少年!これをあのワイバーンの口にぶつけてくれたまえ!」
最後の方を大声でアクフに向けて言い放ちながら、赤色の玉をアクフに投げ渡す。
しかし、その間にも、ワイバーンは火の玉を集めて炎の玉を作っていた。
その炎はメラメラとなどの音を出しながら、完璧になるのをいまかいまかと待ちわびている。
そんな間に、アクフに投げられた赤色の玉はアクフの手の中に収まり、アクフの投球で空間を切り風を纏いながら勢いよく飛ぶ。
だが、ワイバーンは器用に炎の玉溜めながら、勢いよく後ろに下がった。
その影響か、空間を切り風を纏いながら飛んでいる赤色の玉といえども、長い距離を進むうちに少しずつ減速していった。
その影響を快く思う者は勿論、ワイバーンの操縦者だ。
快く思わない者もいる、アクフ達だ。
しかし、快く思わないアクフ達の思いと裏腹に赤色の玉はものすごい速さで減速してき地面とすれすれになる程までいってしまった。
(どうしよう。このままだと、あのワイバーン?っていう大きな羽のある蜥蜴にアクフと私が死じゃう!アクフには色々と迷惑をかけたし、こんな所で死んで欲しくない。どうにかしないと。)
ナルはなにか無いかと探していると、赤色の玉が向かっている方向に『
(この力はお父さんとお母さんから出来るだけ秘密にしなさいって約束してたけど、今はなりふりかまってられないし大事な友達のアクフを助けるために、私は約束を破る。)
(もう俺に打てる手はないな、仮にあるとしたら神頼みくらい。神頼みは当てにならないから、『打音放』でどうにかしようと思ったが、今の『打音放』では精密性が足りなくて赤色の玉を宙に押し上げることができない。本当にどうしょうもない、元であるワイバーンを倒そうとしてもここからだったら射程外だから『超音剣』は威力が弱くなる。)
アクフはどうにかできる手が無いかとコトナラの方を見たが、コトナラは首を横にふったのを確認してもう何をしようと駄目だと思い、崩れ込んだ。
さらには、ナルの危機的状況で精神が弱くなっていた為、今まで耐えてきたものが開放されてもうこれ以上状況を良くする案を考える事が出来なかった。
生力が貯められて炎の玉がどんどん大きくなる。
「ナル、ごめん。俺にはどうしようもできない、せめて、ナルだけでも逃げてくれ。……思えば俺の人生は碌な事が無かったな。輪廻転生してナルとは別の時を生きるかもしれないけど、また出会えることを願っているよ。」
「アクフ、辞世の言葉を言うのには100年早いよ。アクフは私に色々な事をしてくれた。……でも、好意を只々受け取るだけじゃ、嫌なんだ。」
ワイバーンの炎の玉発射まで秒読みだった。
その状況でも取り乱さずに森の奥から前へと確実に進む。
心は竦まずに自分についてきてくれる。
正しい覚悟がナルに決まった。
ナルはちょうどいいタイミングを見計らって、落ちた種の方に手を伸ばし、樹護り族の能力である『植物急成長』を使い、種を急成長させる。
その急成長した植物を使い、赤色の玉に勢いを取り戻させた。
勢いを取り戻した赤色の玉は炎の玉に当たり、炎を消す。
そして、絶対に反抗できないように樹護り族のもう一つの能力である『植物特性強化』を使って毒の威力を上げた『
ワイバーンの操縦者が再起不能になったのか、炎の玉を撃ってワイバーンの生力が底についたのか、ワイバーンが動かなくなった。
「今見たこと他の人には言っちゃ駄目だよ?」
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