第12話王暴

 ローガは意識を飛ばし、勝利のムードが流れ、ソルバ、モーシャ、デオルは他の騎士の応援に行った。 


 アクフはローガを拘束して、捕虜にしようとしていたその時。


 ローガが目覚めた。


 アクフは、すぐさまローガを無力化しようと、『轟放奏剣ごうはそうけん』を放つ、だが、目覚めテンションが高くなっているローガには効かなかった。

  

「ヒィィ!!!!!!フイッッッッッ!!!!!!そんな猪口才ちょこざいな真似をしても無意味だ!!!!!!」

 

轟放奏剣ごうはそうけん』を使うのに意識を集中してしまった為、アクフはローガの攻撃を貰い、深めの傷を負った。


 (うっ、まだ戦いが続くのか……、だけど、くよくよはしていられない、弱音も今は吐いちゃ駄目だ。状況を打開する方法は……。)


 アクフは勝利の道を見つける為に、一旦、『打音放』を使って、空高くに避難する。


 高い場所に来たことにより、アクフは周りの状況が分かった。


 先ず、援護してくれそうな騎士と傭兵はいない。他にも、使える武器はないかと探してみてはいるが、本当に何もない。


 (どうするか。取り敢えず、『超音剣』を使ってみよう。)

 

 アクフは『超音剣』を上から放ったが、その攻撃はローガのテンションが上がったことにより、再生された腕で阻止されてしまった。  


 (駄目だ。上にいても無駄に生力を消費して、悲惨なことになるだけだ、なら降りないと……!そうだ!天から降りる技があったな!一か八かだけど、これで着地しよう。) 


「『刹雪』。」


 アクフの物は、あの敵兵士の真っ直ぐだが、所々揺れていて、どう対処するのか分かりにくい『刹雪』と違い、未熟な為、最初から大幅に揺れていた。


 その一撃は、一応、ローガに当たり、切り傷を与える。


「ヒィィ!!!!!!フイッッッッッ!!!!!!魂塊を使わない技で俺に傷をつけた奴は初めてだ!!!!!!」


 ローガは『刹雪』を使い落ちてきたアクフを斬る為、宙に浮く腕を振り下ろしたが、『打音放』の衝撃を利用して、遠くに逃げ回避した。


 (駄目だ、流石に、今の見様見真似の時点では決定打にならない。じゃ、どうする?相手の基礎能力はとんでもない、テンションが高くなりすぎて技量はあまりだが、愚鈍に突っ込んでも圧倒的な力でやられる、だが、技量があまりなら、犠牲と『暴剣』でどうにかなるはずだ。)


 今までに体験したことがないほどの命の危機、基礎能力だけではどうひっくり返ろうとも勝てない相手。


 それでも、アクフは負ける訳にはいかないので、『暴剣』の構えを取って、ローガに突撃する。


 ローガは当然、攻撃を止めようと、宙に浮く腕を振り下ろすが、〘ソールド〙を持っている片腕を切断しただけで、アクフの攻撃は止まらない。


 片腕を切断されたことにより、とんでもない痛みがアクフを襲う。


 心臓が死という恐怖と痛みでバクバクと鳴り、はち切れそうな程になっている。

  

 だが、そんな状態であってもアクフは神経をすり減らしながら、我慢をして、軌道を変更し、踏み込んで。


 ローガの懐へ到達した。


 (これで……、倒れてくれ。)

 

 そして、剣と共にありったけの生力を注ぎ込んだ『超音剣』を放つ。

 

 その事に少し驚き隙を生んでしまったローガはワンテンポ遅れて、剣とを振り下ろす。


 当然、ワンテンポ遅れて振り下ろした剣がアクフに届く前にアクフの『超音剣』がローガに直撃して、ローガの腹を深く切り吹っ飛んだ。

 

 同時にアクフも残りの片腕を宙に浮く腕に切り落とされ、更には急な生力の大量消費で体力消耗して崩れるように倒れ込む。


 アクフの意識は霧のように微かなものになった。


 そのアクフの元に攻撃を魂塊の力で耐えたローガがやってくる。


「ヒィィ!!!!!!フイッッッッッ!!!!!!これでチェクメイトだ!!!!!!」


 アクフに最後の一撃が下されようとしたその時。



 

 アクフが気を失ったことで〘天翔石剣カノンスド〙から出てきたバファイが死にかけていたアクフの中に入る。


 すると、アクフの毛先がほんの少し燃えるような赤色になった。


 ローガは驚いた。

 

 次の瞬間には斬ったはずの腕はくっついて〘天翔石剣カノンスド〙を握っており、その代わりと言わんばかりに自らの腕が斬られていたからだ。


「ヒィィ!!!!!!フイッッッッッ!!!!!!やっぱり、お前が……王暴か!!!!!!」


 アクフ?は何を思ったのか黙った。


「ヒィィ!!!!!!フイッッッッッ!!!!!!沈黙は肯定とみなす!!!!!!それなら!!!!!!!お前を殺さないといけないな!!!!!!」


 ローガは腕が斬られたことなど、忘れたかのように、痛みを恐れず、アクフ?の方に突っ込んでいく。

 

「『象重量撃ぞうじゅうりょうげき』。」

   

 突っ込んできたローガを剣で迎撃して、腹に5トンの衝撃を与えた。   

 

 当然、テンションが身体能力が上がっているローガと言えど、受け身を取らず5トンの衝撃を貰えば、後ろ側に吹っ飛ぶ。同時に「ごぶっ!!!!!!」と吐き捨てるようにこぼし。


 吹っ飛んでいるローガを追いかけて『暴爆』を使い、ローガに痛手を負わす。


 だが、しかし、ローガもやられっぱなしではない。曲がりなりにも今回の王暴討伐勢力の最高戦力なのである。こんなところでは終われない。


 ローガが宙に浮く腕でを動かし、アクフ?の周りに並べて一斉に生力共に放った。


「『絶対的な処刑アブソエクト』!!!!!!」

 

 その通常の兵士、騎士なら為す術もなく処刑されるしかないローガの一撃は、アクフ?の巧みな技により、全て弾かれた。


「圧倒的な力の暴力!!!!!!これは俺も本気を出さないとな!!!!!!」


 そう言い、ローガはとてつもない生力を宙に浮く腕でに注ぎ込み、腕達を集合させ、腕達は溶け、混ざり合って、一つの巨人になった。 


「『神降臨ゴットアーベント』!!!!!!」


 その巨人はとても神々しいオーラを纏っており、それでいて軽快なリズムの踊りをしていた。


 だが、その踊りで大地は踏み荒らされ、足の形をした穴ぼこが無数に出来ていく。


 その踊りの影響力がアクフ?に及ぼうとするが、剣で巨人の足を切り刻む。


 切り刻んだ足は復活したが、その次の瞬間には切れており、ローガに衝撃を与えた。


「まだ一度も見せたことがない技を対処するとは!!!!!!流石王暴様だな!!!!!!」  


 そう言いつつ、巨人の踊りを足の動きが地団駄を踏んでいるような踊りに変わった。


 その踊りを、『象重量撃ぞうじゅうりょうげき』を地面に放つことにより、生まれる窪みに嵌めて、止め。

 

 「『鎮魂業レクルマ』。」

 

 アクフ?の一撃により、巨人は粉々に砕け、次の瞬間には『暴剣』を使って、ローガに近づき、四肢を削ぎ落として。


 地面に倒れた。


 その後、戦争の状況は一旦、スパルタに援軍が到着してエジプト側が不利になった。その時にアクフはスパルタ軍に気絶をしたまま、捕虜にされた。


 エジプトは一時は壊滅的な被害を受けたが、ファラオが派遣した神を模した魂塊使い二人の御刃ごにんにより、その圧倒的な強さからスパルタ軍を殲滅して、戦争の結果はエジプトがスパルタに勝利した。が、ソルバがいる騎士団は軍事的用語の全滅をしてしまったので、解散する運びとなった。

 

――


 ここは、世界一神々しい光さす教会。

 

 そこに一人の女性が腕を組み額に当て、祈っていた。


 普段であれば、表情が笑顔のまま一切動じない彼女の表情筋が何かを感じ取ったのか、動いた。

 

「……これは、久しぶりに感じ取れました。我々の神に楯突く反逆者、王暴の気配。しかも消えましたね。これは良い報告が聞けそうです。」


 彼女は少し嬉しそうに、作戦の報告を待っていると、一人の信徒が来た。

  

「教皇様、無事王暴は処刑され作戦は成功いたしました。」 


「そうですか、これで、神に反旗を翻す者はいなくなりました。神の望みは叶えました、私達は神の恩恵で生きる事が出来るでしょう。それでは、可哀想な子供を保護しに行きましょうか。神の加護があらんことを。」 

 

「はい、神の加護があらんことを。」


 女性と信者は信心深く神に祈った後、立ち上がり教会の外に出た。


――


 (よし、王暴の力を少し使うことになってしまったが、アクフを守ることが出来た。だが、これではアクフに迷惑がかかってしまうな。次からは気をつけないと。それにしても奴ら、まさか俺達を炙り出す為にこんな大規模な事を起こすとは予想外だった。)


 特別な感情を抱いている目でアクフを見つめながら何者か知れない何かは思考を続ける。

 

 (だが、強くならないようにアクフが上がった力を才能分定期的に抜いているのにここまで強くなると思わなかったな。これでは目立ってしまう。まぁアクフがあの真実を知る由もないし、知ったら駄目だからこうしているんだから俺の責任でもあるな。取り敢えず奴らの目から逃れる裏工作をやっておこう。

 後、奴ら本当にイカれている。神に言われたからと言って全国に信者派遣して探すか普通?しかも、今回の王暴使用でどこにいるのかがバレてしまった。多分奴らの最高戦力であるカルテットエンジェルも派遣されるだろう。これはエジプトにいる訳にもいかない。アクフには辛い思いをさせると思うが奴隷になって居場所を有耶無耶にして逃げさせよう。)


 そう考え終わった時にアクフはスパルタ軍の兵士に連れられていた。


 (しかし、どんなことをしてもお前は死なせないぞ、アクフ。) 


 何者か知れない何かは強い眼差してアクフを見守る。    

 

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