第18話 転移者、新掘翔
令和5年(創世歴790年頃)
カクヨムにて掲載、あるでばらんす(新掘翔)著【本当に異世界に飛ばされた男が、再び戻って来ました】第5章 『異世界からの帰還』その5
俺とザイードは『キントウィンドフィールド』に乗って王宮の上空にやって来た。もう2度と戻るまいと思っていたこの場所に…。俺とザイードは『バトルスーツ』の光学迷彩を発動させて王宮へと侵入した。魔法の結界は既にザイードが打ち破っていた。
「たいした事ない結界だなー。こんな奴らが異世界召喚とかやめて欲しいよー」
「全くだ…迷惑極まりない。出来れば此処を灰に変えたいくらいだ」
「そうかー。じゃあそれがショウの“最後の願い”だねー」
「フッ、もう時間も無いし俺はやらんけどな」
俺は地下へと続く道を通って、あの忌まわしい召喚された部屋へと向かった。途中で何人かの衛兵が居たが、光学迷彩を発動している俺たちには全く気付かない。俺たちはさらに奥まで進み、いよいよ召喚された部屋という時に周りを囲まれた。その先に居たのはあの大司教だった。
「先程結界を打ち破った侵入者は貴様らか?王に弓引く大罪人めが…」
するとザイードが光学迷彩を切って姿を現す。
「あー、良くまあ“禁呪”扱いの召喚術をやったもんだねー。呆れて物も言えないよー」
「何が“禁呪”だ。アレは選ばれし者である我等に与えられた神の召喚術だ。貴様ら下郎には関係無い」
「全く…物を知らぬ馬鹿共だなー。その“禁呪”はボクの爺様が創り出した召喚術の“劣化版”なんだよー」
「何を馬鹿な…」
「爺様の弟子に…名前は長過ぎて面倒だから言わないけど、コッソリ盗み出したヤツが居てねー。ソイツから広がるに従ってドンドンと劣化したって訳さー。だから世界の歪みを誘発しちゃう出来損ないになって“禁呪”扱いになったんだよー。そんな事も知らない馬鹿が扱える物じゃ無いのさー」
まさかのカミングアウトに俺も驚いていた…まさかこの召喚術にザイードの爺さんが関わって居たとは…。
「ええい!!くだらぬ事ほざきおって!此処で死ぬが良い!」
「馬鹿は死ななきゃ治らないってホントなんだねー」
そう言った瞬間、大司教以外の連中全員が土柱に貫かれていた。いや…大司教の足も貫かれている。
「ぎゃあああ!!!」
「おーい、お前の他にこの召喚術を知ってる者は居るの?早く言わないと他の手足も縫うよ?」
「は、他…シバリアーナの連中なら…た、助けてくれええ」
「どーする?ショウ?」
俺に最後を振って来るとはね…でも、折角の御指名だからな。俺は光学迷彩を切って姿を現す。ヘルメットを脱ぐと大司教は驚いた表情に変わる。
「キ、キサマ…」
「あの時は世話になったな。折角だから決着を着けようか?」
「や、やめろ…た、たのむ…ワシは頼まれただけで…ヒッ!」
俺は『魔導ガン』を撃った。言い訳など聞く気もないし時間の無駄だ。
「ショウ…今まで言えなくて済まなかった。キミを見送りたかったから…」
「良いさ、確かにザイードの爺さんが作ったとしても、劣化版を広めた訳じゃないんだろ?じゃあ仕方無いさ」
「ショウ…ありがとなー。爺様はボクがシバいておくからさー」
「いや、シバかんでも良いから!」
俺たちは遂に召喚の部屋に入る。あの魔方陣が床に刻まれている。ザイードはその魔方陣を見回りながら溜め息を吐いた。
「…はあ…良くこんな劣化版が発動したよ…この文字が逆なら此処ごと吹き飛んでるよー」
「そ、そうなのか?そんなに危ない物が使われてたのか?」
「うん、見れば見るほど酷い。シバリアーナの連中と言ってたね…コレが終わったら全員始末しなきゃなー」
シバリアーナの連中とは『シバリア教団』というカルトの連中だ。西のタラマニア共和国で活躍していると聞いている。
ザイードは魔方陣の真上に描いてある魔方陣と同じくらいの大きさの石を創り出した。そしてその石に床の魔方陣を鏡合わせの様に紋様や文字を刻んで行く。“逆相位”とはそういう事なのか。それが終わると石をひっくり返して床に置いた。
「ショウ、その魔方陣の真ん中に立ってねー。そうしたら魔力を入れ込むからさー」
「その前に、ザイード、コレを渡しておくよ。俺の愛機の『キントウィンドフィールド』が入ったマジックバックだ。他の中身は後でのお楽しみだ。あ、そうそう、『キントウィンドフィールド』の設計書や説明書も中に入ってるから、故障したらそれを見て直してくれ」
俺がマジックバックを渡すと、ザイードは自分のマジックボックスに入れた様でスッと消える。
「ありがとう!じゃあ行くよー」
ザイードは魔方陣に魔力を入れ込んで行く。凄い魔力量だ…あの時は此処に20人程居たはずだが、その時の魔力量など問題にならない程である。そして、魔方陣が赤から青へと変わった瞬間に俺の真上の空間に亀裂が入った。更に魔力を入れ込むと向こう側が薄ら見えて来た。その瞬間、持っていた
“時空の実”が割れた。すると俺の時間が巻き戻っているのか、『バトルスーツ』が消えて俺も若返って行く。その時だった。
「ショウ!!この指輪をはめて!!」
ザイードが投げて来た指輪を左手の指にはめた。
「ザイード!!」
ニコリと笑ったザイードの顔が消えた瞬間、俺の目の前にトラックが迫っていた…
ドカーーーン!!!
俺はぶっ飛んだ…俺は戻った瞬間に死んだのか??
…しかし、俺は無事だった。
「おい!兄ちゃん!大丈夫か?!おい!救急車呼べ!!って…怪我は??」
「だ、大丈夫…みたいッス…」
「おいおい…嘘だろ…」
トラックのバンパーはボッコリ凹んでおり、事故の衝撃を物語っていたが俺は無傷だった。
ふと、左手の指輪を見ると黄色の魔石が割れている…そうか!ザイードが最後に渡したこの指輪は『魔法障壁』の指輪だったんだ!ザイードは時間軸が巻き戻った時に俺がトラックに突っ込まれるのを見越してコレを渡したんだ。“時空の実”が割れた瞬間に…その前だと巻き戻って消えてしまうから…。
(ザイード…我が友よ。本当にありがとう…)
完
<あとがき>
この小説をご覧の皆様、最後までお付き合い下さりありがとうございました。
信じては頂けないかも知れませんが、コレは“事実”です。
夢でも見てるのかとも思います…しかし、この指輪がある以上、あの記憶は夢などではないと信じています。
コレをフィクションだと読み手の方々に思われても構いません。たた、沢山の方々にあの異世界の多くの私の友人達…そして親友のザイードを知って頂けたら嬉しいです。
作者 あるでばらんす
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
とある酒場にて。
「ふ〜ん。それで王宮をぶっ壊したのかぁ?」
「そりゃあそうさー。それこそ粉々にしてねー。灰には出来なかったけど、ボクは土魔法使いだからねー」
「そんで、その足であの気狂い教団を全滅させたと…」
「まあ、簡単だったねー。当時は『キントウィンドフィールド』でひとっ飛びだったしねー」
「へぇ〜、そんな空飛ぶ魔導具があるのかよぉ〜。そのショウって奴は大したもんだなあ。オレも一度乗ってみてえなぁ〜」
「あー、それがさー、随分前に壊れちゃってさー」
「はあ?だけど設計書だの貰ったんじゃ無かったのかい?」
「それがさー」
ザイードは大きな溜め息を吐きながらこう言った。
「ショウの野郎がさー、設計書と説明書をさー、向こうの文字で書いてやがってさー、全然読めないんだよー!!」
「プッハハハハ!!!」
「もう!全く笑い事じゃないよー!」
「マヌケも良いとこだな!フハハハ!」
「全くだよー」
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