第31話 【魔界編】元太公、ガルマン=ラビュラレーダ
魔界神歴20594年(創世歴2439年)
元、イゼルデラス魔州、第五世太公ガルマン=ラビュラレーダ著、『魔人、異界より降臨す』その8
そのまま我々は“北の魔大陸”の“杜の里”へと戻った。宰相のモンリュートは意外と早い帰還に驚いていた様だが、『暗黒大陸』の事を聞くと更に驚いた様子だった。
「その様な化け物が居るとは…『暗黒大陸』に関しては関わらぬ方が良さそうですな…」
「どちらにしろ向こうに行く手段が『キントウイングフィールド』しか無いからねー。まあ、『暗黒大陸』は放置で良いかなー。ボクより強いのが沢山居そうだからなー」
「では、これから如何なさいますか?『南の魔大陸』で正式な不可侵を結んで居ない国を落としますか?」
「あー、別に良いんじゃないかなー。どうせウチらの食糧が無いとやってけないんだし。それよりも“杜の里”をキチンと発展させるのが先だよー」
「発展ですか?成る程…して、どの様に?」
「先ずは交通網の整備かなー。“南の魔大陸”の方はある程度の交通網は出来てるから“北の魔大陸”の交通網を整備しよう。そして、交通網がある程度整ったら、次は商業の発展だねー。食糧事情が良くなったんだから、魔族の暮らしぶりを向上させよう」
それからの100年ほどは商業や工業といった経済や教育などの政策を推し進めた。本当に驚くほどに魔族の生活は一変したのだ。特に魔導具製作はかなりの発展を遂げて、何人もの天才魔導具師が誕生した。
他の国も巻き込まれる様に経済状況が良くなり、それぞれ
その間、【魔人】ザイードは新たなる魔法の創造に力を注いでいた。やはり『暗黒大陸』での敗北により、より強さを求める様になったのかも知れない。因みに私や我が弟もその手伝いをする事となった。だが、それは中々上手く行かずに【魔人】ザイードは悩む事が多くなっていた。
「あー、やっぱり上手く行かないなー。ボクに他の属性の適合が有れば良かったんだけどなー」
「所謂『合成魔法』と言う奴ですかな?」
「そーそー。キミたちなら出来ると思うけどなー。ボクみたいな土魔法のみだと…ムムム…」
私達、兄弟は【魔人】ザイードの勧めもあって『合成魔法』の修行を始める事にした。
【魔人】ザイードはあの黒い手を分解して砂の様にする事までは成功した。しかしながら、目標にしている砂嵐の様にはならなかった。
「うーん…如何しても此処が…やっぱり“あの人”に相談しなきゃダメかなー」
「ザイード殿、“あの人”とは?」
すると【魔人】ザイードは嫌そうな顔をしながらこう言った。
「ボクの師匠だよー」
確か、【魔人】ザイードの師匠と言えば、一番最初に負けた上に殺されそうになったと言う…。
「しかし、お師匠様は『異界』にいらっしゃるのでは?」
「そうなんだよねー。さて、どうしたものかなー」
その様な話をしていた2ヶ月後、“北の魔大陸”のトンネルの近くにある山の麓で“異界の亀裂”が出現した。
【魔人】ザイードは『異界』に戻る為に“杜の里”の全ての魔将に対して、宰相であるモンリュートに全てを任せる事を話した。モンリュートの手腕は皆も良く知っている為に揉め事は起こらなかった。そして、私は【魔人】ザイードの従者として『異界』に行く事を決意していた。私が居る事で弟が中々“兄離れ”しなかったせいである。これには弟もかなり抵抗したが、【魔人】ザイードに「キミには“杜の里”の未来を託すという大事な仕事があるからねー。モンリュートに色々と教えて貰うんだよー」と言われると泣きながら同意したのだった。
“異界の亀裂”にやって来た【魔人】ザイードは【樹皇龍タナトス】に「残るなら構わないんだけどどうするー?」と聞くと【樹皇龍タナトス】は分体を置く事で本体は『異界』へ戻る事にした。
「それじゃあ、元気でねー。気が向いたら戻って来るよー」
【魔人】ザイードらしい軽い言葉で、泣きながら見送る魔将達も多い中、私と【魔人】ザイードは“異界の亀裂”を通り抜ける。向こう側に着くと途轍も無い数の兵士達が待ち構えていた。
「じゃあガルマンは結界魔法で亀裂を塞いでねー」
そう言うと兵士達の方に向かって歩いて行った。私は言われた通りに結界魔法で亀裂を塞いでいく。
「と、止まれ!!」
「責任者はいるー?ボクは向こうから帰って来たんだけどー」
そんなやり取りをしながら【魔人】ザイードが軍勢の指揮官と話をしだした。その内に私が亀裂を塞ぐと、そのまま【魔人】ザイードの方に向かう。
「ザイード様、亀裂を塞ぎ終わりました」
「えー、様付けは止めてよー」
「私はザイード様の従者です。ケジメは必要ですから」
「うーん…仕方無いなぁ…」
「それよりも彼方は如何ですか?」
「あー、何か話をした限りコッチではボクが『魔界』に行ってから200年程しか経ってないみたいだねー。もしかすると向こうと時間軸が倍ほどズレてるのかも知れないねー」
すると向こうの指揮官の者が此方にゆっくりとやって来た。
「ザイードと言ったな?君の記録が当時の騎士団ウォーレン=ミューゼの手記や冒険者ギルドに残っていた。特に細かな記録が当時のギルドマスターが残していた様だ」
「おー、ギルドマスターって言うとヒューリックのオッチャンだねー。オッチャンとは良く飲んだからなー」
「うむ、そのヒューリック殿で間違い無い。彼はその後、冒険者ギルドの副総長となったからな。各地の冒険者ギルドにこの記録を残させていた様だ」
「なるほどー。持つべき者は飲み友達かー。アハハ」
「とりあえず、詳しい話しを聞かせて欲しいのだ。何故、君は無傷で帰って来れたのか?…それと何故『魔界』の連中が攻め込んで来なかったのか?」
「あまり時間は取れ無いけど、説明くらいなら大丈夫だよー」
こうして私は【魔人】ザイードの従者として、『異界』へと渡る事となったのだ。そして、この『異界』でも冒険に次ぐ冒険をする事となるのだが、それはまた別の話し…。
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