第14話 転移者、新掘翔

令和5年(創世歴790年頃)

カクヨムにて掲載、あるでばらんす(新掘翔)著【本当に異世界に飛ばされた男が、再び戻って来ました】第5章 『異世界からの帰還』その1


◇これまでのあらすじ◇


トラックに轢かれる寸前に異世界召喚された俺は、『魔導具士』という戦えないギフトだった為に王宮から追い出された。

アシュトンという魔導具師に拾われた俺は、そこで魔導具製作の基礎を仕込まれる。

そして、一人前になった俺は素材を探す為に冒険者となり、自ら製作した武具を使ってダンジョンや遺跡に入る様になる。

魔導具製作の技術や冒険者としてのレベルが上がる中で、アズワン遺跡のハイレイス討伐に参加、幸運が重なった結果トドメを刺す事に成功する。

そして、スタンピードの危機にレイドに参加、オークキングとの壮絶な戦いを勝利。冒険者としてもまた、魔導具士としても認められてきた。

今回の依頼は特殊な素材で、素材があるらしい“大魔境エブレカンド”という場所に行く事になったのだが…。



急な地響きが聞こえた為、ヘルメットに装着されている『魔導レーダー』を発動する。すると、森の奥から結構強力な反応が7つ…そして“Unknown”の反応が1つだ。俺は装着している『バトルスーツ』の光学迷彩を発動させる。コレで景色に溶け込んでいる。

向こうから走って来たのオーガだった…なるほど強力な反応な訳だ。しかし気になるのはどう見てもこのオーガ達が逃げてる様に見える事だ。しかし、逃げる事に必死で隙だらけのオーガを見逃す手は無い。俺は『魔導ライフル』を起動して、先頭のオーガの額に狙いをつける…発射された赤い魔力のレーザーはオーガの額を直撃し、そのまま貫通した。オーガは倒れたが、他のオーガ達は全く止まらない。もう一体と狙いをつけたその時、全てのオーガ達が一瞬で土柱に貫かれた。

驚いた俺の『魔導レーダー』には反応が一つ…解析が“Unknown”の奴だ。“Unknown”という事は魔力量を計測出来ないという事だ。俺は『魔導ライフル』を最大出力にして狙いを定めた。


「へえー、面白い魔法だねー。今まで見た事無い魔法だよー」


森から出て来たのは子供の様なフードを被った奴だった。しかも光学迷彩を発動してる俺の方に向かって話している…見えているのか??俺は警戒を解く事無く、その子供の様なUnknownを見ていた。


「その全身を覆ってる魔法も面白いねー、実に興味深いなー。良かったらボクと話さないかい?」


「お前、一体何者だ?」


「あー、ボクは…」


と言うと何か呪文なのかと最初思うほどの長い台詞を喋っている。名前なのか!と気づいた時に思わず「長いよ!!」と突っ込んでしまった。


「…あー、そうだよねー、アハハ!」


「最初か最後の分かりやすいヤツで良くね?」


「あー、なるほどねー。それじゃあ…ザイードが良いかなー」


「じゃあ、ザイード、俺は新掘翔だ。姓は新掘で名は翔だ」


そう言いながら光学迷彩を解いた。するとザイードは『バトルスーツ』を見て「おお、それカッコいいな!」などといきなりこちらの側に来てペタペタと触り出した。コイツ、速いぞ。


「しかも変わったヘルムだねー」


と言いながら背伸びをしてヘルメットを触ろうとした際に、フードが外れてザイードがエルフである事が分かった。


「お前、エルフだったのか?」


「うん、ハイエルフだよー。ところで、キミは此処に一体何の用時で来たんだい?」


「ああ…俺は冒険者もやってるんだが、依頼を受けてある素材を探してるんだ」


「ほー、冒険者か…って冒険者以外も何かやってるのかい?」


「ああ…本職は魔導具士だ」


「へぇー!魔導具製作してるのかー?何か見せてくれよー。そうしたら探し物の手伝いをするよー」


「何かって…この着てるのも魔導具なのだが…」


「おお!なるほど!コレもそうなのかー!」


テンションが上がったザイードが「他のも見せてくれよー」と言うので仕方無く、仮眠の時に使う『簡易結界装置』や『魔導ライフル』を見せると散々質問攻めにあってしまった。


「いやあー、魔導具は好きで良く見に行くけど、キミの魔導具は独特だねぇー。今度、何か作って貰おうかなー」


「あ、ああ、それは構わないが…」


「ホントかい?やったー!!」


と言いながらはしゃいでるザイードはまるで子供だ。俺はそろそろ本題に入ろうとザイードに話しかける。


「今回、この大魔境エブレカンドにやって来たのは【聖霊樹の枝】を求めてやって来たんだ。ザイードは知っているかい?」


「あー、キミはアレを求めてやって来たのかー。聖霊樹の場所は知ってるけど、簡単にはそこまで行けないよー」


「それでも必要なんだ。依頼を受けてしまったからな」


「うーん…精霊樹の周りには“聖獣”と呼ばれる連中が居てさー、聖霊樹を護っているんだよねー。彼奴等は物凄く強いんだよー」


「なるほど…噂では聞いていたけど、実際にいるんだな」


「えー、知らないで来てたのかい?中々無茶するねー、アハハ」


中々手強そうな連中がいる様だ…さて、どうしたものかと考えていると、ザイードが俺にとある提案をして来た。


「キミの魔導具…その鎧を使えば上手く行くかもよー?案内するからボクにも一つ作ってくれないかなー?」


鎧…『バトルスーツ』の光学迷彩の事だろうか?

さて、どうしたものかなぁ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る