第29話 【魔界編】元太公、ガルマン=ラビュラレーダ
新年、明けましておめでとう御座います。
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魔界神歴20594年(創世歴2439年)
元、イゼルデラス魔州、第五世太公ガルマン=ラビュラレーダ著、『魔人、異界より降臨す』その6
私は何故か【魔人】ザイードと共に『キントウイングフィールド』に乗っていた。
何故なら【魔人】ザイードに連れられて発見したばかりの『暗黒大陸』に行く為である。
そもそも、『南北の魔大陸』からは外洋に出る事は殆どあり得ない。何故なら海の魔物“魔海類”は恐ろしい程に強いからだ。“魔海類”は優れた水属性の魔物なので、水魔法は効かず、海中では風魔法も土魔法も届かず、唯一火魔法は効果があるが、大型の“魔海類”では殆どが鱗で弾かれてしまうのだ。過去に数回外洋に出る計画が実行された事はあったが、その度に“魔海類”により多大なる被害を出して頓挫していた。その為に外洋に他の大陸がある事すら知られてなかったのだ。だから【魔人】ザイードの『キントウイングフィールド』が無かったら『暗黒大陸』の存在が判明するのは遥かに先の話であっただろう。
そして、発見してからの【魔人】ザイードは『暗黒大陸』に行く為、留守中の“杜の里”の運用を元『モザリアーク皇国』の軍師で、現在では宰相に任命されていたモンリュートに一任した。
そして、【樹皇龍タナトス】と共に何故か私も一緒に行くことになった。理由を聞くと【魔人】ザイードは、「あー、『旅は道連れ、世は情け』って言うからねー」などと意味不明な事を言っていた。
【樹皇龍タナトス】は分体を魔大陸に置いて、本体は小さくなって【魔人】ザイードのローブの中に入り込んでしまった。私は最初【魔人】ザイードの背後に掴まって『キントウイングフィールド』の上に乗った。慣れてからは【魔人】ザイードの様に座って乗れた。『キントウイングフィールド』は途轍も無く速く『暗黒大陸』に2日程で到着した。
此処に来て、何故【魔人】ザイードがこの大陸を『暗黒大陸』と名付けたのかが判った。この大陸は異常に濃い魔素で覆われている為に黒いモヤが掛かっている様に見えるのだ。此処まで魔素が濃いと普通ならば食糧の確保が難しそうであるが、此処には住民が居るのだろうか…。
『暗黒大陸』に降り立つと【樹皇龍タナトス】がローブから直ぐに姿を現した。【魔人】ザイードと共にかなり警戒をしている。そして、直ぐにとんでもない魔力の魔大陸では見た事もない大型の4本足の魔物が此方にやって来た。
「あー、こりゃ強いなー。【タナトス】君、2秒だけ足止め出来る?…うん、なら宜しくー」
そう言った瞬間、飛びかかって来た魔物を【樹皇龍タナトス】の蔦が数本飛び出して一瞬動きを止めた。そこに【魔人】ザイードが土魔法の今まで見た事の無い“黒いランス”を魔物に飛ばして貫通させた。勝負は一瞬で着いたのだが、【魔人】ザイードはその魔物の側に行って魔石を取り出すと魔大陸の優に2倍は有ろうかという大きさであった。【樹皇龍タナトス】は死んだ魔物を自らの体に取り込んだ。
「あー、こりゃあヤバいかもなー。多分、コイツは此処の大陸じゃあ下位ランクだろうなぁ」
と【魔人】ザイードが言い出した。あれ程の魔力で下位だと言うのか?私はまさかと思っていたが、その後しばらくして【魔人】ザイードの予想が的中する。
「おお…こりゃあヒュードラーじゃ無いか。しかも“向こう”で見た奴より数段強い。こりゃあ本気出さないとヤバいねー」
そういうと【魔人】ザイードは地上から大きな黒い手を4本出してヒュードラーを殴り付けながら、首を引き千切って行く。
「【タナトス】くん!千切った首の根元をブレスで焼いねー!それで生えて来ないからさー!」
【樹皇龍タナトス】は言われた通りにブレスで千切った首の根元を焼いて行くのだが、焼きが甘い部分から直ぐに首が生えて来てしまう。私も火魔法で焼く手伝いをしたが、殆ど効いていない様に見えた。数十分の攻防の後、遂に全ての首を引き千切り、傷口を焼いた後でヒュードラーの心臓を高速回転させた螺旋状の土柱で貫いた。
「【タナトス】くん、全部食べて良いよー。早く勝負を着けないと他がやって来るからキツいよねー」
「他の魔物がですか??」
「うん、多分この地は完全な弱肉強食化が進んでいて、弱い物は糧となってしまうんだ。だから勝負が長引くと次から次へと他の魔物がやって来て、戦いで弱った魔物を倒しに掛かるんだ。それが厄介なんだよねー」
それじゃあ、この地には所謂私の様な魔族は居ないのでしょうか?」
ら
「んー、どうだろうね。もっと奥まで行けば魔族的な者はいる可能性もあると思うよー」
「…この様な環境で生き延びれた魔族とは一体…」
「あー、ちょっとヤバい連中かも知れないねー」
【魔人】ザイード程の者がヤバいという連中は、一体どれ程の者なのだろうか?そう思いながら我々は更に奥へと進んで行った。
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