第20話 炎の悪魔ローレライ戦考察

創世歴1729年

大樹海キャラバール深層エルフ村、長老口伝

『炎の悪魔ローレライ』



『…西の大陸に突如現れし、悪魔序列第十八階位【炎の悪魔ローレライ】、その悪魔の力で、二十の都市と三つの森を焼き払う。アルダン皇国は騎士団三千をローレライ討伐に向かわせたが、ローレライの炎凄まじく、一瞬で全て灰となる。そしてローレライはアルダン皇国を滅ぼした後、西の大陸から東の大陸へと渡り、更に都市を焼き払う。その数十五…ローレライの猛威は収まらず、遂に我がキャラバールまで焼き尽くさんとす。その時、聖霊樹より使われし【森の守護者】が炎の悪魔ローレライと激しい戦いとなったが、最後は土柱でローレライを串刺しにして此れを打ち倒す…』



創世歴1823年

作者不明 物語『森の守護者と炎の悪魔ローレライ』


『フハハハ!!我は炎の悪魔ローレライ!この世界の全てを焼き尽くしてくれるわ!!フハハハ!!』


突如現れた炎の悪魔ローレライは西の大陸で街を焼き始めたのです。西の皇国はローレライと戦いますが、一万の軍隊も焼き尽くされ、多くの街も焼かれて滅んでしまいました。


そして、暴れ回った炎の悪魔ローレライは海を渡って東の大陸にやって来たのです。


『この大陸も我の炎で焼き尽くしてくれるわ!』


そう言うとローレライは街を焼き始めたのです。


人々は神に祈りました。


『救世主が現れないものか?』



《中略》



その時、森の中からその人は現れました。


『我は森の守護者!炎の悪魔ローレライ!この森を焼き払う事は許さぬぞ!』


『ははは!貴様などに何が出来る?我の炎で消し炭にしてくれるわ!』


炎の魔法が森を焼かんとしたその瞬間、大地より大きな土の腕が現れて、ローレライを殴りつけました。


『私の土魔法で貴様を倒してやる!』


ローレライは逃げ出そうとしましたが、森の守護者が土壁を張り巡らせローレライを逃しません。


『おのれ…こうなれば我の最強の炎魔法を喰らうが良い!』


ローレライは巨大な炎の鳥を出現させました。


『ならば私も最強の魔法で相手をしよう!居でよ!ジャイアントゴーレム!』


森の守護者は巨大なゴーレムを召喚して炎の鳥に対抗します。

そして、激しい打ち合いの末にゴーレムが炎の鳥を消し去りました。


『ば、バカな…』


『ローレライ!これで最期だ!』


ローレライは巨大なゴーレムのパンチを受けて潰されてしまったのです。


こうして、森の守護者に炎の悪魔ローレライは倒されて、世界に平和が訪れました。


めでたしめでたし。



創世歴1959年

サルバドール=グラスゴー著 『森の守護者の真実』より


私は「森の守護者とローレライの戦いを見た」と言うエルフに出会った。そして、この戦いの真実を聞く事となったのである。


「ローレライ…アレは恐怖そのものだった…」


そう言うと彼はゆっくりと真実を話し始めたのである。



《中略》



そして、その戦いを見たと言うエルフはこう言った。


「森の守護者は空を飛んで、上から巨大な岩石を幾つも落としローレライを潰した」


「巨大なゴーレムに潰されたや土柱で串刺しにされたとか、アレは嘘なのか?」


「違う。正しくは上空から岩石で潰したのだ」


「森の守護者は空を飛べたのか?」


「うむ…恐らくは聖霊樹の加護であろうな」


「なるほど」


驚愕の真実…それは森の守護者が聖霊樹の加護により、“空を飛べた”という事である。




◇◇◇◇◇◇◇◇



創世歴2090年

とある酒場にて…酔っ払い冒険者とハイエルフの会話


「…とまあ、色々と言われてる訳だけどヨォ」


「あー、ローレライなー。懐かしい話だなー」


「アンタ実際はどういう風にローレライを倒したんだ?」


「あー、それはね…」


「うん」


「ローレライの奴に火傷させられそうになったんでさー」


「ほうほう」


「ムカついてさー、ローレライの奴にバキッ!ってやってからボコッ!ってねー」


「ほうほう」


「それで最後はローレライに、ズゴーン!!ってやってトドメを刺して倒したんだよー」


「ああ、なるほど…って全然分からねーよ!!」


「ええっ!?分かんないのー??」


「そんなんで分かるかっ!!」


「オッチャン飲み過ぎなんだよー」


「飲み過ぎ関係ねーよ!」

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