第46話 アレクレット聖教会、聖女公ラシスフィア
「実はねー、創世魔導立国のレ・バリュビューダ魔術修練館で、【双邪妃】の傀儡が現れたんだけどねー」
「その情報は此方にも入って来ております。やはりザイード殿が倒されたのですね?」
「へぇー、流石は聖教会だねー。うんうん、ボクがその傀儡を倒したのだけど、今度はこちらの方に邪気があるとお師匠様が言うんだよー。それで何か兆候は無いかと思ってコッチにきたんだー」
「なるほど…それで怪我をされた【大魔導】殿に代わって来られたと…」
「あー、それがさぁー、実はお師匠様はピンピンしてて怪我もしてなかったんだよねー。ボクを行かせる為に一芝居打ったんだってさー。全く酷いよねぇー?アハハハ!」
「そ、そうでしたか…怪我が無くて何よりでしたね」
「おかしいとは思ったんだよー。その傀儡と戦ったら直ぐに倒せたし、あんな紛い物に怪我させられる人じゃ無いからねー。おっと…話が逸れちゃったねー」
「しかし…邪気を感じたというのは事実でしょうか?私どもでは特に報告も入ってはいませんが…」
「あー、そうなのかー。それじゃあしばらくコッチで探してみるとするよー。もし、行方不明者が多発する事件が起きたら知らせて欲しいんだよねー」
「では、こちらで逗留なさって下さい。部屋も用意致します。その方が連絡も取りやすいかと存じます」
「あー、助かるよー。お師匠様がケチで予算出してくれなかったからさー!アハハハ!」
ザイード殿はそう言って喜んでいたが、私は【双邪妃】の名前を聞いて緊張していたのです。何しろあの【超人】バルクレスを倒し、ザイード殿も殺されかけたあの二人なのですから…。
「ザイード殿を貴賓室へ案内を…、此方には枢機卿各位と聖騎士団長を呼び出して下さい。緊急事態です」
私は教会における最高権力に働きかけて、この未曾有の事態に対処しようと考えました。もちろん、私も『聖典』と共に出撃するつもりですが。
それから私は枢機卿各位及び聖騎士団長に事情を説明し、全員の理解を得てから教皇様へご説明に伺う事となった。その際、ザイード殿とお会いしたいと教皇様直々の御言葉があったとの事で、嫌がるザイード殿を強引に連れて行く事となった。
「あー、ボクは話し方がこんなんだから、お偉い方とお会いするのはお師匠様に止められてるのだけどなー」
「教皇様は慈悲深くお優しい方ですから、多少ならば全く意に介さないかと思います」
「はぁ…憂鬱だなー」
かなり消極的なザイード殿を連れて“教皇の間”へと入って行く。中には我がアレクレット聖教会最強を誇る近衛聖騎隊十二名の面々が並んで待っており、その奥の数段上がった場所に教皇様の聖座があり、既に教皇様が座しておられた。
「教皇様、ラシスフィア公及びザイード殿がお越しになりました」
「うむ、此方へと進むが良い」
私達二人は近衛聖騎隊の第一席であるアンダルシア=ローレングラムに案内されながら教皇様の前までやって来た。
「先ずはラシスフィア、【双邪妃】の件は御神託により既に聞き及んでいます。ですから改めての説明は不要です。さて、ザイード殿。私がアレクレット聖教会の教皇、ラファエル=アレクレットです。先日、神よりの御神託があり、ザイード殿へ神よりの御言葉が御座います」
私は驚きの余り固まってしまった。教皇様が神からの御神託を受けるのは二十数年振りの事で、その御神託の中に外部の方へのお言葉があると言うのは、私がアレクレット聖教会に所属してからの歴史でも聞いた事がない前代未聞の出来事だったからです。
「ムムム…神様からのお告げですか…それはお聞きしない訳にはいかないですねー」
その言葉を聞いてザイード殿を睨む近衛聖騎隊の面々…しかし、教皇様は彼等に手を挙げて落ち着かせる。一方のザイード殿は相変わらずどこ吹く風といった感じである。
「フフフ…そうですね、聞いて頂きますよ。神よりの御言葉は…『星落を許可する』…との仰せでした。私には何を言われているのかは解らぬのですが…ザイード殿は理解出来ましたかな?」
隣のザイード殿を見ると口を開けて驚いた様子だったが、直ぐに笑い出した。
「アハハハ…そうかー、神様は“アレ”をご存知なのですねー。なるほどなるほど…許可してくれるなら遠慮なく使わせて貰いますよー」
「うむ、意味が通じた様ならばそれで良いでしょう。此方からもアンダルシアを派遣しますので指揮はラシスフィアに任せます。必ず【双邪妃】の陰謀を止めなさい。良いですね?」
「ハッ!教皇様の仰せの通りに!」
こうして我等は教皇様との謁見を終えた。
“教皇の間”を出てから私の執務室に戻る間にザイード殿に話しかける。
「先程、御神託にあった『星落』とは一体何なのでしょう?」
すると、ザイード殿は困ったような笑みを浮かべて
「あー、それに関してはお師匠様から他言無用と言われてるからねー。でも、あの双子との戦いで使うかもだからさー」
戦いで使うとなると魔法なのだろうか?神が許可するなどと言う魔法が果たしてあるのだろうか?私は何かモヤモヤとした気持ちで執務室へと戻ったのです。
土魔法のハイエルフ 鬼戸アキラ @yamihoppy0305
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