第38話 新聞とドーニャ・マリカ

 ドーニャ・マリカは自室に戻るとベッドに腰を掛けて再び新聞を開く。

 ニュースのほとんどが王都での出来事。突如婚約破棄をし、幼馴染との結婚に変更。そして元婚約者は歓迎会で姿をくらまし今も行方不明。さらに元婚約者には国家転覆の容疑で指名手配されている。名前も似顔絵も一面を使って大々的に知らせていた。

 その似顔絵は、たった今別れた女性と瓜二つ。


「……」


 新聞は有益な情報を提供すれば対価も与えると報じていた。

 目撃情報であれば銀貨一枚。

 正確な潜伏場所を通報したら金貨三枚。


 ドーニャ・マリカは煙草の煙を新聞に吹きかける。


「……くだらねえ」


 全ての記事を読み終える前に、新たにマッチを擦ると新聞に近づけて燃やしてしまう。


「さっさと寝ようかね、ふう」


 灰皿に煙草を押し付けて布団を被るとたちまちイビキが始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る