第50話 手を取り合うカルメンとアルフォンス
「また、拙は、もうしない、と心に誓ったのに……! そしてよりにもよって、アルフォンス様に……!」
カルメンの犯した罪は未来永劫許すことはない。
「い、いやだ……! 拙はまだ、アルフォンス様と……!」
脳裏によぎるカルロスとの約束。
アルフォンスが拒んだり、怖がったりしたら、護衛をやめる。
憤怒で歪んだ表情に凶弾を放つ銃口を向けた。
「でもこんな拙はアルフォンス様の側にいる資格など……!」
頭がまとまらない。
苦しい。
もう嫌だ。
何が善で悪で、何がしたいのかもわからなくなっていく。
ただ、ただ、頭を使うだけ息を吸うだけ苦痛になる。
そして決して選んではならない道を見つけてしまう。
「……そっか、最初からこうすればよかったんだ……」
カルメンは銃口を自分のこめかみに当てた。
「ごめんなさい、アルフォンス様。拙はもう……あなたの側にはいられません」
引き金に指をかける。
「いけませんわっ」
アレクシスが出るよりも先に、
「なにやってんだ、カルメン!!!!!!!」
アルフォンスが拳銃を弾いて、カルメンを押し倒していた。
「君は今、何をやろうとしたかわかってるのかい!!!???」
「拙は……お別れをしようと」
「そんなの、僕が許さない!! 君は言っただろう!!? 僕の心を埋めるって!!!!」
「あれは……町の娘を家族代わりに……」
「なんで、君が、君自身が、家族になろうとしてくれなかったんだよぉ!!」
「……アルフォンス様は知らないのです。拙の過去を知らないから」
「知ってるよ、とっくに知ってる!! 君が僕と同い年くらいの罪のない子供を殺めてしまったことくらい!」
「知って、いたのですね……」
カルメンも追い詰められて感情で返す。
「じゃあおわかりでしょう!? 拙に、拙にアルフォンス様の手を握る資格はありません! 拙の手は真っ赤に汚れているのです! そんな手、握れないでしょう!!?」
「握れるよ!!!」
アルフォンスはカルメンの左手を力強く握った。
「確かに一度は真っ赤に汚れたかもしれない……だけど君の手はこんなにも綺麗じゃないか。塔の上からずっと見てたよ。綺麗な草花を世話をする君もまた、すごく綺麗だった」
「み、見られていたのですか……それは、その、恐縮です」
あまりに真っすぐに綺麗と褒められ、まっすぐアルフォンスの顔が見れなくなってしまう。
「他にもサンドイッチはいつも君が用意してくれたよね? ありがとう、いつも美味しく頂いてたよ」
「そ、そちらまで……というかアルフォンス様! 覗きが過ぎませんか!?」
「仕方ないだろう! それくらい君のことが気になっていたんだから!」
「まさか着替えまで覗いてませんよね!?」
「えっっと、それは……」
今度はアルフォンスがまっすぐと顔を見れなくなってしまう。
「アルフォンス様。どうやらじっくりとお話をしないといけないようですね」
悲劇の嵐は過ぎ去り、雨降って地固まる。
すれ違い続けていた二人の距離は一気に縮まった。
「二人の世界に入るのは結構ですが私がいることを忘れないでほしいですわ……」
そう言うアレクシスだったが美しいものを間近で眺められ、心を満たされていた。
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