第67話 カルロスと再会を果たすアレクシス嬢

 全身を水魔法で変身コーティングしていたマリアは沈まぬ太陽をモロに受け黒焦げになって倒れていた。

 同時に繰り返し水魔法の影響を受けていたカルロスも気を失い倒れかけたが側にいた大司祭がこれを受け止めた。


「アレクシス嬢! あなたならやってくれると信じてましたぞ!」


 カルロスを担ぎながら急いで功労者のアレクシスの元へ。


「ああ、カルロス様……眠っているお顔も素敵ですが……笑顔を……笑顔を……私は今一度、あなた様の笑顔が……見たいのです」


 頬を触れるとひどい熱が出ているとわかった。ウィルスに抵抗するように彼も催眠魔法とずっと戦っていた証左。


「さぞ苦しかったでしょうに……申し訳ございません……あなた様が苦しい時に側にいられなくて……」


 麗しい頬と唇が動き始める。


「……その声は……アレクシスか……」


 瞼も開き、目と目が合う。


「やはり……だったか……君は、悪くない……謝るべきは僕のほうだ……」


 呻きながらも身体を起こす。


「おお、殿下! 正気に戻られましたか!」

「カルロス様! 私は大丈夫ですので! 無理をなさらないでください!」

「それこそ無理な相談だ、君のほうがもっと無理を……してきたのだろう? 見ればわかる。どこもかしこもボロボロ……じゃないか」

「いいえ、いいえ! 見た目ほどではございませんわ! それに無理などしておりません! 私めはカルロス様を思えばちっともつらくも……なんとも……つら、くなんて……」


 その時どんな困難な状況でも前を見据え続けた目からボロボロと大粒の涙がこぼれた。


「……ああ、私ってば……本当に嘘ばっかりの嫌な女ですわ……ほんとはずっとつらかったし、こわかったです……いきなり婚約破棄と宣言されて、わけがわからなくなったり……カルロス様を思えば立ち上がることができましたが……本当は自分がおかしくなったんじゃないかって何度も不安にもなりました……そのたびに自分を誤魔化し、カルロス様を信じて、ここまで来ましたの……だからではありませんが、図々しいお願いではありますが、カルロス様、笑ってくださいませんか? 怒った顔も苦しむ顔も眠る顔もどれも素敵ですが一番は、笑顔でございます」

「ああ、君のためならいくらでも笑顔を見せるよ。そして僕からもお願いだ。元気が出たら君にも笑ってほしい。またあの高笑いが聞きたい。鋼のように分厚い雨雲にも穴を開けるような君の高笑いが、僕は大好きなんだ」

「私も大好きですわあああカルロス様ああああああああああ」


 アレクシスは泣く。大泣きする。愛する人カルロスの胸の中で。

 大声で泣くのは淑女のすることではないが今の彼女はただのアレクシスだった。

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