第10話 自称妖怪大君アッパレガエルと出くわすアレクシス嬢
物音は徐々に大きくなる。近づくからこそわかることもある。
「これは物音というよりも足音ですわね」
「ああ、それと音と音の間で一定間隔に空いている」
「つまり獲物の移動手段はジャンプということになりますわね」
バネのある足で森に生息している生き物といえば、
「それでは、獲物というのはウサギさんでしょうか! まあなんということでしょう、可愛い顔していたら私きっと戦えませんわ! そうだ、お話できたなら仲良くなって抱っこしてもらいたいですわー!」
「ああ、そのなんだ、お楽しみのところ、悪いんだが、獲物の正体の一端は握っているんだが」
「お待ちになって! もしも出くわした時の楽しみにしておきます! 茶色毛かしら? それとも白毛だったり~」
「出くわさずに森を出られたらいいんだがな」
音が止んだ。そして生い茂っていた木々が減り、森を抜けようとしていた。
「まあ残念ですわ。結局お会いできませんでしたね」
足を緩めるアレクシス。彼女は油断していた。とっくに脅威は去った。そして獲物に知恵があるとは思わなかった。
ずぬり。
地面に撒かれていたテカテカと光る粘液が足を奪う。
「きゃあ!」
尻もちをつくアレクシス。
「もう誰ですの、こんなところにイタズラを仕掛けたのは!」
そこへ血相を変えたイバンが飛び込んでくる。
「危ない、アレクシス!!!」
咄嗟に抱き込んでその場から距離を取る。
「まあイバン様ってば、私には婚約者がいるのにいけませんわー!」
などと浮かれるのも束の間、
ドゴオオオオオオン!!!!!
アレクシスが転倒した場所に大きな岩らしき物体が轟音を立てながら落下した。
「ゲーコゲコゲコゲコ! 俺様の罠を回避するとは大した奴だゲコ!」
大きな岩らしき物体はこともあろうか人語を発した。
「な、なんてことですの……あれは、あれは……」
「
腹側は首から股間にかけて白く背中は緑色に黒い斑点模様。全体は湿り気というよりもぬめり気を帯びていた。
そして頭には立派な突起物……ちょんまげが生えていた。
アレクシスは驚きのあまり叫ぶ。
「なんてことですの……ウサギさんじゃありません、あれは……トノサマガエルですわああああああああああああああああああああああああ」
その声量はカエルの落下時の轟音にも負けず劣らず。
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