第50話 世界と雀荘と――そして、大切なもの

 雀荘でワイワイ遊び、気づけばもう20時を回っていた。



「お腹減ったね~」



 リベリオンさんがつぶやく。

 やっべ、なにも用意していなかった。

 料理を作るのは面倒だな。



「よし、じゃあ……なにか頼むか」

「おっ、いいね! ウーハーイーツかな」

「いいぞ。みんな、好きなのを頼め!」


 俺は奢る気で言った。

 ちと出費だが、けど大丈夫だ。

 この前の事件解決で臨時収入を得ていた。

 別班から特別報酬を受け取っていたんだ。


「え、いいの~?」

「苺も頼め。もちろん、陽菜もね」


 スマホを渡し、メニューを選んでもらう。

 みんなそれぞれ注文し、俺も頼んだ。


 ……これでヨシっと。


 到着までは再び麻雀だ。



 ◆



 一時間もしない内に注文した品が届いた。


 俺が袋を受け取り、リビングへ。

 テーブルの上に晩御飯を並べていく。


 ピザ、寿司、牛丼、ハンバーガーと。



「ピザは俺。寿司は苺、牛丼はリベリオンさん、ハンバーガーは陽菜か」



 それぞれ配り、さっそくご飯をいただくことに。



「いただきまーす」

「ありがとね、前川くん」

「お兄ちゃん、ありがとー!」



 みんなで晩餐ばんさんを楽しむ。

 たまに俺のピザと苺の寿司を交換したり、リベリオンさんの牛丼を“あ~ん”で貰ったり、陽菜のハンバーガーを一口かじらせてもらったりした。


 こうして女の子達とワイワイするのは最高に楽しいな。



「って、里樹くん! リ、リベリオンさんから、あ~んとか!」

「苺違うんだ。リベリオンさんが強制的に口元へ運んでくるから……」

「浮気者ー!!」

「えぇ……」



 リベリオンさんは、してやったりな顔してるし。おいおい!



「自分も前川くんのことが好きだからね」

「「なッ!!」」



 俺も苺も、リベリオンさんの隠そうとしないストレートな気持ちに驚いた。

 以前、振ったはずなんだけど、でも俺を好きと言ってくれるのは素直に嬉しい。



「もー…」

「機嫌を直してくれよ、苺」


 俺はリベリオンさんと陽菜にバレないよう、苺の手を握った。


「……わ、分かった」


 すると、苺は顔を赤くして納得してくれた。……ふぅ。



 食事は終わり――各々解散となるはずだった。



 だが、みんな泊まることになった。

 明日は休日だからだ。



「というわけで、自分はあっちの空き室を借りるよ」



 リベリオンさんは、その前にシャワーを浴びてくると行ってしまった。

 陽菜もリベリオンさんと一緒に寝ると言って、これまた一緒にお風呂へ。最近、あの二人は仲が良いな。


 まあいいだろう。


 リベリオンさんに陽菜を任せ、俺は苺だ。



「苺、やっと二人きりだな」

「そうだね。みんな泊まるけど、その方が楽しいもんね」

「ああ、ここはみんなの雀荘だ」

「卒業までもっと楽しいこと、いっぱいしようぜ」

「そうだね。毎日をパーティにしないと!」

「けど、二人でいられる時は二人でいよう」

「もちろんだよ。……その、キスしたい」

「お、おう」


 リベリオンさんと陽菜がいない今がチャンス。

 お互い見つめ合い、顔を近づけていく。

 苺の唇にそっと重ね、体にも触れていった。


「……興奮してきた」

「早いな、苺。最近、えっちになってきたんじゃないか?」

「うん、そうかも。里樹くんのせいかな」

「俺のせいかよ」

「そうだよ」



 このまま苺を押し倒したい気分だが、しかし、リベリオンさんと陽菜がいる以上は無理だ。精々、キスと触れ合うくらいが限界だな。



「この後もしたいなぁ」

「わたしもだよ。でも、二人に気づかれちゃうね」

「残念……。と、言いたいところだけど、これくらいならいいよな?」

「ん?」


 俺は苺を後ろから抱きしめ、密着。

 体に触れていく。


「少しの間イチャイチャしたい」

「まあこれくらいなら」


 苺も納得してくれた。



 ◆



 雀荘生活はずっと続いた。

 それこそ『卒業』まで。


 俺と苺の距離はどんどん縮まり、将来を約束する仲にまでなっていた。


 ある日の学校。

 誰もいない屋上。


「里樹くん、これは?」

「結婚指輪だよ」

「ほんと! 嬉しいっ」


 キスをしてくれる苺。

 俺は苺と将来を共にしたいし、結婚もしたい。


 その為に結婚指輪を買った。

 これで別班で得た金は丁度なくなった。

 けど、これから仕事がはじまる。


 そう、俺はいよいよ別班に所属するのだ。


 仕事がはじまれば、家を空ける時間も多くなる。その前に苺に俺の気持ちを伝えておきたかった。



「苺、俺はこれから別班に入る。前に椙崎さんから聞いたんだが、海外に飛ぶこともあるそうだ」

「一緒にはいけないのかな」

「危険な仕事もあるからな。相手はテロ組織だったりする場合もある。そういうテロを未然に防ぐのが俺の仕事だ」


「椙崎さんみたいなことにならないでね」

「大丈夫。今日まで体を鍛えてきた」



 俺はあれから、死ぬようなトレーニングを重ね、体だけは丈夫になった。



「ねえ、里樹くん。せめて支えさせてね」

「俺からもお願いしたい。だから……結婚してくれ」


「喜んで」



 俺は苺の薬指に結婚指輪をはめた。

 高校卒業の日にこれが出来て良かった。


 苺は嬉しそうに微笑み、涙を流していた。


 再びキスを交わし、永遠の愛を誓った。



「苺、一生守るよ」

「わたしも一生支えるね」



 時間を忘れ、長いことキスをした。

 そして、誰もいない屋上で俺は苺と繋がった。

 制服で出来るのはこれで最後だから、記念だ。


 飽きるまで苺を愛し、苺も俺を愛してくれた。


 かなり激しく乱れたので、誰か来ないかとヒヤヒヤしたが――幸いにも最後まで楽しむことができた。まあ、卒業式が終わって誰もいない屋上だから大丈夫か。



 手を繋ぎ、学校を去る。



 ここまで色々あった気がする。

 山田さんのことや、様々な事件。

 椙崎さんと出会って事件を解決したり。


 リベリオンさんと陽菜と雀荘で毎日パーティ三昧。


 最高に幸せだった。



 雀荘へ戻り、俺は『名刺』の電話番号に連絡を入れた。

 すこし経つと女性が出た。

 椙崎さんの嫁さんだ。



『……前川くんですね。覚悟は出来ましたか』

「はい。別班に入ります」

『分かりました。では、直ぐに本部へ来てください』

「了解です。どこへ向かえば?」


『それでは東京の――』



 ◆



【一年後 - One year later】



 大事件を解決した俺は、久しぶりに雀荘に返ってきていた。

 相変わらずボロアパートで、人気のない裏路地だ。


 階段を上がっていく。


 俺の気配を感じたのか、扉が開いた。


 中から安堵したような表情をした苺が現れ、こちらに歩み寄ってきた。苺はあれから、ずいぶんと大人びた。

 近所ではなぜか“未亡人”の美人と有名だ。どうやら俺は死んでいることになっていた。まあ自ら望んだことだけどな。


 彼女のお腹はすっかり膨れ、新たな命が宿っていた。



「おかえりなさい」

「ただいま」



 今日も俺は世界と雀荘と――そして、大切なものを守った。

 愛する者の為に、俺はこれからも活躍をし続ける。


 けど少し休憩だ。


 可愛い嫁の為に俺は、別班をしばしの休暇とした。



 - 完 -




【ありがとうございました】


『クラスで一番可愛い女子と付き合って一年後、寝取られたけど二番目に可愛い女子と付き合うことになった』を応援いただき、ありがとうございました!


無事に10万文字を突破し、キリがよくなったので完結とさせていただきます!


★400近くと久しぶりに伸びました。

みなさまのおかげです!


この作品はコンテストにも応募していますので、もしかしたら書籍化とかできるかもしれません。面白いと思ったらで良いので★や♥で応援いただけると幸いです。可能性が高まりますw


応援コメント(感想)もたくさん、ありがうございました!

今後返信することもあるかもしれません。



また新作も追ってくださると嬉しいです。



他の作品も応援いただけると嬉しいです↓



隣の席のギャルが優しい

https://kakuyomu.jp/works/16817330669012901100


無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

https://kakuyomu.jp/works/16816927860344761869


クラスメイトの美少女と無人島に流された件

https://kakuyomu.jp/works/16817330648641803939

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る