第15話 二番目に可愛い女子も寝取られ……

 午後の授業を受け続け……ようやく放課後。

 時間の経過の遅さを恨んで、やっとこの幸せな時間が迎えられた。さて、伊井野さんと下校して美味しいものを食べに行こう。


 席を立ち、伊井野さんを呼ぼうとするが本人がいなかった。……あれ、さっきまでいたはずなのに不在だ。


 おかしいな。たった五分前までは前の席にいたはず。目を離した隙にどこかへ行ってしまったのかな。


 誰かに聞こうにも、自分がぼっちすぎるせいで話しかけられない。そもそも、男に話しかけようものならば、もれなく刺されるだろうな。


 仕方ない、自分の力で伊井野さんを探そう。


 カバンを持ち、俺は廊下へ。

 教室を回っていく。

 けれど、一向に見つからない。どこへ行ってしまったんだ?


 三十分ほど歩いても伊井野さんはいなかった。

 先に帰った?

 いやまさか。

 約束を破るような人じゃない。


 ――って、そうだ。俺としたことが忘れていた。スマホで連絡をすればいいんじゃないか!


 メッセージアプリで『伊井野さん、どこ?』と送る。しかし、いつまで経っても既読にならない。


 どうした……? なにがあった……?


 学校に残った生徒も少なくなってきた。

 やっぱり帰っちゃったのかな。


 体育館の方も見てみるか。


 歩いて向かうと“違和感”があった。……む、なんだ。妙に騒がしいな。部活動があるのかもしれないが、そういう雰囲気でもない。



「体育館裏の方か」



 気になって行ってみようとすると、突然後ろから殴られた。



「がはッ!?!?」



 な、なんだ……!

 くそっ…………意識が。




 ――俺はその場に倒れた。




 ハッと目を覚ますと、暗闇の中にいた。俺は確か、背後から殴られて……それで何が起きた?



「起きたようだな、前川」

「だ、誰だ……」

「俺様だよ、俺様!」



 ニヤリと笑う、馬淵の姿があった。



「な、なんでお前がここに! 捕まっているはずだろうが!」

「……そう、そのはずだった。だがなァ、俺は幸運だった。署に連行される道中、仲間が助けてくれたんだよ。パトカーをボコってな!」


 な、なんてことだ……。そんなことが!

 まだ罪を重ねるというのか、この男は。


「で、逆恨みか……」

「ああ、そんなところだ。前川、お前の大切なものを奪ってやる」

「なに……?」


 周囲を見渡すと、闇の中らから仲間の男と……伊井野さん! なんでここに!



「…………っ! 前川くん!」

「伊井野さん、姿が見えないと思ったら捕まっていたのか!」

「うん、ごめんね……。スマホも取り上げられちゃって……」



 そうか、馬淵とその仲間が伊井野さんを連れ去っていたんだ。許せねぇ!!



「ひ、ひひひ……! この伊井野という女はもらった。前川、お前の前で犯してやる」

「馬淵てめぇ!!」



 俺が叫ぶと仲間の男が俺を蹴ってきた。腹に食らい、俺は息が出来なくなる。


 ……ぐっ!


 くそ、くそ、くそぉぉぉ!!



 俺は椅子に座らされ、手足を縛られていて身動きができない。抵抗できない!



「そこで指を咥えてみてろ!!」

「馬淵、やめろ! 伊井野さんに手を出すな!!」

「フハハハ! もう、遅い! この女の制服を脱がしてやるッ!」



 凶悪な表情で伊井野さんの制服を脱がしていく馬淵。次第に下着姿が露わになっていく。伊井野さんは恥ずかしさで赤面し、涙さえ流していた。

 許せねえ、絶対に許せねえ。

 よくも……!


「おい、見ろ。この女すげぇ良い体してやがる!」「馬淵さん、俺たちにも触らせてくださいよ!」「こんなイイ女久しぶりだぜぇ」「もちろん、ゴムなんてナシっすよ」「おいおい、鬼畜かよ~!」



 ワハハと豪快に笑う不良共。

 コイツ等……殺す。



「待て、てめぇら。まずは俺が伊井野を味見するんだからよォ!」



 今度は下着に手をかけていく馬淵。俺は暴れて抵抗するが、不良共が押さえつけてくる。


 なぜ、なんでこんなことに!!

 馬淵の野郎、お前は……お前はこの世界にいて人間じゃない。大人しく刑務所で一生を暮らせ!!


 けど、今の俺に成す術はない……。


 チクショウ……伊井野さんを守ると決めたのに、この有様。


 このままでは…………大切な人をまた寝取られる……。



「やめてくれ……馬淵」

「あぁ? 前川、頼み方ってモンがあるだろうが」

「……馬淵さん、俺が悪かった。頼むから、伊井野さんだけは……助けてくれ」


「分かった。分かったよ、前川」


 馬淵はなごやかな表情で俺を見つめた。


 けれど。


 すぐに悪魔のように笑い、俺の肩を叩く。



「え……」

「前川、伊井野は俺の女にしてやるよォ!!!」



 ビリッと下着をナイフで引き裂く馬淵。その光景に、俺はただただ絶望した。……もうダメだ。おしまいだ。


 山田さんの時のように……なるのか。



「……前川くん。わ、わたし……わたしは平気。なにがあっても君のことが好きって気持ちは変わらないから……だから」



 そんなボロボロ泣きながら言われても――でも、嬉しかった。そうだ、俺も伊井野さんが好きなんだ。だから守りたいと思ったし、必死に守ってきたつもりだった。

 だが、こうなった以上は……もう。


「茶番はここまでだ。前川、ちゃんと見てろよ!!」


 見たくないと俺は視線を外すが、馬淵の仲間達が俺の頭を押さえつけてくる。しかも、目も強制的に開かせてきた。やめてくれ……!!


「…………ッッ」

「よ~~~く見てろよ。この女の処女が喪失される様をなァ!」



 誰か。

 誰か……助けてくれ。



 神でも悪魔でも、なんでもいい!



 この最悪な状況を変えてくれ……頼むから!!



「……」

「やっと折れたようだな、前川。さあ、はじめようか……」



 馬淵がズボンを下ろし、伊井野さんの股を広げていく。その時点で俺は全てが終わったと思った。



 けれど。




「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?」




 馬淵の叫ぶ声がして、視界から消えていた。




 え…………なにが、起きた……んだ?

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