第10話 何度も寝取られていた...現れる新たな脅威
なぜ、ここに妹が……。
「あれぇ、お兄ちゃん。なんでここにいるの~?」
「それはこっちのセリフだ。こんなところに来るんじゃない」
「だって~、麻雀面白いんだもん」
すでに遊んだことがあるような言い方だな。つまり、俺の知らない間に遊びに来ていたわけか。
「陽菜ちゃん、いらっしゃい!」
「今日もよろしくね~」
なぜか俺も巻き込まれ、麻雀をやることに。だから、ルールが分からないってーの!
素人ながら、雰囲気でなんとか最後までやりきった。伊井野さんが隣である程度は教えてくれたし、助かったけどね。
危うく脱衣麻雀になりかけたが、小学生の陽菜がいたから、それは却下となった。あぶないって!
今日はリベリオンさんが大勝で、機嫌よく雀荘を去っていった。
「……ふぅ、疲れた」
「お疲れ様っ」
さすがに時間も遅くなった。
妹をこれ以上、外出させておくとマズイ。
「そろそろ帰るよ、伊井野さん」
「うん、分かった。また明日ね」
玄関まで見送ってくれる伊井野さん。手を振って別れ、俺と陽菜は家へ。
* * *
寒々しい朝を迎え、俺は制服に着替えて家を飛び出た。
学校を目指して歩いていると、突然人影が現れて行く手を阻んだ。こ、こいつは……なぜ。
「前川くん……探したわ」
「山田さん……! どうして!」
「証拠不十分で釈放されたの。あの録音は意味なかったってことね」
そんな馬鹿な。
伊井野さんがスマホで録っていた録音が意味なかった!? 十分な証拠じゃないか。決定的なほどに!
「くそっ……。君はまだ俺にこだわるのか」
「ええ、そうね。どうしても前川くんのことが忘れられないの。体の関係でいいから、もう一度やりなおしましょう」
俺の体に触れてくる山田さん。
「……っ!」
だめだ。俺は回避した。
「……どうして逃げるの」
「分かってるだろ! 俺はもう君とは別れたんだ。山田さんのことなんてもうどうでもいい。視界から……消えてくれ」
「それは無理」
「なんでだよ!」
「愛しているからよ」
「ふざけんなッ」
「そう。やっぱり、伊井野さんがいいんだね」
「そ、それは……」
「分かった。じゃあ、あの女を潰しちゃえばいいんだ」
悪魔のように微笑む山田さん。目の前で宣戦布告され、黙っているわけにはいかない。山田さんを止めねば――!
「やめろ!」
「やめない。今日から嫌がらせしまくってやる」
いきなり走り出す山田さん。まさか、先に学校へ向かう気か!
そうはさせない。
俺は全速力で山田さんを追いかけた。
なんとか追い付いて、俺は山田さんの肩を掴む。
「そんなことをするな。もう他人同士でいてくれ!」
「大丈夫だよ、前川くん。伊井野さんはね、三年の先輩に紹介してあげる。ちょうど、わたしと寝てくれた男の先輩がいるの。その人に頼んでヤってもらう」
「な、なんだって……」
「そうすれば前川くんの気も変わるでしょ?」
ぷっつんと何かが切れ、俺はブチギレそうになった。はじめて女をグーで殴るところだった。けど、さすがに抑えた。
「やめろ!! 伊井野さんは関係ない! 彼女は巻き込むな!」
「あんな女のどこがいいの。ただの麻雀オタクじゃん」
「なんで知っているんだよ」
「同じ教室だもん。そういう話を聞くのよ」
そういうことか。けど、危害を加えるというのなら俺はもう山田さんを完全な敵とみなす。いや、もう敵だ。
「いい加減にしてくれ、山田さん。そんな態度なら、もう警察に通報するしかない」
「すればいいわ。その前に伊井野さんにはヒドイ目に遭ってもらうから」
「お前!」
「じゃあ、こうしましょ。私をセフレにすればいい。それなら、もう今後は伊井野さんに手を出さない」
そこまでして……プライドもなにもあったもんじゃない。
こうなったら警察に通報を――。
スマホを取り出そうとしたら、誰かに奪われてしまった。
「おっと、あぶねえ! 助けに来た、山田」
「やっと来てくれたのね、馬淵先輩」
いつの間にかチャラ男がいた。同じ制服だから、同じ高校か。にしても、人相が悪い。明らかに不良というか、素行が悪そうだ。
「こいつが前川か。ボコってやるよ」
「まって、馬淵先輩。それよりも、伊井野という女子を襲ってちょうだい。きっともうすぐ、この辺りを通ると思うから」
「分かったよ、山田。お前には体を貸して貰った恩がある。族長の俺が女に従うなんてダセェんだが、まあいい。お前の言うことなら聞いてやるさ!」
よりによって族かよ。
こんなのを連れてくるなんて、山田さん……君は本当にヒドイ。そして、俺を欺き……ずっと複数の男と関係をもっていたのか。
そんな多くの男に寝取られていたなんて吐き気がする。
なんであれ、伊井野さんを守らなきゃ。
山田さんと馬淵を無視して、俺は伊井野さんを守るべく道を逆走した!
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