第24話 動き出す者達と鬼父

【Side:馬淵】


 ……ちくしょう。

 ちくしょう……!


 前川の野郎……毎度毎度、運のいい奴だ。邪魔が入りやがって。

 なんであそこで総長が現れるんだ! ふざけんなッ!


 おかげで俺は二度目の逮捕。

 いや、過去の事件を合せれば四度目か。

 けど、そんなことはどうでもいい。


 前に仲間の力を借り、パトカーをボコって逃走した。今回はさすがに無理そうだ。仲間のほとんどが逮捕されちまった。


 今度こそ刑務所行きか……。



 俺は取調室に連行され、警察やら刑事やらから今回のことで詰められた。

 ヤクもやっちまったんだ。


 どうせ終わりだ……そう思って俺は適当に話を進めた。


 そうしている内に、俺は何故か留置所送りにもならず外へ向かっていた。



「……? なんだ、ムショへ連れていくのか?」

「馬淵、お前を釈放する」


「…………は?」


 最初、ポリ公の言っている意味が分からなかった。


 俺が釈放?

 なんで?


 あんな散々やらかしたのに。

 暴行にヤク、詐欺やらギャンブル……数え切れない。


 なのに釈放って……。

 日本はどうかしちまったのか?


 外へ連れ出されると、そこには男がいた。


「どうも馬淵くん。君の話は聞いているよ。……ああ、名乗るのを忘れていたね。私は弁護士の名護なごという者だ。ある方の依頼でね」


「ある方?」


「依頼主はこう言っている。馬淵くん、君の力で前川という男を消して欲しいとね」


「なんだって!?」


「その代わり何度だって自由を与えてくれる。ほら、もう自由だ」



 俺はいつの間にか釈放されていた。

 警察共は納得いかないような表情で俺を睨んでいたが。


 けど、ビックリだ。


 まさかこの俺が無罪放免とはな!


 この弁護士についていけば俺はやりたい放題ってワケかよ!



「その依頼主ってヤツはとんでもない権力者のようだな!」

「ええ。警察に対して強い圧力を掛けられる人物なのです。今回、君は証拠不十分で釈放されました。良かったですね」



 こうなったら、俺は前川に復讐してやる……!

 いや、その前に白竜會を壊滅させる。

 そうすればもう邪魔は入らない。


 フハ……。フハハハハ!!




【Side:山田樹里】


 ……暗闇。

 真っ暗でなにも見えない。

 私はいったい、なにが……起きて。


 目を開けると、ソファの上にいた。


 ……ここは。自分の家だ。


 おかしいな、確か殴られて……気絶して。それからどうなった?



「おはよう、樹里」

「……! な、なんでアンタが!」



 目の前には父がいた。

 普段は議員の仕事で忙しいはずなのに。



「お前がまたトラブルを起こしたと聞いてね。樹里、もういい加減にしなさい」

「……ッ! 触らないでよ、変態!」

「おいおい。父さんに向かってなんて酷い。またお仕置きされたいのか?」


 鷹のように鋭い目つきで私を睨む父。

 スカートの中に手を入れてくる。


「やめて!」

「お前がいけないんだぞ、樹里。お前が母さんに似ているから……」

「そんなの知らない」


 母は物心つく前に蒸発。だから私の記憶にはない。


「まあいい。今日のところはシないでやる」

「……っ」


「それより、お前の友達が私の存在に気づき始めているようだな」

「知らないって」


「嘘はいけないよ、樹里。お前のスカートの中に小型の盗聴器を仕掛けてあるんだからね」



 そんなところに!

 そっか、だからスカートの中に手を突っ込んできたんだ。



「父さんの力では学校を潰すことまでは出来ないし、前川くん……と、言ったかな。彼を消すことも難しい。けどね、ある有能弁護士に依頼して馬淵くんを解放した。あの社会不適合者ゴミなら、どうなっても構わんわけだ」


「まさか!」


「樹里、これはお前の為だ」

「やめて! 前川くんは彼氏なの! 殺すにしても、私の手で殺したい!」


「……そうはいかない」

「なんで! アンタは居眠り国会議員やってればいいじゃない!」


「ッ! このワガママ娘がッ!」



 怒り狂った父が、手をあげてきた。

 私は頬を叩かれてソファに倒れた。



「やめ……いやあああああああああ!!」



 その後、私は全裸にされて――記憶がない。

 また父の人形になっていたんだ。

 また性的暴行を受けた。

 もうこんなのは耐えられない……。


 もういい、いっそ、この手で父を……。

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