第42話 仕事の依頼と新たなる決意

 準備をして外へ。

 指定された蔵屋敷公園へ向かい、リベリオンさんと合流した。


「やあ、リベリオンさん」

「待っていたよ、前川くん。おや、苺ちゃんもいたんだね」


 少し疲れた顔でリベリオンさんは言った。

 なんだかいつもより覇気がないな。


「リベリオンさん、大丈夫?」

「大丈夫だよ、苺ちゃん。とりあえず、話しだ」

「そ、そうだね」


 遊具の椅子に腰かけ、俺は聞いた。


「弟さんは意識を取り戻したんだな。良かった」

「うん。そうなんだけど、でも、記憶に障害が残っているみたいなんだ」


「「え……」」


 詳しく聞くと、重守くんは一部の記憶がないらしい。記憶喪失みたいなものか。


「そりゃ大変だ……」

「まあでも、無事で良かったよ。それより、本題がある」

「うん?」

「実はね……。あ、苺ちゃん。悪いんだけど二人きりにしてくれないかな」


 突然、リベリオンさんはそう言った。

 つまり俺とリベリオンさんの二人きりで話しがあるってわけか。


「う、うん……分かった」


 伊井野さんは、渋々ながらも離れていく。

 あまり一人にはしたくないが、目の届く範囲にいてもらおう。



「――で、話しって?」

「前川くん。君にひとつ言っておきたいことがあってね」

「なんだ、怖いな」



 真剣なまなざしで俺を見つめるリベリオンさん。

 いったい何を言うつもりなんだ?

 身構えていると――。



「一応言っておきたかった」

「……なにを?」


「君のことが好きってことさ」


「――――」



 突然の告白に俺は固まった。


 リベリオンさんが俺に告白!?


 マジでビックリした。


 なんで、どうして……。



「驚かせてすまないね。でも、どうしても言いたかった。きっと遅かっただろうけどね」

「ん……あぁ、そうだな。俺はもう伊井野さんと付き合っている……」


「やっぱりね。二人で来るからそんな気がしていた。あーあ……失恋しちゃったな」



 表情こそ変わっていないが、瞳はどこか虚ろだった。

 まさかリベリオンさんが俺のことを好きだったなんて、思いもしなかった。



「本当にごめん」

「謝る必要はないよ。でも、スッキリしておきたかったんだ」

「どうして?」

「自分は退学しようと思ってね」

「え……またどうして」

「弟をあんな風にした連中が許せないのさ。ブチのめして復讐する。となると学校には迷惑掛けられないってね」



 神妙な表情でリベリオンさんは胸の内を語った。

 そうか、そんなにも弟思いだったんだな。

 俺も重守くんには助けられた。

 まだお礼が出来ていない。


 リベリオンさんにも何度も助けられた。


 今こそ恩を返す時だ。



「退学なんてする必要はない」

「……いや、もう他人を巻き込みたくないんだ」

「大丈夫。俺がなんとかする」

「なんとかするって……無理だよ。ただの学生には不可能だ」

「そうでもないさ」

「……?」


「実は椙崎刑事にスカウトされてね。仕事を手伝うことになったんだ」



 別班のことは伏せ、俺はそういう風に説明した。



「う、うそ……。椙崎刑事が?」

「信じられないなら聞いてみるといい」

「いや、前川くんが嘘をついているとは思えない」

「ありがとう」

「驚いたよ。じゃあ、弟に暴行した犯人をつきとめてくれるのかい?」

「ああ、約束する。俺と椙崎刑事に任せてくれ」


「……まったく。君には驚かされるよ」



 復讐は諦めたのか、リベリオンさんは頬を赤くして期待の眼差しを俺に向けた。そこにはもう鬱屈とした表情はなかった。



「俺に任せろ。犯人はきっと見つける」

「分かった。任せるよ」



 これで決まりだ。

 俺は伊井野さんだけではない、リベリオンさんの為にも……がんばるんだ。



 話はついた。



 リベリオンさんとは別れ、俺は伊井野さんのところへ。



「前川くん、どうだった?」

「話は終わったよ。リベリオンさんから仕事を受けた」

「へえ、どんな?」

「弟さんのことでね。ほら、奇襲事件があったじゃないか」

「そうだったね」

「その犯人を見つける」

「えっ、前川くんが?」

「ああ。伊井野さんには詳しく話す必要があるな」


 俺がやろうとしていること。

 俺が何者になるのか。


 全てを伊井野さんに話す。

 彼女だけにはウソをつきたくないから――。

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