第43話 動き出す者達 初仕事開始

 俺は全てを話した。


「――というわけなんだ」

「そうだったんだ。椙崎さんに誘われたんだね」

「伊井野議員を守る為にも俺はがんばるよ」

「ありがとう、前川くん」


 嬉しそうに抱きついてくる伊井野さん。

 俺も伊井野さんを抱きしめた。



 それから三日後。



 平和に学生生活を過ごし、何事もなく時間は過ぎ去っていった。

 伊井野議員は襲われていない。

 このまま終わるんじゃないかと思った。


 けれど。



【椙崎さんからメッセージがあります】



 お昼になって椙崎さんから連絡が入った。


 なんだろうと画面を覗く俺。



 椙崎:大変だ! 伊井野議員の自宅が爆破された!


 前川:えっ……!?


 椙崎:詳しいことは直接話す。すぐに学校を出て来てくれ


 前川:わ、分かりました。伊井野さんと一緒に向かいます


 椙崎:いや、危険だからね。ひとりで来てくれ


 前川:了解です



 仕方ないか。

 ていうか、爆破って何事だよ……!


 ついに名護元弁護士と馬淵が動き始めたのか?


 とにかく、伊井野さんに事情を話さないと。



「伊井野さん、大変だ」

「どうしたの?」

「議員の家が爆破されたらしい……」

「え…………うそ……」


「詳しい事は分からない。俺と椙崎さんで見てくるから、伊井野さんはここにいて」

「で、でもおじいちゃんが……」

「確かめてくる。だから」

「……ひとりぼっちは嫌だよ」


 涙を零す光景に俺は胸が締め付けられそうになった。でも、巻き込むわけにはいかない。いつでどこで伊井野さんが狙われるか分からないからな。


 リベリオンさんに電話して、こっちへ来てもらった。


「どうしたのさ、前川くん」

「リベリオンさん……本当に同じ学年だったんだ」

「そんなことより緊急だって?」

「ああ、伊井野議員の自宅が爆破されたらしい」

「……! 分かった。苺ちゃんを預かればいいんだね」

「話が早くて助かるよ」


 伊井野さんを任せ、俺は廊下を走った。

 これでいい。

 リベリオンさんなら伊井野さんを守ってくれる。


 俺は急いで学校を飛び出し、椙崎さんと合流を果たした。



 ◆



 学校から走って十分ほど。

 椙崎さんが車でやってきた。



「前川くん、乗ってくれ!」

「分かりました!」



 車に乗り込み、中で詳しいこと聞くとに。


「少し前、伊井野議員の家に小包が届けられた。それを家政婦が開封した瞬間に爆発したそうだ。現在、伊井野議員の自宅は大炎上中。消防隊が消火活動にあたっている」


「そんなことに……議員は無事なんですか?」


「幸いにも議員は離れた倉庫でゴルフをしていた。ヤケドなどケガはしたが、なんとか無事だ」


「よ、良かった。でも、家政婦さんは……」

「残念だが、犠牲者も出ている。私たちは名護と馬淵を追う」

「でもどうやって?」


「このノートパソコンの画面を見てくれ」



 そこは防犯カメラの映像らしきものがいくつも表示されていた。

 その中には馬淵らしき人物も映っていた。


 顔も隠さず堂々と何かを郵便局へ運んでいる。



「コイツは馬淵……」

「これは一昨日の映像だ。馬淵は爆弾の入った箱を郵送したんだ」

「なんですって!」


「ちなみにここは隣町。つまり、彼は隣町に潜伏している可能性が高い」

「場所が分かったんですね?」

「そんなところだ。今から捕まえにいく。前川くん、君の力も借りたい」

「仕事として……ですね?」

「ああ、もちろんだ」



 なら、やるべき事は決まっている。

 名護と馬淵を捕まえて犯罪を止めるんだ。

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