第32話 寝取られるよう仕向けられていた……
この状況を打破しないと。
しかし、ひとりでどうやって……。
ええい、なんでもいい。
時間を稼ぎつつ、撤退だ。
「山田議員、このことが外部に漏れればアンタは終わりだ」
「そうかもな。だが、ここから出られると思わないことだよ、前川くん。君には罰を受けてもらう」
「なんだって……?」
「娘をこんなボロボロにした責任を取ってもらう」
「ふざけるな。こんなにしたのはアンタだろう!」
以前、山田さんが言っていたことは全て本当だった。実の父親から酷い目に遭っていると。
だからって同情はできないけど。
身構えていると山田議員は声高らかに笑った。
「ハハハッ! 前川くん、全て君のせいさ。君が余計なことをしなければ娘は元気だったし、私の為にずっと体を売り続ける人生だった。だが、娘は君を好きになってしまったようだ。穢れてしまったんだ……」
残念そうに溜息を漏らす山田議員。
コイツ、娘をオモチャか何かとしか思っていないんだ。
最低だ……。
「恋愛くらいするだろ!」
「だから私が樹里のはじめてを奪ったし、お前から何度も寝取られるよう仕向けてやったのさ」
「ま、まさか……!」
「そうさ、津田も馬淵もなにもかも、私の差し金というわけだよ。世の中金さえあれば思い通りになる。それが真理だと思わないかね」
下衆が!!
こんなヤツがいるから日本はよくならないんだ!!
「アホか! 国会議員が言うセリフじゃねぇだろ!」
「やれやれ、前川くん。君なら少しは分かってくれると思ったんだがね……。残念だよ」
「勝手に残念がってろ」
「そうか。なら、君には痛い目に遭ってもらおう」
手を鳴らす山田議員。
すると桑田が動き出し、こちらへ向かってくる。
「すまねぇな、前川」
「桑田、お前……なにをする気だ!」
「今、俺の手にはこの“注射器”がある。これが何か分かるか、前川」
「お前……それってよくテレビの警察特集で出てくるアレか」
「そうだ。これは馬淵から盗み出したホンモノの薬。キメれば、しばらくは夢の世界……ハッピーになれるぜえ?」
どいつもこいつも狂ってやがる!!
桑田がまさか裏切者だとは思いもしなかったけど。
「もういい、桑田。お前から倒す!!」
「倒すぅ!? 寝惚けたこと言ってんじゃねぇぞ、この雑魚野郎が!」
怒り狂って向かってくる桑田。
確かに、動きは常人を超えている。
けれど、あれから俺もずいぶんと己の肉体を鍛えた。
桑田の拳が向かってくるが、俺は回避。
「やっぱり、お前は弱いな」
「しまっ……! なんてな」
「なに!?」
今度は足蹴りしてくる桑田。
それも回避して取っ組み合う形になった。
「前川……お前のことは嫌いじゃなかったぜ」
「今となってはもう関係ない。桑田、お前をぶっ潰す」
「そうかよ。じゃあ、くたばれやッ!」
再び蹴りを入れてこようとする桑田だが、俺はその前に頭突きで反撃。見事に命中した。
「このォ!!」
俺は昔から石頭だった。
そのことをずっと忘れていた。
この唯一の特性を活かし、ついにはじめて敵を倒した。
「がはあぁッ!?」
白目をむいてぶっ倒れる桑田。
地面にグシャリと落ち、気絶した。
その光景に山田議員は舌打ちした。
「チッ……使えない雑魚が」
「今度はあんただ山田議員!」
「……まあいい。前川くん、君と雑魚との余興は楽しかった。でも、ここまでだ」
懐から銃を取り出す山田議員。
コイツ、議員のクセに!!
なんてヤツだ……。やはり、この男を潰さなければ!!
「それで俺を殺すのか」
「いいや。前川くん、君には娘を殺してもらう」
「なんだと!?」
「私が殺す……というのは心が痛む。ほら、これでも良心がある。両親だけにね」
「うるせぇよ!」
コイツ、最初からそのつもりで……!
その後は俺ってわけだ。
けど、そうはいかない。
絶対にこの馬鹿野郎を止めてみせる。
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