第21話 明かされる真実……寝取られた理由と鬼父
「教えてくれ、リベリオンさん」
「分かった。じゃあ、警察の対応が終わったら教えて。自分は先に雀荘の中へ」
そう言ってリベリオンさんは足早に雀荘へ。
ああ、そうか。
警察が苦手なんだな。
さて、そうなると山田さんの件を直ぐに片付けよう。
「お巡りさん、あとはお願いします」
「では、任意同行で連れていきます。……といっても、この子は気絶しているので一度病院へ連れていく必要がありそうですが」
困った顔をしてお巡りさんは、後からやってきた女性警官と共に山田さんを運んで行った。
とりあえず、今回は仕方ない。
まずは情報収集して対策を練る。
捕まえられないのなら、捕まえられるようにする。
「いったん戻ろう、伊井野さん」
「そうだね。リベリオンさんの話も気になるし」
中へ戻り、カギをきちんと閉めた。
今日はもう居留守だ。
リビングへ。
ソファにはリベリオンさんが座って待っていた。
「お待たせ」
「さっそく話そうか、あの山田って子について」
「お願いします」
俺と伊井野さんは床に座って、リベリオンさんの話に耳を傾けた。
その驚愕の内容に頭を抱えた。
……なんだって?
そりゃないだろ……!
◆ ◆ ◆
【Side:山田樹里】
「樹里、お前は可愛い。母さんの若い頃に似て美人だ」
今日もまた、私は実の父親に襲われていた。
クズ親だ。
さらにタチの悪いことに他人にも体を売れという。
稼いだ金を全て寄越せという。
鬼畜。本当に最悪……。
子は親を選べない。
こうなると逃げ場なんてなかった。
「……じゃ、パパ活と立ちんぼ行ってくる」
「頼んだよ、樹里。お前の体だけが頼りだ。おかげで生活が豊かになっているのだからね」
見送る言葉がそれとは最低だ。
いつか殺してやりたいと思った。
でも、頼れるのが父しかいなかった。
家を出てトボトボと歩いていると、公園の近くで同級生を見かけた。
……あれは。
前川くん。
子猫を拾っていた。
そんな微笑ましい光景に何故か胸を打たれた。
彼はきっと優しい人なんだ。
そんな前川くんが好きになっていた。
あんな普通の男の子と付き合えたら、きっと人生が変われるはず。
だから自分を変えたくて告白してみた。
きっと返事はオッケーに違いない。
確信はあった。
自分の容姿とか人気に自信があったから。
でも、裏の姿を知ったらきっと彼は失望するだろう。
それでも。
「よろしくね、山田さん」
「うん、嬉しい。いっぱい楽しいことしようね」
普通の高校生活とお付き合いがしたかった。だから、彼とはなるべく体の関係を避けた。それが青春だと思っていたから。
けれど、私は体で稼がなきゃならない。
あの父親の為に。
国会議員である……
父は大のギャンブル好き。
パチンコ、パチスロ、競馬、競艇……最近は怪しい賭けもしているとか。
膨れ上がる借金返済の為に、私は身を削る。
そうして一年がんばってきた。
おかげで前川くんと一緒に学年も上がれたし、幸せだった。
そんな幸せも一年で終わりを告げた。
津田先輩との関係を知られてしまった。
前川くんとの幸せな日々は一瞬で終わってしまったんだ……。
以降彼は私を拒絶する。
なぜ、どうして分かってくれないの!
ワケが分からなかった。
私はただ……前川くんと……。
彼を……。
あれ。
なんで隣に伊井野さんがいるの……?
あの女はなによ。
二番目の存在がなぜ、幸せそうな顔してるの!
許せない、許せない、許せない、許せない、許せない……!
もう殺すしかない。
白竜會の馬淵と体の関係を煽って、私は彼を前川くんに差し向けた。結果は、失敗に終わった。
もうダメだ。
直接、私が手を下すしかない。
……きっと大丈夫。
国会議員である父が勝手に事件をもみ消してくれる。今までも何度も何度も、私を助けてくれた。
だって、父は私が捕まったら困るものね。
きっといろいろバレちゃうから。
不正な政治資金のことだって。
でも、もうそんなことはどうでもいい。
前川くんを殺せるのなら、もうこの世に未練はない。だから――。
◆ ◆ ◆
「――というわけさ」
リベリオンさんは、山田さんのことを詳しく教えてくれた。俺の知らないことまでいろいろ知っていた。
どうやら、馬淵が自慢気に言いふらしていたようだ。
それが総長である重守くんの耳にも入って、リベリオンさんにも伝わったと。
全てが繋がった。
なぜ山田さんが他の男と寝ていたのか。
なぜ山田さんが捕まらないのか。
すべては父親のせいじゃないか――!
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