第22話 同じクラスの美人ギャル現る
「……なんてことだ」
俺は頭痛がして頭を押さえた。
山田さんの父親が国会議員だったとは。
なるほどね、権力があったわけだ。
ていうか、酷過ぎるだろ!
父親が実の娘に手を出すとかさ。
「ねえ、リベリオンさん……それ、本当なの?」
未だに信じられないという表情で伊井野さんは、リベリオンさんにもう一度確認した。
「間違いないよ。本人が言っていた情報がそのまま流れてきたわけだから」
「そんな……」
全て真実なのだろう。
だって、山田さんは何度も警察から解放されているし。
それに、体を売っている理由もそれとなく俺に言ってきた。あれは本当だったんだ。
……だからって同情はできないけど。
俺は散々な目に遭ってきた。
今更もとには戻れない。
「とにかく、この雀荘に留まるのは得策ではなさそうかな」
「前川くん、でも……ここはわたしの雀荘……」
「気持ちは分かるけど、相手が悪すぎる。あの無敵の人状態の山田さんと、親が国会議員ではやりたい放題だ。でも、だからってやられっぱなしってワケにもいかない」
「どうするの?」
「さっき、リベリオンさんの話を聞いて違和感を感じた」
「違和感って……」
「うん、例えば“怪しい賭け”ってところ。これがもし、闇カジノだとか賭け麻雀なら犯罪だ。証拠を掴めればいくら国会議員でも逮捕されるだろ」
「そっか……!」
俺はリベリオンさんに視線を送る。
彼女は「なるほどね」と妙に納得していた。
「どう思う? リベリオンさん」
「可能性はあるだろうね。調べて見る価値はあるか……」
「よし、決まりだな」
「決まりだなって、どうやって調べるのさ。相手は国会議員だよ?」
確かに……そうだよな。
俺等みたいな学生とは違い、多忙だろうし……国会にも出ているはず。会うチャンスなんて中々ない。
……いや、まてよ。
「分かった。俺がおとりになればいいだろ」
そう提案すると伊井野さんが声を荒げた。
「おとりって、そんなの無茶だよ! 今度こそ刺されちゃうよ?」
「落ち着いて伊井野さん。これは俺たちの平和を取り戻すための作戦だ。山田さんを止めるためだ。一時的に仲良くなって親の情報を引き出す。で、合法的に逮捕させて山田さんも警察送りにする」
「それは反対。前川くんと山田さんが仲良くしているところとか見たくないし……。それに、前川くん自信も辛いでしょ」
反論できない。
その通りだ……。
でも、伊井野さんの為なら、俺は……。
覚悟を決めていると、リベリオンさんが手を挙げた。
「ちょっと待った」
「な、なんでしょう?」
「前川くん、そのプランだときっと刺されて死んじゃうよ」
「え……」
「だってね、さっきの山田の目は本気だった。君を殺したくて殺したくてたまらない目をしていたんだよ。自分には分かる。多くの殺気を感じてきたから」
族長を弟に持ち、なにか伝説も持っているらしいリベリオンさんが言うのだから、恐らくそうなのだろう。
少しのミスが命取りになる可能性が高い。
「でも、他に方法なんて……」
「あるよ」
「……あるんですか?」
「白竜會を使う」
「は、白竜會を……? でも、族ですよね。彼等に探偵とか出来るんです?」
「いや、探偵はできない。でもね、裏の世界のことなら詳しい。もしかしたら、山田議員のことにも辿り着けるかもしれない」
そうか! こう言ってはなんだが、ワルにはワルにしか分からない世界がある。餅は餅屋ってな。
「詳しいヤツがいるんですね」
「いるよ。ちょっと時間は貰うけど、聞いてみる」
「分かりました。そのことはリベリオンさんに任せます。でも、俺たちは俺たちで動きますよ」
「心得た。じゃ、さっそく自分は行くよ」
立ち上がってリベリオンさんは雀荘を出ていく。こうなったら、白竜會の力も借りるしかない。
「前川くん、わたしたちはどうするの?」
「ひとまず、出来ることをしよう。今日は休みだし」
「そうだね。山田議員のことをネットとかで調べてみよっか」
「ああ」
俺と伊井野さんは、そのいままリビングでスマホとノートパソコンを使って、山田議員のことを調べまくった。
ウィキだとかネット記事がたくさんあった。
いろいろ分かってきた。
年齢は四十七歳と若い。
かなり早い段階で政界入りして強い権力を持っていたらしい。
けど、具体的な仕事はほとんどないな。
眠っていることが多く、それを指摘されることが多い。動画投稿サイトにも、その様子が投稿されていた。
しかも、若手議員に詰められている。
そのせいか不満気に若手議員を睨んでは嫌味でネチネチと反論していた。山田議員のお仲間も擁護してる。
眠っている方が悪いのにな。
でも、若手議員も負けちゃいない。
必死に指摘していた。
政治資金についても何か突っ込まれているようだが、知らぬ存ぜぬ。……怪しいな。
「なんだか怖い人だね」
「そうだな、伊井野さん。まともじゃないな。こんなのに税金が使われていると思うと……。でも、この若手議員さんは応援したくなるね。ハッキリと物事を言うし、そのせいかバズってるよね」
「うん、まるでドラマの主人公みたい」
どうやら若手議員さんは、相手が誰であろうと臆することなく物事をハッキリ言う有名な人らしい。動画投稿サイトに切り抜きだとかショート動画があふれていた。
……まてよ、この人に話を聞く手もあるかもしれない。
そんな中、雀荘に響くチャイム。誰か来客か。
「山田さんじゃないだろうな」
「そんなまさか」
さすがに違うだろうけど、リベリオンさんが戻ってきたのかな。
向かってみると、そこには知らない誰かが立っていた。
誰だ……?
扉を開けると、そには少女が立っていた。可愛い金髪ギャルだった。巨乳でスタイル抜群だ。ネイルとか輝いていてまぶしいな
なんだろう、俺とは明らかに接点なさそうな女子なんだけど。
「こんにちは、前川くん」
「え……なんで俺の名前を」
「知ってるよ。同じクラスだし。ていうか、リベリオンに頼まれてね」
「同じクラスで、リベリオンさんに頼まれた!?」
「そ。手を貸して欲しいんでしょ」
そっか、リベリオンさんは早くも手を打ってくれたんだ! その第一号が、このギャルってわけか。つまり、白竜會のメンバーらしい。
まさかのギャルで同じクラスとは!
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