第35話 完全勝利と告白とキス

 今度こそ山田議員は逮捕された。

 いや、元議員・・・か。


 警察のお偉いさんも、こうなっては山田元議員を逮捕するしかなくなった。



「……くそう。くそう……ちくしょう」



 涙をボロボロ流し、悔しそうにうなだれる山田元議員は強制連行されていった。今度こそ彼は終わった。



 最後まで見届け、俺は伊井野議員に礼を言った。



「ありがとうございました」

「構わん。娘の頼みだったからな。じゃあ、あとは頼むぞ」



 満足したのか伊井野議員は去っていく。

 伊井野さんには助けられたな。



「椙崎刑事もいろいろ助かりました」

「いいんだ。これでようやく闇が暴かれた。これは私の使命でもあった」

「これで本当に終わったんですよね」

「もちろんだ。前川くん、君のお手柄でもある」

「そんな……俺なんか」

「本当さ。誇っていい」


 誇れるかどうかは別として、そうだな。少なくともこれでもう命を狙われる心配はなくなった。


「ありがとうございます」

「ああ、そうそう。名護弁護士の件はこっちで片付けておく。あとは任せてくれ」


 そう、名護弁護士は行方不明だ。

 警察が追ってはいるようだが……。

 椙崎刑事が事件を担当してくれるようだし、きっと捕まるさ。



 ◆



 俺は雀荘へ向かった。

 ようやくここへ帰ってこれた。


 スマホで直ぐに電話すると、伊井野さんがアパートの中から飛び出てきた。



「前川くん! 帰ってきてくれたんだね」

「戻ってきたよ、伊井野さん」



 二階から降りてくる伊井野さんは、俺の方へ真っ直ぐ走ってくる。

 泣きながらも俺に抱きついてきた。



「良かった……無事で」

「もう大丈夫だ。山田元議員は逮捕された」

「やったんだね」

「椙崎刑事が協力してくれてね。それと伊井野さんのおじいちゃん。まさか議員だったなんて」


「言わなくてごめんね。隠すつもりはなかったんだけど」

「おかげで助かったよ」

「うん」



 伊井野さんの機転によって俺は救われた。

 それは事実だ。


 だから俺は……。



「伊井野さん……俺は君が好きだ」

「わたしもだよ、前川くん」



 ようやく言えた。

 ずっとずっと言いたかった。


 伊井野さんの気持ちも同じで良かった。


 手を繋ぎ、雀荘へ。


 もう俺たちを邪魔する者はいない。


 部屋へ向かい、俺は改めて伊井野さんを抱きしめた。


 そして、人生ではじめてのキスをした。



「……好きだよ、伊井野さん」

「うん」



 ゆっくりと丁寧に。唇と唇を重ね合わせるだけのキスを。



「この先も……したい」

「いいよ。でも、わたし……経験ないから」

「俺もだよ」

「えっ、そうなんだ。山田さんとは……」

「残念ながらキスもしなかった」

「そうなんだ。良かった」

「ああ、ちょっと後悔してるけど今となっては伊井野さんが初めての相手でよかった」

「わたしも」


 伊井野さんは耳まで赤くしながらも、ソファに腰かけた。

 俺は伊井野さんの服を脱がしていく。


 見えてくる大胆な下着。


 思わず興奮した。



「こ、こんなえっちなのつけてるんだ」

「ずっと待ってたから……」



 俺の為に!

 なんて嬉しい。


 なら迷う必要はない。俺は伊井野さんが欲しい。


 だから。

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