第36話 緊急事態!! 緊急連絡!!
あとは下着だけ。
この時点でも俺はどうかなりそうだった。
心臓がバクバクと鳴り響き、今にも壊れそうだ。
「綺麗だ……伊井野さん」
「は、恥ずかしいな……」
腕で胸を隠す伊井野さん。
上はなにもなくなった。
あとは下だけ。
俺はそこへ手を伸ばしていく。
あと少し……。
あと少しで。
「お姉ちゃん、遊びに来たよー」
!?
この声は陽菜!
まずい……!!
ていうかカギ開いていたのかよ!
仕方なく俺はソファの後ろに身を隠した。
「い、いらっしゃい……陽菜ちゃん」
「あれぇ、お姉ちゃん。なんでハダカなの~?」
「ちょ、ちょっと着替えていたの」
「そうなんだ。お兄ちゃんはいるの?」
「えっ……」
「だって玄関に靴があったから」
し、しまった!
靴を隠す余裕なんてなかった。
陽菜は当然、俺の存在を疑う。
まずいぞ……。
この状況を小学生の妹にどう説明すればいいんだ。
そんな中、更なる刺客――いや、麻雀仲間が現れてしまった。
「きたよー、苺ちゃん」
リベリオンさんだ。
やべぇ……一番来たら困る人が現れてしまった。
まさに絶望的状況だ。
ソファに身を隠すのも限界だぞ。
「リ、リベリオンさん……こんにちは」
「どうも。……って、なんでハダカ?」
「服を着るところだったの」
「そうなんだ。自分はてっきり前川くんと……。いや、小学生の前で言うことじゃなかったな」
さすがのリベリオンさんも自重した。
だが、陽菜は興味津々だった。
「ねえ、リベリオンお姉ちゃん。どういうこと~?」
「楽しいことさ」
「へえ! ずるいーい」
ずるくなんかありませんっ!
なんてツッコんでいる場合ではないな。
このままでは気まずすぎる。
なにか良い手はないものか。
作戦を考えていると、リベリオンさんが提案した。
「苺ちゃん、ちょっと出かけよっか」
「う、うん」
なんと……!
リベリオンさん、もしかして俺の状況を察してくれたのか?
だとしたら、ありがたすぎるっていうか。
でも、バレバレなんだな……。
けど、おかげで陽菜に見られることはなかった。
「え、でもお兄ちゃんは?」
って、やっぱりダメか。
くそっ、陽菜め!
「前川くんは……そう、お腹が痛くてトイレにいるの。多分、一時間は出てこれないかも」
「そうなんだ!」
ナイス、伊井野さん!
なんとか誤魔化せたな。
しかし、一時間は言い過ぎな気が。いや、助かったからいっか。
それから、伊井野さんたちは出掛けていった。
……ふぅ。
って、安心している場合ではない。
一応トイレにこもっておくか。
◆
三十分後、伊井野さんが雀荘に戻ってきた。意外と早かったな。
陽菜とリベリオンさんの姿はなかった。
「おかえり、伊井野さん」
「ただいま。待たせてごめんね」
「いや、いいよ。一時間掛からず戻ってくれて良かったけど。それより二人は?」
「陽菜ちゃんとリベリオンさんは、二人で遊びに行ったよ。わたしはなんとか抜け出せた」
「そりゃ良かった。ずっとトイレにいるのも疲れた」
「本当にごめんね。……続き、する?」
伊井野さんは照れながら言った。
それは嬉しすぎる。
今度こそカギを閉めて伊井野さんとゆっくりとイチャイチャしたい。
玄関を閉め、CLOSEDにしておいた。
これでもう邪魔が入る心配はない。
もう一度、あのソファへ向かい……伊井野さんを寝かせた。
準備は万端だ。
あとは服を――『ピコッ』――っと。
そうそう、ピコッと。
ん?
スマホが鳴った。
……誰だよ。
いや、無視だ。無視。
今は大事な時なんだから。
しかし、通知はすぐに電話に変わった。
ブルブルと震えるスマホ。しつこいな。
仕方なく俺は画面を覗く。
そこには【椙崎刑事】の名前が……。
え、なんで!?
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