第45話 モテ期到来!? 学生生活がバラ色になっていく

 平和な日常、学校生活。

 全てが元通りとはいかないが、それなりに静かになった。

 あれからもう脅威が現れることもない。


 俺と苺の仲を引き裂こうという者も現れなくなった。


 妹の陽菜やリベリオンさんは、相変わらず雀荘に集まってくる。みんなでワイワイと麻雀を打ち、明け暮れる毎日。


 こんな幸せがやってくるなんて思いもしなかった。


 ずっとこのままでいい。

 ずっと……。



【半年後】



 苺の雀荘でゆっくりしていると『ピンポーン』とチャイムが鳴った。

 今日は苺がリベリオンさんと出掛けているため、俺しかいない。

 自然と俺が玄関に出ることに。


 向かって、適当に扉を開けた。


 すると、そこには見知らぬ女性が立っていた。スーツ姿にグラサンとか、なんか怪しいぞこの人。



「……前川さんですね」

「誰ですか?」


「別班と言えば分かりますか」

「……!」


「椙崎にあなたのことを聞かされていました」

「え……椙崎さんが?」

「ええ。彼は私の恋人であり、家族だった。あなたに意志を残し去っていた……。だから、迎えに来たのです」



 そうか、そうだったんだ。

 この人は椙崎さんの……。

 そうと分かれば俺は話を聞くことにした。



「もちろん、別班には入ります。それが俺の責任だと思いますから」

「では、さっそく」

「でも……でもまだ保留にしてください」

「なぜ」

「せめて苺……俺の彼女なんですけど、卒業まで一緒にいてあげたいんです」

「なるほど。あなたにも大切な人がいるのですね。分かりました。それまでは待ちましょう。卒業したら、この番号にお掛けください」


 番号だけ書かれた名刺を貰った。

 これに掛ければいつでも別班に入れてもらえるわけか。


 少しして女性は去っていった。


 卒業したら連絡をしよう。

 今はこれでいい。



 ◆



 寂しいことに学校生活も残りわずかだ。

 残りを全力で苺と共に過ごす。


 授業が終わって直ぐに俺は女子から話しかけられていた。


「ねえ、前川くん」

「なんだい、池澤さん」


 池澤さんは、同じクラスの女子。

 ちょっとボーイッシュな感じで、低身長。小柄な美少女。明るくてクラスの人気者。

 なぜか最近よく俺に話しかけてくる。

 というか、ここ半年はよく女子が俺に話しかけてくるようになった。


 あの“事件”が解決されてからだ。


 どうやら俺の活躍したという噂が流れているようで、ちょっとした伝説になっていた。

 どんな形で広まっているのか定かではないが。



「今日予定とか空いてないかな」

「予定は残念だけど……」

「そうなんだ。いつも忙しいんだね」


「すまない」


「もしかして、伊井野さんと付き合ってるの?」

「そ、それは……」



 俺と苺の関係は安全も考えて内緒にしていた。だから、周知にはなっていなかった。このまま隠し通すのは難しいか――。

 いや、このままの方がいい。


「仲が良いとは思ってたけど、まさか」

「そういう仲ではないよ」

「そうなんだ。じゃあ、チャンスあるよね」


 池澤さんは、大胆にも俺の手を握ってきた。

 まさか、俺に好意を?


 嬉しいけど、こんなところを苺に見られたらマズイ。



「すまない。俺はもう行かないと」

「えっ! どこか用事?」

「ちょっと担任に呼ばれていてね」

「そっか。また話そうね!」



 池澤さんと別れ、俺は廊下へ。

 教室を飛び出ると偶然にも苺が現れた。

 あっぶね、あと少し遅かったら見られていたな。



「あ、前川くん」



 さすがに学校内では苗字で呼ぶ苺。

 俺も周囲に悟られないよう、昔の呼び方をする。



「伊井野さん、こっちきて」

「え……でも」

「いいからいいから」



 とにかく教室から離れないと!

 池澤さんだけでなく、他の女子からも話しかけられてしまう。モテるのがこんなに辛い日が来ようとは思いもしなかった……!


 嬉しいような悲しいような。


 でも、苺との時間が一番だから、俺は教室を去る。

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