コボルト老夫婦のVR日誌
読書好きのシマリス
第1章:始めました
第1話・キャラクタークリエイト
私の名前は田中渡。ただの農家だった男だ。
だったというのは、ついに腰をやってしまい重労働できず、農家を辞めた。息子である長男に託すことにした。
息子だがよくできた子に育ち、孫の顔を見せてくれた。
ばあさんと二人で過ごすのだが、正直覇気はないな。農家だった頃の癖で早寝早起きは変えられず、趣味らしい趣味も無かった。
趣味を見つけるか、そう思い色々調べたが腰がな。またいつ爆発するか分からない爆弾を抱えた状態だと、大抵の趣味はダメだろう。
そう考えていると、ばあさんはこれはどうですか?と尋ねてきた。VRMMOというゲームである。
VRはさすがに分かるし、MMOも調べればわかった。ようはゲームの世界でプレイヤー同士で遊ぶものだ。
「こんな時代になったんだな」
「このゲーム、農業もできるようですし、農家になればいかがですか?」
それは良い、ゲーム世界で農家になるか。息子にも話したが良いなと言って、賛成してくれた。購入方法などを調べて、良いゲームを持ってきてくれた。
ヘルメットのようなそれと、良い感じの椅子を買い揃え、軽く設定を教えてくれた。さすがに機械音痴というわけではないが、最近のは進んでるなとは感心したな。
「ばあさん準備は良いか?」
「ええ、楽しみですね」
妻もやることにした。妻も良い趣味が無いからな。あるとしたら洋服を縫うことだが、やはり流行りの服が良いときもあるからね。ぬいぐるみやあみぐるみは喜ばれるんだが、服は良い布が無いとねと抑えている。
これでゲームの方は少しばかりお金もかけた。もしかしたら孫もするかもしれないと聞いて、私達はうまい野菜を育てようと思い、最新作のVRゲーム『フロンティアクラフトワールド』を始めようと思う。
◇◆◇◆◇
ゲームの世界に入ると天使が出迎えてくれた。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ、フロンティアクラフトワールドの世界へようこそおいでいただきました」
プレイヤーは未発達の世界に異世界の住人が、世界神から身体をもらい、活動する内容である。モンスターと戦うのも良し、生産して道具作りを極めても良し、孫が気になるのはテイマーになって、モンスターと遊びたいという内容だった。
まずは冒険者と開拓者を選択する。冒険者だと戦闘を楽しみ、世界を冒険する。開拓者だと、未開の土地を開拓する。選ぶのはもちろん、開拓者だ。
「まずは名前だが、シルバでどうだ? 問題ありませんか?」
「シルバですね………はい、問題ありません」
老人だからな、シルバというのは安直か?
まあいい。次にアバターである見た目だが、現実の情報を前もってスキャンしたから、私自身が出てくる。爺さんだからかぶらないから、このままでもいいが。
「種族はどういったのがいいでしょうか?」
「おっと、人間以外にもいるのか」
エルフにドワーフ、犬と猫の獣人。兎耳の人間が現れる。
妻と決めていた種族は、あったあった。
「このコボルトと言うのを教えてください」
「はい。コボルトは二足歩行ができる犬の種族で、人類に入ります。ケットシーのように旅をしながら暮らし、なにかを作りながら生計を立てています」
なるほど、種族スキルというもので【器用な手】があり、物作りがドワーフよりも多芸で得意らしい。こいつにするか。子供受けして可愛いしな、老人でも。
念のために少し体を動かした。視界はやや下になり、動かしづらかったが、慣れればそういうものだと動かせるようになる。
見た目は灰色の犬が服を着て二足歩行している。ファンタジーらしいし、このままでいいか。
次はジョブとサブを選ぶ。ここは農家を選ばないと、課金特典が選べないからジョブは農家だ。
サブはどうするか、なにか色々作ったりしたいからな。
錬金術師というのがあった。薬師、鍛冶師、従魔使い、魔法使いの補助が手に入るが、本業からすれば微々たるもの。
攻略サイトでも選ぶのなら特化にした方が良いという話だが、私には関係ないだろう。主な話は冒険者目線だったし。
「次にスキルですね」
初期で選べるスキルは七つ。まずはジョブとサブで手に入るスキルで【農業スキル】と【錬金術スキル】が手に入っている。私は【鑑定スキル】と【異世界言語理解スキル】、【剣術スキル】、【生活魔法スキル】。最後に【従魔術スキル】を選ぶ。
言語はおすすめになったから一つ、生活魔法は簡単な魔法を習得するらしい。最低限の働きができる。
剣術は得意だぞ。昔はこれで悪さしたもんさ。
後は孫にアドバイスできるよう、テイマーのスキルを持っておきたかった。
課金システムである。3万ほど課金できるが、そこまではしない。
まずこの状態でスタートしてもらえるのは、初回スタート特典の、ランダムスキルチケット×5枚。これは五つ、ランダムに下位スキルを習得できる。
農場跡地。開拓者になると、スタートする町から牧場なり、畑なりもらえる。大きさはそこそこだし、拡大できるから、畑の心配はしなくていい。
私はそれに納屋と畑を3マス、1マス畳一つかを追加。後は錬金術を使えるスペースと道具。農業は無いのは中で買えということだろう。
ブラッドスキルというのもある。レアなスキルがあるとの噂だが、これも選んでしまおう。
さすがにこれ以上の課金はやめておき、初回特典のランダムスキルチケット×5枚を受け取り、私はこれでゲームを始める。
「スタート地点は北のスタート地点でお願いします」
「はい。では………これからよろしくお願いします」
私が天使にそう言うと、一瞬驚いた顔をされたが、すぐに微笑み、元気いっぱいにはいと返事を受けた。
私はこうして、ゲームの世界へと足を踏み出した。
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