第32話・王様からの報酬

 六日目、お城にお呼ばれされている。そのため、必要最低限良さげな恰好になる。娘達は可愛くコーディネイトされていた。


 どうも王との謁見イベントは公式で動画にするらしく、断りがついているため、これからPRなどに使われる動画撮影か。そう思いながら、シルバとして参加する。


 一緒に向かうプレイヤーは五組のパーティだった。各場所のボスモンスターを倒したプレイヤーパーティらしい。はて、我々はなぜお呼ばれされたんだろう?


 こうして奥に進み、コボルト王フゴウとの謁見である。王妃様もコボルトで、お姫様はケットシー。少し複雑な家庭かな?


 それと麒麟さんがいる。彼女はラフな態度で椅子に座り紅茶を優雅に飲んでいた。


「まずは五組の冒険者パーティ。リーダークララとリーダー春雨、それにリーダーリダに、リーダーパン、最後にリーダー大将軍。此度は遺跡の暴走を止めていただきありがとうございます」


 五組のリーダーの名前を言って、褒めたたえる王様。報酬としてアイテムかお金、そして称号をくれるらしい。称号は獣国の客人。獣国に来る際、通行料などがタダになるらしい。それは嬉しいね。


 後は各種ボスに対応した称号を渡され、深々とお辞儀している。


「次に、コボルトシルバ並び、妻の若葉へ」


「はい」


「はい」


「まずはそなたらのおかげで、我が国に新たな産業が生まれた。スパイスという文化を教えていただきありがとう。外の国にも受けが良く、これから量産する。一般販売も可能にするつもりだ」


 ここでアナウンスとして、料理店などで専門スパイス屋が出来上がり、店を展開するアナウンスが流れる。これにはプレイヤーはおおと反応する。


「それと共に、王子を助けていただき、ありがとうございます」


「王子?」


「実子の王子が私達にはいてね。騎士になると言っていたが、謎の発作があり、苦しんでいたんだ」


「発作? まさか」


「鉄アレルギーというやつだ。こちらで確認したところ、鉄製品はもちろん、メタル系の装備だとかゆみが酷く、呼吸すらできなくなっていた。確認で鎧を脱ぎ、回復させてから確かめたところ、神獣様からもそれだろうと言われた」


「まさか西の力であんなことになるとは、西のに頼んで、金の加護を与えたものでようやく騎士として、王族として活動できる」


 麒麟様がそう付け加え、王妃並びお姫様のケットシーが頭を下げる。


「それはよかったです」


「ここまでされて、報酬が無しでは国の威信に関わる。報酬として五組のパーティと同じ、客人の称号と、巨大な畑を一つ渡したい。いかがだろうか?」


「畑ですか?」


「うむ。手が足りぬというのも問題ない。米なる物を始め、そなたが発見した品物を作りたいという若者が多くてのう。従業員として働かせてはくれないか? 金はこちらで出す」


「そうですか、分かりました」


「それと、そなたにはゴーレムがいる。大地の力を持つな。土魔法の使い手である、各パーティの者も前へ。春雨殿は特例で、神獣麒麟より加護が与えられる」


「うむ、快く我が力を使うと良い」


 そう言って、光が各プレイヤーとダイチに注がれる。称号と共にスキル、大地覚醒というスキルを付与された。


「「ありがとうございます」」


「それと、ここからは麒麟様のお言葉です」


「それでは、シルバ、若葉。マテリアルの加護を授かり、若葉に至ってはマテリアルと友誼を結ぶ者よ。四神柱神獣の五柱の一つ、麒麟より言葉だ」


「はい」


「そなたらに簡易の神殿を作る許可を出す。四神柱神獣並び、概念神族達の神殿を作って欲しい。無論、知っている者だけで良い」


「すいません、神学には精通していないので、概念神族と四神柱神獣とは?」


「私を中央の柱にし、四人の神が並ぶは四神柱神獣。概念神族とは、破壊と創造のマテリアル、学問と魔法のライブラリ、極光と暗黒のエクリプスなどの神のことを言う。世界神がその上にいて、どの神の信仰も世界神に繋がる」


「ふむふむ」


「神殿は我らの窓や扉のようなものだ。作ることは許されたものしかクラフトできないよう、マテリアルが管理している。神殿があればその場所に加護を与え、神殿に捧げものを捧げれば、物や神の機嫌によっては加護や称号を与えられる」


「なるほど」


「そなたはとりあえず、自分が活動するエリア、または一般の者が触れられる場所に神殿を作り、配置する許可を渡そう。神殿と言っても簡易神殿だ。それほどお高いものではない。レシピを渡す」


 そう言われて、私達のクラフトメニューが開いて、神殿の項目が出て来た。なるほどこれで作れるのか。


「できれば私の神殿には大地の作物を捧げよ。マテリアルは作った物を。玄武は酒でも上げれば良い」


「玄武様は子供と聞きますが」


「見た目だけだ。ジュースでも渡すと思えばいい、できないのならつまみでも渡せ」


「はあ」


「それと、マテリアルからそなたたちに錬金術レシピ、火薬を渡すように言われている。これは攻撃力のあるアイテムをクラフトするレシピ本だ。他の物と違って、他の者にはそうそう教えるんでないぞ」


「おお、教えるのはダメですか?」


「ダメだ。火薬類のアイテムは、自力で手に入れた者か、許可が下りた者しか扱えぬ。自力で手に入れた場合、冒険者ギルドに自己申告するように。レシピ本を渡すが、転写や渡すのはダメだ」


 こうして報酬の受け渡しが終わり、最後に王様が感謝を伝え、幕を下ろす。


「これは凄いな」


「ええ、神殿はどこに置きましょう?」


「そんなほいほい作れるものじゃないっぽいし、どこに置こう?」


 そう話し合いながら、お店の手伝いをしてその日は終えた。その次の最終日は大きな畑の運用に人を招き、どうするか話し合いながら終わり、イベントはこうして終了した。

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