第41話・神殿が出来上がる頃

 白虎様の像を手入れしながら作る。青龍様は良いのだろうか?


「作ってくれるのは嬉しいけど、もともとあるのは大切にされたものだから、そっちが大事」


「えらいですね」


 若葉さんが子供のように接する。青龍様は嫌がっていないので良いが、ご飯時はよく現れるし、素材を分けてくれる。


 アイテムは『青龍の鱗』や『青龍の涙』という宝石。立派な神殿にするため、神殿長さんやシスターなど、話し合いを繰り返して建物を直す。


 大工ギルドの偉い人も手を貸してくれて、王家も予算を卸して念入りに補強している。像は立派に復活した。


「隣が白虎様の神殿で、少し小さいですが」


「問題ない。大事なのは気持ち。白虎もその辺は分かる奴」


 なら大切に扱ってもらおう。そうこうしているときに、カーロさんがやってきた。


「すいません、王家の人に通達です!」


「どうして王城じゃなくこちらで?」


「自分自身で神の使い的なところ見せたの、ここの人達だけですから。バカなエルフが建国宣言して」


「えー」


 どうもエルフの国がいま二つに分かれたらしい。つまり内乱だ。


 エルフ国を軸にゲームしているプレイヤーはすでに緊急クエストとして、国の騒動が始まった。


 新エルフ王国の王は長年国を運営して、森の維持をしていた人達。その中でわが物顔で偉いと顔に書いてあるエルフ達が起こした。


『我らこそ、エルフと言う種族を世界の為に率いる存在であり、愚かな弟を筆頭に神の名を語る愚か者どもに鉄槌を与える!』


 弟と言うのはメイド貴族さんとの間にできた子供。どうも王族権利とかもらう前に、立場を整えることなく生まれた子供らしい。


「立場を整えるって?」


「メイドの地位から第何代夫人の地位とかです。当時愛人だなんてという声が高く、ちゃんとした奥さんにするために働きかけたけど、もともと地位の低い貴族様だから、愛人どころか子供だけ王族として扱われたらしいです」


「それは、息子さん、複雑な立場じゃないかい?」


「はい。息子さんは少しでも汚点を見せれば母親がバカにされるから、血のにじむ努力して、立派な王族になってます。一番人気ですね民から、だから新エルフ王国の連中は死なないかなとか思って刺客とか使ってます」


 だがそもそもの話、自分達の国の表徴たる白虎が贔屓するのは、民の為に努力している者。白虎の采配やそれによって集まった仲間達ではねのけていた。


「そんな中、とある木材ブローカーが貴重な樹を神の意志と言って切り倒しだして、神殿を貧乏集落に作りました」


「君のことだね」


 新エルフはふざけたことを、罰当たりなと激怒したが、弟王族は普通に神に聞いて、真相を把握した。


「まあ話して教えてもらえるからね」


「彼奴らの派閥は年々、白虎様から嫌われだして、巫女の立場の人がいるんだけど、都合のいいことしか言わせてないって。あちらさんの巫女はついに言葉すら聞こえない子が地位についてます」


 青龍様が嫌そうな顔をする。どうも王国が乱れる条件の一つらしい。


「それだと新エルフ派は味方がいないと思うが、民からも嫌われてそうだけど」


「古い考え方しかしないエルフには人気ですね。血と伝統第一。あとは精霊と妖精が裏にいますが、すでに自分達の国とかいって、かなりイタズラがヒートアップしてます。お菓子とか勝手に食べたりしてるとのこと」


「うわー」


 そして新エルフ派は弟王派に神を返せと戦闘を開始。弟王派の味方は貧乏な集落エルフ達とプレイヤー。


 プレイヤーはすでにそこそこ強い人達が協力し出して、戦闘は五分五分とのこと。


「後は彼奴ら、身勝手な精霊や妖精を率いてるから、こっちの国にも手を出すかもと白虎様が言ってきて、王族にアポ取ってきてくれませんか?」


「はいはい、速達でやろう」


「多分来るな」


 青龍様が言うには、木が切られて住処を失った精霊と妖精がやるだろうと見立て。ちなみに木材ブローカー君達が切った樹に住むのは、イタズラして忠告を受けて、それでも人にモンスターをけしかけたりした者達だけ。


 それがいま新エルフ派に与して、戦争ごっこをし出したらしい。


 とりあえずスレなどを使い、エルフ国プレイヤーは戦力をかき集め始めた。


「んーもうすぐ神殿は直りそうだ」


 そう私は考えて、私にできることはあるだろうかと考え、決めた。


「飯が足りないだろう」


 そう、ご飯だって大切だ。集落の中には追いやられた人もいるという。


「ならばやることは一つだ」


 私は知り合いのクランが参加するか確認して、生産職としてどう動くか話し合い、行動に移すことにした。


 この戦争、少なくても弟王派の人達を飢えさせてはいけない。


 私は大量の食材アイテムを駆使して、彼らへの支援を開始することにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る