第29話・畑の拡大

 三日目もお店は繁盛している。若葉さんが匂いに敏感になっている。布に匂いが付かないように気を付けて活動。


 ゲームだから多少は良いらしい。そう簡単に匂いは付かないが、本格的にスパイスを調理すると、匂いが凄いとのこと。


「コボルトですからね、嗅覚がかなり上がってますね。この町では流行らないかもしれません」


「へえー」


 それでも食堂の方でカレーを作る。あるもので作った若葉さんカレー。


「この匂いって」


「カレーじゃないか!」


 気づく人は気づいて、人気が出るなと思う。だから私はこの国の料理ギルドにスパイスを持ち込んだ。


「お話は嗅覚が鋭いコボルト以外の人も同伴が良いとのことですが?」


「はい。スパイスという臭み消しやにおい付けなど、重宝する品物を」


 私達の世界ではスパイスは金と同格だったときもある。それを聞き、ほうと驚き、カレーを少し食べてみる。


「うん、ピリ辛でうにゃい。いままで匂いが強かったが、これらの草にはこのような調理方法があるとは」


「うまいです。人族である自分は好きですね」


 なかなかいい反応だ。少し調査するため、群生地など調べ、取って育てるという話になり、私は頷く。


 利権なりなんだりの話は面倒だからと断った。


「良いんですか? かなりの大金になりにゃすよ?」


「私は食事事情が良くなればと思って話を持って来ただけです。ここで売られるようになれば楽ですし」


「ありがたい話ですにゃ」


 だが形だけでもしっかりしないといけないと、ポイントをたくさんいただいた。これだけで私達は十分だ。


 この後、遺跡の探索へと出向き、レベリングすることになった。


 ◇◆◇◆◇


 アンデッドのモンスターは若葉さんの浄化魔法やルビの火力とソフィの雷が炸裂する。カナリアも頑張って魔法を使い、進化の時が来た。


「カナリアはハイシルフと、服飾風精霊か」


「私、もっと洋服作る」


「なら服飾だね」


「ええ」


 糸や針のようなレイピアを装備して、生産職として能力が上がったようだ。次はソフィ、ルビが、しばらく後でユキが進化するだろう。


 だが分かった事は、私達だと二階層が限界だ。レベルと罠解除が大変だ。


「斥候職がいないからね」


「仕方ないですよ」


 これなら外でレベリングした方が良さそう。ポイントはお店で稼ぐことにして、遺跡を後にする。


 畑の方もあるから、一度北の町へと戻るのでした。


 ◇◆◇◆◇


「おお、できたできた」


 品種改良した作物ができた。ハチミツイモにコロコロイモ。サツマイモと里芋だ。


 サツマイモは助かる。これを量産すれば美味しいものが食べられるぞ。


 蒸かしてもらうため、私は道具、若葉さんは調理に入る。若葉さんはこういうのは得意だ。


 サツマイモはしっかり蒸かされ、熱々の美味しいところを食べる。


「うん、うまい」


「はふはふー」


「気を付けるんですよ」


「はーい」


 甘味一杯のサツマイモは美味しく、これは売れると確信する。


 お菓子にしても良いだろうと、若葉さんは色々考えこみ、私はサツマイモの天ぷらが食べたいと言っておく。そばも欲しいな。うどんでも可。


 畑はもうすでに最大まで広げたから、新しい場所を作らなければいけない。


 イベントの国はどうだろうか? 私はお金を見てから、様子を見ることにした。


 イベントのお店に戻り、若葉さん達に一声かけてから、農業ギルドへと向かう。


 畑を買えるか聞くと、しっかり買えた。


 ダイチと共にいま欲しい食材やお米を植えて、畑を最大限活用する。


 ダイチのおかげでログアウト時間までには全ての作業が終わりそうだ。


「あのー少し良いですか?」


「はいはい」


 コボルトの青年だ。どうもお米用の畑が気になるようだ。水を使う畑だからね。レンコン以外だと珍しいらしい。


 お米と言うものの説明と、まだ未熟だということを説明。


 お米は私の店で食べられることを説明したら、あの白い粒ですねと感心してこちらに興味があるらしい。


 とはいえ、部外者を働かせるようなことはできない。ここは私の畑だからね。


 ダイチと共に畑を耕し終えて、私達は帰った。


 ブログの方は進化したカナリアをスクショしたのを上げておく。今後どうなるか楽しみだ。


「店の方はどうだい?」


「あみぐるみのアクセサリーが売れてますね。色々作って、いろんな効果のものを用意してますから」


「そうか」


「お腰の調子はいかがですか?」


「少しだけ痛いかな? だけどオンオフがうまく切り替わるから、調子はいいよ」


 そのうち、温泉に行こうかという話をしながら、私達は夕飯をしっかりと食べておく。今後はどうするか、考えながら楽しむのであった。

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