第84話

修行部屋にてシュバルツ達はドロップアイテムの整理をしていた。


コボルトは毛皮を落としたのだが女性陣が加工したいとのことでコボルトの毛皮を渡した。


何やら採寸やらされたがこれには何か意味があるのだろうか。


迷宮都市に来たのはまだ暑い夏だったが今は秋だ。


じきに冬になり寒い季節となるだろう。


コボルトの毛皮は最高級品には劣るがそれでももふもふした手触りは心地よい。


全員で工房区画に移動してここからは別行動だ。


シュバルツは無名の鍛冶の下で剣を打ち続ける。


失敗作となった剣だが、無名の鍛冶がインゴットに加工しなおしていた。


相変わらず、無名の鍛冶は無言で剣を打つ姿から技術を盗むしかないがカンカンと剣を打つのも結構楽しかったりする。


失敗もするがだんだん実戦でも使えそうな剣を打つことができるようになりその数が10本となった。


無名の鍛冶はその間に100本ほど完成させており実力の差を伺わせる。


ちなみに無名の鍛冶の作った剣は鍛冶の神に奉納されるとのことだ。


使われた材料は授業料といったところなのだろう。


シュバルツは一度休憩を取ることにして鍛冶場を後にする。


女性陣の様子が気になったので様子を見に行ったが夢中で何やら作業をしていたので1人、森へ探索に出ることにした。


異空間の森では危険な魔物や動物はいないので気軽に散歩できるのがいい。


薬草やら果物をついつい集めてしまうのは人間の狩猟本能なのかもしれない。


採ったばかりの果物で水分補給をしつつ気ままに採取を続けた。


アイテムボックスがいっぱいになるまで果物や薬草を採取し倉庫区画に保存して工房区画に戻る。


工房区画に戻ったシュバルツは女性陣に捕まった。


「シュバルツ様。どこに行ってたんですか?」


「ちょっと、森にね」


「声をかけてくださればご一緒しましたのに」


「ごめんごめん」


何も告げなかったのは失敗だったかもしれない。


「シュバルツ様。これを作ったので着てみてください」


手作りであろうコボルトの毛皮製のコートやら手袋を試着させられた。


異空間は過ごしやすい温度で安定しているが通常空間ではそうはいかない。


これからの季節、お世話になることだろう。


「ありがとう」


「シュバルツ様はこれからまた鍛冶ですか?」


「その予定だよ」


「私達もまだ、作業があるので戻りますね」


「うん」


女性陣はそういって戻っていった。


鍛冶場に戻ったシュバルツは気合を入れて剣を打ち続けた。

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