第195話

王城より戻ったシュバルツを待ち構えていたのはパーティーメンバーの面々だった。

「シュバルツ様。ご無事でしたか?」

「あぁ・・・。うん。昨日は王城に泊めてもらってね」

「そうですか・・・。何もなかったのですよね?」

「うん。何もなかったよ・・・?」

「何ですか。その妙な間は」

クラウディアとの件は言ったら絶対に何か言われる。

そう思ったシュバルツは話題をそらすことにした。

「皆は特に変わりなかった?」

「私達の方は王都観光を楽しんでいますよ。お勧めのお店も見つけましたし」

「そうなんだ。それは楽しみだな」

「そうそう。早馬で連絡がありまして公爵閣下がこちらに向かっているとのことです」

「父様が?」

特に社交の季節というわけでもない。

領民の生活を第一に考えているシュタイナーがこの時期に王都に来るのは珍しかった。

「はい。何か大事なお話があるとかで滞在を続けてほしいとのことです」

「わかったよ。皆さえ良ければ王都を案内してもらってもいいかな?」

「そうですね。予定もありませんし行きましょう」

「じゃぁ、僕は着替えてくるから」

「はい。お待ちしています」

シュバルツは自室に戻り質素な服に着替えてから玄関ホールに向かった。

「お待たせしました」

「いえ。丁度馬車も来たところですから」

シュバルツ達は用意されていた馬車に乗り貴族街を抜け街に繰り出した。

来た時も思ったが街には活気があり実に良い街だ。

「さてと。馬車で移動すると大変そうだね」

「そうですね。ですので適当な場所で降りて御者の人には待っていてもらいましょう」

「うん」

御者と落ち合う場所を話し合いシュバルツ達は馬車を降りる。

「さてと。どこから行こうかな?」

「私達にお任せください」

そう言って女性陣が先導してくれる。

まずやって来たのは小物の服飾品を扱うお店だった。

「ここの品揃えは見事ですよ」

「うん。母様達のお土産を買うのに良さそうだね」

シュバルツは飾られている服飾品を眺めながらそう答える。

母であるマリアンヌには髪飾りを数点購入して妹であるリリアーヌにはブローチを購入する。

そこで今朝、リチャードから言われたことを思い出す。

好いてくれているというクラウディアの為にネックレスを購入した。

王族であれば服飾品などいっぱい持っているだろう。

なので喜んでくれるといいのだが・・・。

そんなことを考えながら代金を支払い次の店に向かう。

次に案内されたのは本屋だった。

「凄い品揃えだね」

「王都でも古くからあるお店だそうですよ」

シュバルツは何冊か手にとって中を確認する。

興味のひかれた本を次々に手にすると迷わず購入を決める。

「シュバルツ様。お持ちします」

「ありがとう」

女性陣の協力もありシュバルツはかなりの数の本を購入した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る