第196話

買い物もひと段落してシュバルツ達はレストランを訪れていた。

「本日のお勧めはシチューのようですね」

「うん。それじゃぁ、シチューとパンでいいかな?」

「私達はそれでいいです」

全員の意見が揃ったところで店員に注文を通す。

時間がかかるかと思ったが料理はすぐに運ばれてきた。

「うん。いい匂いだね。味の方はどうかな?」

シュバルツはスプーンでシチューを口に運ぶ。

わずかに香辛料の味がする。

「うん。隠し味が効いていて美味しい」

「本当ですね。何が入ってるかまではわかりませんけど」

全員、無言であっという間に食べ終えてしまった。

「ふぅ。この後はどうしましょうか?」

「せっかくならぶらぶらしてみるのはどうでしょうか?」

「うん。それも悪くないね」

シュバルツ達は王都には明るくない。

ぶらぶらして新しい出会いを探すのも悪くなさそうだ。

料理の代金を支払ったシュバルツ達は興味を引くまま適当に街を歩く。

途中、気になった店を覗いたり買い食い等をして楽しく過ごした。

「そろそろ帰らないとね」

「そうですね。では、馬車に向かいましょう」

いつの間にかすっかり日が傾き空がオレンジ色に染まっていた。

御者が明るく話しかけてくる。

「お待ちしておりました。王都は楽しめましたか?」

「はい。まだまだまわっていない所もありますしまたお願いしてもいいですか?」

「喜んで。自分の住んでいる街を知ってもらうというのも悪くないですね」

全員が馬車に乗ったのを確認して馬車は走り出した。




問題が起こることもなく馬車は公爵家の所有する城まで戻ってきた。

シュバルツ達が馬車を降り城の中に入ると困り顔の執事が待っていた。

「おかえりなさいませ」

「何かありましたか?」

「クラウディア様がお越しです。シュバルツ様は出かけていると言ったのですが帰ってくるまで待つと・・・」

「迷惑をおかけしたいみたいですね。後はこちらで対応します。皆、悪いけど行ってくるね」

シュバルツは真っ直ぐにクラウディアが待っている応接室に向かった。

「クラウディア様。お待たせしてすみません」

「ぶぅ~。私も一緒にお出かけしたかったのに」

クラウディアは可愛らしく頬を膨らませている。

「この埋め合わせはしますから機嫌を直してください」

「ほんと?」

「本当です。それに渡したい物もありますから」

「何々?」

シュバルツは買ってきたネックレスを取り出すクラウディアに見せる。

「わぁ。綺麗。これくれるの?」

「はい。そのために買ってきた物ですから。少ししゃがんでください」

シュバルツはネックレスをクラウディアに着けてあげる。

「ありがとう。大切にするね」

そう言ってクラウディアは微笑んで見せる。

どうやら機嫌は直ったようで一安心である。

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