第197話

「シュバルツにお願いがあるの」

クラウディアはそう切り出してくる。

「何でしょうか?」

「美味しい物が食べたい!」

「今準備してきますね」

「うん」

シュバルツは別室に移動して修行部屋に入ると倉庫区画で材料を吟味する。

今日はもう遅いし持って帰ってもらった方がいいだろう。

そうなると他の王族の人達も食べたがるかもしれない。

わけられる形の方がいいだろう。

シュバルツは小さめのタルトを複数作ることにした。

材料はメロンにミカン、パインにサクランボに桃をチョイスする。

それぞれ材料を食べやすいサイズにカットして見栄えも気にしつつ生地の上に並べる。

修行部屋に造ったオーブンでじっくりと焼き上げる。

焼きあがったフルーツタルトの1つを食べてみる。

「うん。悪くないできだな。もう少し焼いておこう」

シュバルツは多めにフルーツタルトを焼き上げ籠の中にフルーツタルトを敷き詰める。

「後は桃のジュースを10本ぐらい渡せばいいかな」

シュバルツは忘れ物がないことを確認してアイテムボックスに収納すると通常空間に戻った。

クラウディアの待つ応接室に入るとアイテムボックスから用意した籠とジュースを取り出す。

「お待たせしました。今日は遅いからお城で食べてね」

「シュバルツありがとう」

クラウディアが持つには重いので控えていたクラウディアのお付の人に籠とジュースを渡す。

「お預かりいたします」

「多めに作ったので皆で食べてください」

「ありがとうございます。さぁ。クラウディア様。帰りますよ」

「シュバルツ。またね」

「はい。また来てくださいね」

シュバルツはクラウディア達を送り馬車が見えなくなるまで見送った。

玄関ホールに入るとパーティーメンバーの面々が待っていた。

「随分と懐かれましたね」

「そうだね。でも悪い気はしないかな」

「クラウディア様は可愛いですものね」

「正直、シュバルツ様的にはどうなんですか?」

「どうって・・・」

「恋愛感情はあるのかってことですよ」

「ん~。自分でもよくわからないかな」

「わからないって・・・。それをクラウディア様に言ってはダメですよ?」

「流石に言わないよ」

「はぁ~。王族相手だと私達の入り込む隙はないですね」

「そうだね」

ミミとシズノはそんなことを言っている。

「あれ?前に言ってたの本気だったの?」

「身分違いの恋ってのもいいじゃないですか」

「否定はしないけど・・・」

実際、母のマリアンヌは平民であり公爵であるシュタイナーと結婚しているのだ。

障害は大きいが可能性がまったくないわけではないのだ。

「ん~。僕にはまだ恋愛は早いかな」

まだまだしたい事が沢山あるのだ。

結婚は人生の墓場と言う言葉もある。

もう少し自由気ままに動き回りたかった。

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