第45話

冒険者組合に戻ってきたシュバルツとフランは受付の列に並ぶ。


今日は、昨日よりも混んでいるようだ。


「フランさんはどうして騎士に?」


「私は孤児院の出身なんです。お金を稼ぐために衛兵になったのですが、お館様の目に止まり騎士となりました」


「そうだったんですね」


「お館様には感謝しております。十分な金銭を頂き孤児院にも仕送りできていますから」


「僕の護衛は不満ではないのですか?」


「いえ、そんなことはありません」


2人で雑談していると急に大きな声がする。


「なんだぁ?餓鬼かよ。ここは子供の遊びばじゃねぇんだぞ」


どうやらこの男は酒に酔っているようだ。


相手をしない方がいいだろう。


だが、男はシュバルツに詰め寄ってくる。


「おい。餓鬼。無視するんじゃねえよ」


冒険者同士の揉め事は自己責任だ。


「はぁ・・・。何か御用ですか?」


「餓鬼の遊び場じゃないっていってんだ」


「僕はれっきとして冒険者です。貴方に何か言われる筋合いはないですよ」


「お前みたいな餓鬼が真っ先に死ぬんだよ。こんな風にな」


男は頭目がけて殴りかかってくる。


シュバルツはそれを避ける。


男は勢いを殺しきれず転んでしまう。


「てめぇ・・・」


「そこまでだ。シュバルツ様を相手にするなら私が許さない」


フランは戦闘態勢をとっている。


「っち。女に守られて情けない奴だ」


どうやらフランが騎士の正装をしているのにすら気づいていないようだ。


シュバルツはフランに声をかける。


「大丈夫。ちょっと酔っているだけだよ。キュア」


シュバルツは解毒魔法で酔いを醒ましにかかる。


「んっあ・・・?何しやがった」


「酔いは醒めましたか?」


ここで騒ぎを聞きつけた冒険者組合の職員がやってくる。


「また、貴方ですか」


シュバルツとフランは昨日きたばかりだ。


該当するのは絡んできた男だけ。


「なんだよ・・・。無謀な餓鬼に説教してただけじゃねぇか」


「子供とか大人とか関係ありません。将来有望な冒険者に絡んでばかり。貴方の酒場への出入りを禁止します」


「待ってくれ。酒は俺の命なんだ」


「冒険者組合への出入りを禁止しないだけありがたいと思ってください」


職員はそれだけ言って行ってしまった。


シュバルツとフランは顔を見合わせ男を放置して受付嬢の元へと向かった。


その場にはぼーぜんとする男だけが取り残された。


周囲の冒険者も慣れているのか見ないふりをしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る