第190話
当然と言えば当然だが謁見はシュバルツの為だけに開かれたわけではない。
その後も何人かの貴族が呼ばれリチャードからその功績を称えられていた。
謁見は1時間ほど続きリチャードが退室すると高位貴族から退出していく。
シュバルツは全員が退出するのを待って部屋を出た。
「シュバルツ様。少しよろしいでしょうか?」
そう声をかけてくれたのはお世話になっている執事さんだった。
「何かありましたか?」
「陛下が個人的にお会いしたいとのことです」
「わかりました」
執事さんに案内されて別室に案内される。
執事さんは立派な扉の前で止まり、扉をノックする。
「シュバルツ様をお連れしました」
「ご苦労。入ってくれ」
入室を許されシュバルツと執事さんは部屋の中に足を踏み入れる。
部屋の中には応接用のソファーに執務机といった感じの机が置かれていた。
「呼び出して悪かったな」
「いえ。何かありましたか?」
「うむ・・・。お主がくれた葡萄ジュースが合っただろ?」
「はい」
「妻と子供達に人気でな。もう少し持っていたらわけてくれないだろうか?」
「そういうことですか。でしたら手持ちの物がありますので提供させていただきます」
シュバルツは普段から最低限の食料をアイテムボックスの中に入れている。
ジュース類も当然のように持ち歩いていた。
シュバルツはご指名のあった葡萄ジュースの他にオレンジジュースにリンゴジュース。
桃にパイナップルジュースを50本ずつ用意する。
「なんか多くないか?」
「いえ。せっかくなら色々な味を用意したほうがいいのかなと」
「妻や子供達は喜ぶが本当にいいのか?」
「はい。いくらでも用意できますので」
「いくらでもか・・・。どこから手に入れてるか気になるところではあるが聞くのはやめておこう」
「一応企業秘密という奴ですね」
「今回は助かった。今後もその働きに期待しよう」
「それでは失礼いたします」
シュバルツはそのまま執事さんに案内されて城を出ると真っ直ぐ帰宅した。
その頃、クロイツェン公爵家に身内が嫁いだ貴族達は話し合いをしていた。
「うちの妹からは平民から生まれの無能と聞いていたが・・・」
「うむ・・・。陛下が目をかけられている。それに献上品の扱い方も心得ている」
「今までは我儘を聞いてやっていたが付き合い方は考えた方がいいかもしれないな」
「ガミガミ煩そうではあるが計画は全て凍結。様子見ということでよろしいか?」
「それしかないだろう。下手に手を出して陛下のお怒りを貰うのも馬鹿らしい」
「そうだな。今回の実績のこともある。味方に引き入れるとまではいかないが敵対はしない方がいいだろう」
「とにかく情報を集めてみましょう」
意思を統一した貴族達はそれぞれに動き出した。
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