第163話

呼ばれた、教会関係者と共に溢れてくる瘴気を浄化する。


「ふふふ。ははははは」


どこからともなく、そんな声が聞こえてくる。


「この声は・・・」


「父様。聞き覚えが?」


「忘れもしない。この声は大罪人マーリン・・・」


「私をそのように呼ぶな!私は大賢者マーリン様だぞ」


「いいや。多くの人を殺害したお前には大罪人が相応しい」


「またしてもお前か。あと少しで我が願いが成就するというのに・・・。また、邪魔をするのか!」


「醜い物だな。そのような姿になってまで己の欲を追い求めるとは」


「ふん。この姿は仮のものだ。悪魔さえ召喚できれば、私は至高の存在になれるのだ」


「至高の存在?そんなものに何の価値がある」


「どうせ、常人には私の考えはわからぬか」


溢れ出ていた瘴気が止まり、マーリンに集まっていく。


マーリンの姿はどんどん変わっていく。


腐肉が綺麗な肌になり、背中からは悪魔の羽が生え、頭には角が生える。


「うふふふ。あはははは。馬鹿な人間だ。ついに、ついに肉体を手に入れたぞ」


「お前は・・・。マーリンじゃないな」


「その通り。私はアスタロト。大悪魔アスタロトだ」


その言葉と同時に物凄い怖気が襲う。


シュバルツは何とかそれに耐える。


教会関係者は身動きがとれないようだ。


シュタイナーは勇敢にもアスタロトに剣で斬りかかっていた。


シュバルツの目にはシュタイナーが瞬間移動したように見えた。


相変わらずの化け物ぶりである。


だが、アスタロトは手をかざすだけでシュタイナーの剣を受け止めていた。


「ふふ。威勢がいいな。お前の力を我によこせ」


シュバルツの目にはシュタイナーの生気がアスタロトに吸収されているのが見えた。


「父様・・・」


シュバルツはアイテムボックスから剣喰らいの聖剣を取り出し、援護に向かった。


魔剣などと言われていたが、剣喰らいの聖剣はやはりその名の通り聖剣である。


聖なる力を宿したその刃は受けようとしたアスタロトの腕を斬り飛ばした。


「ぬ・・・。聖剣か。忌々しい」


斬り落としたはずの腕は宙に浮かび煙をあげながらくっつく。


シュタイナーはその間にアスタロトから距離をとっていた。


「お父様。ご無事ですか?」


「あぁ・・・。問題ない。私が隙を作る。シュバルツ。いけるな?」


「はい。お任せを」


シュタイナーはアスタロトに連撃を繰り出す。


シュタイナーの攻撃は傷をつけられていないが、防いでいるということは無敵というわけではないようだ。


シュバルツは確実にアスタロトに傷を与えていった。

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