第199話

帰りの馬車にてシュバルツはシュタイナーに質問をされていた。

「陛下の言っていたタルトとは何だ?」

「クラウディア王女殿下がよく遊びにこられまして。お土産に先日フルーツタルトを渡したんです」

「それを陛下も食べられたということか。私も一度食べてみたいな」

「材料はあるので後で作っておきますね」

「というより何故クラウディア王女殿下が遊びにくるようになったのだ?」

「陛下にワインとジュースを献上したのですがそのジュースを気に入られたみたいで・・・」

「確かにお前のくれたジュースは美味しかったが・・・」

どうやらシュタイナーはワインだけでなくジュースも飲んでいたようだ。

「ふむ。ここで聞くのもあれだな。後で話があるから私の部屋まで来なさい」

「わかりました」

これは色々聞かれそうだなと思ったがシュタイナーは信用できる。

今のシュバルツが出来ることを話しても問題ないだろう。

馬車は問題なく進みクロイツェン公爵家の城まで戻ってきた。

「では、また後でな」

「はい」

シュバルツは一度自室に戻り修行部屋へと移動する。

まずはリチャードからの依頼を片付けるべきだろう。

必要な材料を倉庫区画から持ち出し工房区画に移動する。

錬金術関連の設備が整った工房で回復薬の作成をはじめた。

中々納得のいく品質の物ができなかったが何度も試行錯誤を繰り返し最終的には高品質の回復薬を作ることに成功した。

「ふぅ。依頼の方はこれでよしと」

出来上がった回復薬をアイテムボックスに収納する。

シュバルツは染みついた薬品の匂いを無属性魔法のクリアで消し去ると倉庫区画に向かった。

今度は前回も使った果物を持って修行部屋に移動する。

手慣れた手つきでフルーツタルトを作成する。

今回も多めに作っておく。

その理由はパーティーメンバーの面々から食べてみたいと言われていたからだ。

十分な量を作ってから修行部屋を後にした。

まずはパーティーメンバーに声をかけて食堂に移動する。

「これ皆で食べてくださいね」

「わぁ~。綺麗。まるで宝石みたい」

「シュバルツ様ありがとうございます」

「では僕は父様と話があるのでゆっくりしていてください」

「わかりました」

シュバルツはシュタイナーの部屋に向かった。

「父様。失礼します」

「うむ。入ってくれ」

「長い話になりそうだしな。お茶でも飲みながら腰を据えて話すとしよう」

「わかりました。これ食べてみたいと言っていたフルーツタルトです」

「すまんな。というか、用意するの早すぎないか?」

「それについても説明しますから」

「そうか・・・」

シュバルツはアイテムボックスから茶器と茶葉を取り出すと慣れた手つきでお茶を淹れ始めた。

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