第200話

「随分と手慣れているのだな」

「おかしかったですか?」

「いや。せっかく淹れてくれたのだし頂こう」

シュタイナーはそう言ってシュバルツの淹れた紅茶を飲む。

「ふむ。飲んだのことのない味だな」

「普通のもありますけど?」

今回出したのは修行部屋の農業区画で採れた茶葉を加工したものだ。

品質に問題はないが一応聞いてみる。

「いや。味が気に入らなかったわけではないんだ。高価な物ではないのか?」

「いえ。沢山手に入る物ですから」

「そうか・・・」

シュタイナーは紅茶の味と匂いをしばらく楽しんだ後、話を切り出した。

「それで、お前のアイテムボックスはどうなっているのだ?」

「それは僕の恩恵が関係しています」

「恩恵か。確かカウンターという奴だったな」

「はい。以前、スキルやなんかをポイントと交換できるという話はしたと思います」

「うむ。そう聞いている」

「その選べる中に異空間のようなものがありまして・・・」

「異空間か・・・。続きを聞こう」

「その異空間に入っている間はこちらでは時間の経過がありません」

「それはまたとんでもない能力だな。しかし、物資の説明にはなっていないのではないか?」

「異空間は拡張が可能でして、魔物が出る区画や農作物の採れる区画なんかもあるんです」

「なるほど・・・。つまり、そこで採れた物を大量に確保しているということか」

「はい。ですがこれらの品を一般に流せば大混乱を起こします。なので異空間関係の品はなるべく出さないようにしています」

「そうか・・・。確かにそんな物を流通に乗せたら大問題だな」

「はい。なので身内や特別な人にのみ流しています」

「このフルーツタルトというのもその異空間で採れた物を使っているのか?」

そう言ってシュタイナーはフルーツタルトを1つ食べる。

「はい。その通りです。ワインやジュースに木の実なども異空間産ですね」

「食べたことのない物だが美味いな。それに品質もかなり良い。流通に乗せれば大儲けできそうなものだが・・・」

「今のところそのつもりはありません。お金に困っているわけではないですし」

「迷宮でもかなり儲けているのだったな。それならば無理に稼ぐ必要もないか」

シュバルツ達は迷宮での利益だけでもかなり稼いでいる。

トラブルになりそうな異空間産の物を出してまでお金を稼ぐ必要性がなかった。

「それにしてももう少し早く教えてくれてもよかったのではないか?」

「こんな能力があるとばれれば色々トラブルが起きそうでしたから」

「確かにその通りだな。今後もその能力は隠すように」

「わかっています」

「それにしてもよくわからない恩恵を授かった時はどうしたものかと思ったが・・・」

「ははは・・・」

シュバルツは授かったというより選んだ結果だがそれは言う必要はないだろう。

笑って誤魔化すことにした。

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